GUARDIAN
目を開けた時、目は開けにくく視界は霞掛かってなかなか明瞭にはならなかった。漸く視界が鮮明になった時、白い天井が視界に入ってきた。周りに視線だけをめぐらすと様々な機器があり、それらの管が己の体につながっていることなどから、白哉はここが四番隊だという事が分かった。
理解するのにも実はしばらく時間がかかった。なかなか、頭が回ってくれない。
数回、瞬きを繰り返すと視界に鮮やかな色が見えた様な気がした。
そちらにゆっくりと視線をめぐらす。
「気が付いたか」
その人物は枕元の椅子に腰かけて、白哉を覗き込んだ。
「お、まえは…」
声が満足に出なかった。声をだして白哉は初めて己が酸素マスクをつけられていることに気が付いた。
その人物は白哉の様子など構いなしに枕元にあったコールをし、朽木隊長が目をさました。と必要最低限の報告をする。
白哉は黙ってその様子を見つめた。
淡々と事務的に連絡を終えるとその人物は白哉に視線を向けた。
自然とお互いに視線が合う形になった。
「なに死にかけてんだよ」
その人物はあきれたという態度を隠しもせず、ため息を吐きながら言う。
「一、護」
言い返すことが出来ず、白哉はその人物の名前を呼ぶことしかできなかった。
しばらく二人の間を続いた沈黙はパタパタと複数の足音が近付いてくる気配と共に、複数の席官を連れた卯ノ花隊長の登場で終わりを告げた。
「朽木隊長、お目覚めになりましたか。お加減はいかがです?」
そういいながら、テキパキと診察を進め、席官に指示を出す。
一護と呼ばれた人物は卯ノ花が診察しやすいように椅子から立ち上がり脇に寄った。
「あなたを発見したのが一護さんでよかったです。」
傷の様子を確認しながら卯ノ花は言う。
「はっきり申し上げれば。的確な処置がなされていなければ、朽木隊長がお目覚めになることはかなり難しかったとわたくしたちは考えております。」
一護の方を振り返って卯ノ花は微笑む。
「さすがは一護さんです。」
「いや、まぁ、黒崎家は医術に秀でた一族ではあるけど、俺は治癒鬼道ができねーからな。家の医術道具使っただけだし」
大したことやってねーよと頭をがりがりと掻きながらいう。
『黒崎』と聞いた周囲の席官たちは色めきたった。
四番隊隊士にとって『黒崎』という名はどこの隊よりも認知されている家の名であった。医術を扱うものにとってその名を知らぬ者はいないといっても過言ではなかった。
一瞬にして四番隊隊士の一護へのまなざしが憧れのものに変わった。
「いいえ。それでもあれ程の医療器具は技術がなければ使いこなせるものではありません。そして、処置は的確。文句のつけようがありませんでしたよ。」
「そこまで言われると照れるんですけど」
一護はさすがにいたたまれないと卯ノ花から目線を逸らす。
その様子を卯ノ花はくすくすと笑い、白哉の方を見てにこりと笑っていった。
「感謝なさいませ、朽木隊長」
その言葉に薬の影響か、今まで寝ていた影響かまだ意識がしっかりしていない白哉はただただ素直に頷き一護の方を見る。
「すまぬ」
いつにない素直な様子に調子が狂うというばかりにあー!と叫んだ一護は
「ルキアを連れてくるっ」
と言って部屋から飛び出していった。
白哉がその言葉に「ルキア…」と顔色を変えたが、その横に立っていた卯ノ花が大丈夫ですよと声をかけ安心させた。