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【腐】君を探す旅・1【西ロマ】

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一世一代の大告白。親子のように過ごしてきた男の鈍感に疲れ果て、世界会議終了後ロマーノはついに告白した。いくらなんでも直接好きだと言えば、この男は気付くだろう。
 だが、この男は首を縦には振るまい。
 そんな確信にも似た、諦めともいえる気持ちがある。
 ずっと溺愛されているのは知っていた。やたら会った当初から自分を目にかけ、守られていたのは確かに愛情だろう。
 だからこそ捻くれた自分は心を開いたのだが、それが恋愛感情になるとは夢にも思わない筈だ。何しろ百年単位で思い直せと、ロマーノ自身が己に言い聞かせたくらいだから。
 でも、もう疲れたのだ。
 愛し続け望み続け、届かない太陽に焦がれるのに疲れた。
 ……もう終わりにしたかった。
「ロマーノ……俺……」
 きっちり振られ、無様な恋を終えたい。楽になりたい。
 相手の気持ちを考えない、ただ自分の為だけの告白。それが無性に申し訳なくなり、涙が浮かんでくる。彼は自分に過ぎた太陽だったのだと涙は零れ続け、ロマーノは地面を見つめたまま唇をきつく噛み締めた。
 目の前で落ちるスペインの声には困惑しかなく、まさに青天の霹靂だったのだと伝える。それでも返答を貰うまでこの恋を終えられず、ロマーノはこんなアホな事に巻き込まれたスペインに心の中で何度も謝った。
「……俺な、初恋の人が忘れられへんねん」
「……?」
 痛みを堪える声に、思わず顔を上げてしまう。どこか遠くを見る瞳のまま、スペインは衝撃的な話を続けた。
「ロマのことは好きやで。でも、初恋の人とロマ……凄く似とるんよ。俺……ロマが好きなのか、その人を今も追ってるのか分からんのや」
 自分を通して誰かを見ていた。その事実にショックで意識が遠くなりかける。そこをなんとか踏ん張り、ロマーノは震える声で情報を集めようとした。
「それ、どんなひと……?」
「『イタリア』の一人、って言うてたな」
 思い出して語るスペインの顔は穏やかで、本当に彼がその人のことが好きなんだと伝わってしまう。明らかに通常の彼の示す好意とは違う色が乗っており、ロマーノがそんな様子のスペインを見るのは初めてであった。
「俺がまだ『スペイン』になる前の話や」
 ……見たく無い。
 誰かの為にこんな顔をするスペインの顔は、見たく無い。
 それに。
 胸がきりきりと痛む。脳裏に浮かぶのは弟の顔。
(誰かの変わりなんてまっぴらだ!)
 弟へのコンプレックスを死に物狂いで乗り越えたのに、また誰かと比較されるのか。どこまで行っても、自分一人では認識して貰えないのか。
 答えを貰えるまでがんばろうと思っていたのに、コンプレックスを刺激されて心が折れてしまう。自分の情けなさに大声で泣きたくなり、ロマーノはついに逃げ出してしまった。
「ロマーノ!」
 制止する声も聞かず、自慢の足で走り出す。涙でぐちゃぐちゃになった顔でトイレへ駆け込めば、そこに居たイギリスに盛大に驚かれた。
「うわっ! ど、どうしたんだよ、お前」
「うるせーこのやろぉー!」
 何だか心がべっきり折れたせいか、イギリス相手に怯える気になれない。自暴自棄になりながら眉毛相手に全部吐き出せば、何故かいたく同情されてしまった。
「報われないのは悲しいよな、そうだよな!」
 ……完全に何か変な勘違いを起こされているような気がする。メインの身代わりの部分ではなく、失恋らしいという所に食いつかれ複雑な心境だ。
 疲れたロマーノ達はそのまま会場外の公園に移動し、二人並んで屋台のジュースを飲む。冷たい飲み物は頭に上った血を下げ、荒かった呼吸を和らげてくれた。
「スペインの初恋の相手ってどんな奴なんだろうな……って、イギリスなら魔法で何とか出来ねーのか?」
 あの羽をつけたおかしな格好のイギリスには、色々迷惑を被っている。思いつきを言葉にすると、彼はむっとしたように頬を赤らめた。
「お前、こんな時にだけ魔法信じるんじゃねーよ」
「藁にも縋りたい気持ちを理解しろよ! 何とかしてくれないと、お前ん家の庭にミント植えるぞ!」
「バイオテロじゃねーか!」
 ハーブと言えば聞こえがいいが、雑草魂溢れるミントは抜いても抜いても生えてくる恐ろしい植物だ。それを彼が大事にしているローズガーデンに植えると脅せば、苦虫を噛み潰したような顔で「探してみる」と了承してくれた。