GUARDIAN
――――サァサァと雨が降る―――――
見下ろす体は、己の刃で切り刻まれ血にまみれていた。
己の浅はかさにより卍解を奪われ、剰えそれを彼奴らが使役できるとは考えるに至らず、振りかざした刃は己を貫く結果となった。
痛みはない。
壁にめり込むようにして初めて立っているような肢体からは血が流れ出し、降り注ぐ雨は体から体温を奪っていく。
はっきりしない意識の中、白哉は己の視界にはいる隊士たちの亡骸をみて、己の短慮を恥じ、また己を力の無さを唾棄した。一隊を預かる隊長として隊士たちを死に至らしめた。
四大貴族の一角を担うものとして己を律し、そして周囲に求められるまま己もそうあろうとした。
だが、力及ばずして卑劣な逆賊を討伐することもできず死にゆく己が恥ずかしくてこの上なかった。
守るべきものを守れずして何が護廷の隊長かっ何が四大貴族朽木家当主かっ!
指一本動かすこともままならぬ状況で、白哉の中は恥辱と後悔で支配されていた。
そして、白哉は己の大切なものを思い出した。
己の愛した者たちは大丈夫だろうか。
その筆頭に亡き妻の形見と言っていい妹を思い出した。
「ル、キア・・・・・」
最近よく笑う様になった妹。
擦れ違いによって、決して仲が良かったとは言えない月日を過ごしたこともあった。
白哉は吐息を吐くように力ない声で再び妹の名を呼んだ。
「ルキア・・・・・・・」
無事だろうか…。
己が逝った後に朽木に縛られなければいいと思う。
亡き妻・緋真によく似た妹が無事なのか、意識が薄れゆく中で白哉はただただそれだけが気にかかった。
もう感覚のないからだから力が抜ける。
打ち砕かられた千本桜が手から滑り落ちた。
意識は保っていられず、力の抜けた体は前方へ傾き倒れ掛かった。
その時心の中で、白哉が声にならないまるで幼子のような声で縋った。
――――― 一 護 ―――・・・・・・
そのまま地面に倒れ伏すかと思われた白哉の体を支えるものがあった。
「……ルキアは無事だ。この馬鹿野郎が…。」
眉間にしわを寄せながらその人物は優しく白哉を抱きしめた。