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【腐】君を探す旅・1【西ロマ】

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 このまま死ぬかもしれないのなら、全力を尽す。怯えるアントーニョを勢いで説得し、男の口に布を噛ませる。こうして歯と舌を保護すると、ドラマで見た!
(何で俺がこんなことをしなきゃいけないんだよおおお!)
 血も傷も大嫌い。なのに直視させられ、涙目になりながら腹に針を刺す。痛みで跳ねる体と皮膚の抵抗に合いながら、ロマーノは何とか漫画とドラマの知識で縫い合わせた。
(俺、帰ったらイタリア語版のあの漫画全巻買おう……)
 縫い方を教えてくれてありがとう。そう感謝しつつ、縫い終えた傷を新しい布で押さえて包帯で固定する。気付けばぼろぼろに泣いており、かっこつかねーなと苦笑した。
「あー、もう嫌だ! 痛いの見るのも嫌だ!」
 涙はぬぐっても止まらず、気付けばアントーニョよりも泣いている。手は血まみれだし服もそうだ。鞄の中身はたった一日で半分程消費しているし、いつ帰れるのかも分からない。
 一通りの処置を終えて気が抜けたのか、一気に感情が爆発する。あれもこれも嫌だとうずくまり子供のように泣けば、頭を撫でる小さな手があった。
「ロヴィーノ、泣かんといて」
 少年に慰められ、恥ずかしくて更に泣ける。暫く撫でてくれる手を受け入れていたが、ふと懐かしさが胸に込み上げた。手の大きさは違うが、撫で方がスペインと同じだ。それに気付き、ストンと気持ちが落ち着いた。
 気を失った怪我人の横で暫く放心していると、外から複数の足音がする。もしやあの異国の男達では。体を緊張させたロマーノだったが、納屋に入ってきた男はアントーニョの傍に膝をついた。
「アラゴン、無事やったか?」
 ……味方か。
 アントーニョが「俺は」と答えている横で、いつの間にか止めていた息を大きく吐き出す。応援に来た部隊に怪我人は連れていかれ、ロマーノは部隊長の前に立たされた。
「ロヴィは俺の恩人やで!」
 アントーニョがそう庇ってくれるものの、イタリアとはいえ異国の男、服装は奇天烈で血塗れときたら怪しいことこの上ないだろう。鞄はアントーニョの協力で何とか死守したものの、中を見られたら更に怪しまれるに違いない。
「人間の腹を布のように縫うなど……!」
「仕方ねーだろーが。いや、……仕方ないやろ。腹ん中全部ぶちまけたいんか?」
 『国』同士だと伝わるので忘れていたが、彼等にはイタリア語が通じないようだ。仕方なくスペイン語で答える。
「子供が泣くから、俺に出来る限りの手助けをしただけや。『人にしてもらいたいと思うことは何でも人にしなさい』って言うやろ?」
 聖書の言葉を言い、胸の十字架に手を置く。伊達に何百年も教会に関わっていないのだ。聖書なんて暗記している。
 さらりと聖書の言葉を言うロマーノの姿に、部隊長は考え込む。そこへアントーニョが「ロヴィは聖職者やで」と援護したので、聖書をすらすらと暗唱してやった。
 流石はレコンキスタの真っ最中。信心深い連中しか居ないようだ。十字架を下げ、聖書を暗記しているイタリア人というだけでロマーノが敵ではないと納得してくれた。
 尋問から解放され、お疲れさんと薄いワインを渡される。それを飲みつつ、これからどうしようか悩んだ。
 行くあてはなし、帰宅の予定なし、金もなし。
 何だか色々あって一気に力が抜けてしまい、取りあえず眠いなとしか考えられない。このままシエスタでもしてしまおうかなと逃避をし始める脳を止めたのは、ロマーノに抱きついてきたアントーニョだった。
「ロヴィ、うちに来る?」
「はぁ?」
「泊まる所ないんやろ?」
 ぎゅうぎゅうと抱きついてくる癖はこの頃からのようで、慣れているとはいえちょっと暑苦しい。文句を言おうと見返す顔は幼く、何故だか心細くなった。
「なー、ロヴィ。俺と行こうや」
 一応見聞の旅をしているという設定の筈だが、アントーニョは忘れてしまったのか何度も誘ってくる。一人で暮らしているんだという話に、何となく寂しいのかなと思った。
「そうだな……、暫くピアニョーネ(泣き虫坊主)のお守でもしてやるか」
 怪我をした男に泣きついていた姿をそう茶化せば、「ロヴィの方が泣いてたやん!」と反撃される。それを誤魔化すように口笛を吹き逆に抱きつき返せば、アントーニョは嬉しそうに笑った。