雨風食堂 Episode5
調子に乗るなと大声で怒鳴られて、頭を思い切りはたかれてしまった。山本は笑いながら、こっそりとスクアーロの顔を盗み見る。
「――――なぁ。髪、また伸びたのな」
スクアーロが怪訝な顔をしてこちらを見つめ返した。山本はうつくしい銀色の髪をひと房つまみ、微笑んで見せる。
「今は、何の願かけしてんの?」
スクアーロは山本が無断で髪に触れていることを咎めることはしなかった。一瞬驚きに瞠られた目が、やがてゆっくりと、不敵な笑みに縁取られていく。それこそが、山本が目指し続けるいただきの光だった。
「………てめぇには一生教えてやらねよ。バァーカ」
彼らしい憎まれ口に、山本はまた、堪えきれずに笑みをこぼした。
作品名:雨風食堂 Episode5 作家名:あらた