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peso@ついった廃人
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かんじょうられつ

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【かんじょうられつ】


自分は歪んでいると思う。
何が歪んでいるのか・・・

「トムさん、すんません・・・お待たせ、しました」
駆け寄ってきた長身細身の青年は走ってきたのだろう、少し頬が高揚しほんのり赤みを帯びている。
「お、大丈夫か?」

トムは吸っていたタバコを持っていた携帯灰皿にねじ込むと青年に向けてはにかんだ笑顔を向ける
頭を下げて謝る青年の髪をくしゃくしゃっとかき回してやると青年は嫌がるわけでもなく恥ずかしそうに耳を赤くした。
「じゃあ、行くぞ」
「うっす!!」

この青年に対して抱く感情。
その細い腰を掻き毟って、サングラスの下に隠れた端正な顔立ちを歪めてみたい
啼かせて、声を枯らせて、腰をくねらせる。
今もそんな事を目の前の自分が考えているなんてこの青年は思いもしないだろう。
何も疑う事もなく純粋に自分に向けてくる好意という感情に時折虫唾が走る時がある。

自分はこんなに汚くてこんなに歪んでいるのに。
青年が自分に向けてくる感情は純粋で、歯痒くて今すぐにでも壊してしまいたくなるくらいの好意である。


青年は昔から変わらない
・・・平和島静雄とは、中学時代からの付き合いだ。
付き合い、といっても、そう大して接点があったわけではない
同い年でもない
部活動が一緒というわけでもない
ただ・・・この時代から平和島静雄という存在自体が有名で誰もが名前は知っている、それだけだった。

凶悪、凶暴、破壊、常識はずれの馬鹿力
親や教師達からは絶対に関わってはいけないと言われて言われ続けていた子供。
全て噂でしかなかった。全て悪い噂話。
そんな雲の上のような存在。

そんな平和島静雄が同じ中学に通い始めるという。
トムの通っていた学校は決して名門校というわけではなかったが、不良など問題児が誰でも入れるというレベルの学校ではない。
若干、反対意見もあったらしいが、きちんとした試験を受けほぼ満点の成績で入学したらしい。
異論はあったが合格した以上入学を許可せざるおえなかったという事だ。

入学式はとても静かなものだった。
どれが噂の平和島静雄なのかと生徒全員気になっていたようでいつもならサボっている生徒までも参加していて教師達が少し驚いていたくらいだ。
しかし、平和島静雄は参加しなかった。
あとで聞くと参加出来なかった、が正しいだろう。

入学式の案内が来なかった。
いや、校長が直々に平和島家に「入学式そうそう問題を起こされてはこれからの新入生に影響を及ぼしかねない」と入学式参加の辞退を願いにいったらしい。
両親は反対したらしいが当人の静雄が首を縦に振り両親を説得したようだ。

次の日。
トムはいつもより早い時間に起き校門のちょうど見える窓際の自分の席からじーっと初々しい新入生達を観察した。
噂の新入生はきちんと登校してきた。
なんで、そいつが分かったのかなんて、よくわからない
でも、見た瞬間「あ、こいつだ」と思った。
少し茶色がかった癖のありそうな黒髪。顔や足には無数の絆創膏や傷跡。
何より・・・目が違っていた。
まっすぐ前を見るその目がとても印象的だった。
なぜか惹きつけられた。
ちょうど教室の真下あたりに来た時静雄の顔が上を向く
視線が合ったのかと思った、そんな気がして慌てて顔を背ける。
その瞬間、なぜかわからないがドキドキしている自分がいた。何もやましい事はしていない
ただ、外を見ていただけと言ってしまえばいいだけの事なのに視線が合った瞬間心臓が跳ね上がった。

関わっちゃいけないよ、と今日も教師に言われた言葉が頭をよぎる。
あんなのタダノ噂話。そう思えるくらいの華奢そうなタダノ男の子だった。
なんでだろう
胸がまだドキドキしていた。
関わるなという警告音が聞こえる
でも、・・・でも・・・・

胸の鼓動を抑えながら静雄のいなくなった校門を見つめながらトムは小さくため息を吐いた。

その日から気がつくと目で静雄を追っている自分がいた。
体育の授業。
校庭から聞こえる生徒達の楽しそうな笑い声
教師達の掛け声
そんな中、静雄はいつも一人目立っていた。
いつも一人で。
いつも校庭の端に座っていた。
校庭の端にある大きな樹木の下の日陰で体育座りをし顔を半分隠した状態の静雄は何故かとても寂しそうに見えた
『・・・具合でも悪いのだろうか』
そんなことを考えてしまう
気になってなんとなしに親しい体育教師に尋ねてみると思いもしない答えが出てきた。

体質の問題もあり他の生徒達に怪我をさせるわけにはいかないので一緒には授業をやらせるわけにはいかない、のだそうだ。
それを当人も承諾した上で学校公認で体育などの授業は全て見学という形を取られていた。

一見するとイジメみてーな光景だな・・・

そんなことを思いながら遠目から見ても少し眠そうな少年を見つめる。
そんな日が続いていた。
関わるわけではない
いつも目の端に映りこんでくるだけそれだけの関係だった。

今日も校舎の何処かで何かが壊れる音がする。
平和島静雄の周りではいつも喧嘩が絶えなかった。
理由はわからないが気がつくと今日は上級生の誰々と喧嘩をした、隣の中学の奴と喧嘩をしていた。そんな噂が絶えなかった。

そして、今日も何も変わらない、何も・・・



トムは自分の他に誰もいない保健室のベットの上でウトウトとうたた寝をしていた。
もちろん、今は授業中である。

半分空けてある窓から心地よい風が入ってきて白いカーテン波を打つ。

(・・・静かだ)

意識が遠のきかけた時、ガタガタっと窓の方で音がしたのに目が覚める。
(んあ?)

寝ぼけ眼で自分のベットを仕切ってあるカーテンをそっと開けると窓のすぐ下に丸まった少年が一人転がっていた。
ところどころ傷だらけの少年はいると思わなかった保健室の住人にビクッと驚き視線が合う

「あ・・・」

見覚えのある少年だった
へいわじましずお
いつも遠目でしか見たことの無かった少年が今、目の前にいる。

「・・・なん、すか?」

視線が合う
まるで警戒心丸出しの猫のようだと思った。
殴りあったのだろうか、口の端が切れ左足の膝には擦り切れた痕
「ちょっと、見せてみ」
「・・・ぃ?!」
なんとなくだ・・・なんとなくほっとけなかった。
警戒する静雄の近くにズカズカと近づくと顎をクイッと持ち上げる。
その行為に目を大きくしてトムを見つめくる
「あー・・・結構切ってンな・・・えーっと確かこの辺に・・・」
慣れた手つきで薬品棚から傷薬を取り出し静雄の手当てを始めるトムを静雄はただ口をぽかんっと開けてされるがままになっていた。

「おし、こんなもんだろ」

包帯と絆創膏だらけになった静雄は今の自分の状況がまだつかめていないようだ。
「ん?どした?」
「・・・え、あ」
トムと目が合った瞬間、気まずいのか目を泳がせて終いには俯いて何かボソボソと呟いている。
「ん?なんか言ったけ?」
「・・・あ、りがと・・・ぅございま・・・す」
俯いたその表情は見えないが微かに耳が赤くなっている。
(なんだ、礼儀はあるじゃねーか)
「お、おう」
初々しいその反応に何故か自分も照れくさくなって頬をぽりぽりと掻き視線を泳いでしまった。