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雨風食堂 Episode8

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 髑髏が綱吉の身を案じた、その気持ちはどこから生まれたのか。
 六道骸のためではない。もちろん、他の黒曜中のやつらのためでもない。彼女が、彼女自身の心で望んで生まれた感情だ。
「信じるよ。お前のこと」
 綱吉の言葉だからではなく、山本は心からそう思えたから、その言葉を口にした。嘘はないと胸を張れるのでなければ、軽々しく言えるような言葉ではない。
 自分の思っていることがどこまで髑髏に届いたのかは、相変わらずの無反応なのでわからなかったが、例によって声はちゃんと聞こえたはずだ。今はそれだけでも十分だろう。
 体育館から校庭まで、いつもなら五分もかからない距離なのだが、人を抱えた体勢で傷をかばいながら歩くので、倍以上の時間がかかってしまった。先に行っていた獄寺と了平が校庭に向かって立ち尽くしている姿が見えて、山本は小さく声をもらした。
「お、ようやく追い付いたな」
 すると、急に髑髏が立ち止まって山本の体を押しのけるようにもがいた。
「歩けるわ。放して」
「え、そっか? あんまり無理すんなよ」
 まだ体に力が入らないようだったので気遣って手を貸したけれど、強くはないものの、きっぱりと拒まれた。うるんだように大きな隻眼が、まっすぐに山本を射抜く。
「私も、あなたと同じ守護者の一人よ」
 凛としたその声音に、山本は息をのんだ。
 そして、髑髏を支えていた自分の手をゆっくりと離すと、満面で微笑み、なぞるように言葉を選んだ。
「――――お前の言う通りだ。ドクロ」
 髑髏は彼女の武器である槍の束をぎゅっと両手で握りしめて立った。それはまるで、彼女のか弱い体を支える想いを象徴しているようだった。
「行こうか。ツナのところへ」
 山本のその言葉に、髑髏はこくりと無言でうなずいた。そして一歩、その足で、戦いの結末の場所へと踏み出したのだった。
作品名:雨風食堂 Episode8 作家名:あらた