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【腐】君を探す旅・1【西ロマ】

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「おっちゃん!」
 ロマーノが立ち竦む横をアントーニョが走り過ぎ、何やら声を掛けている。その切迫した空気に押され慌てて近寄ると、男は刃物で腹を切られていた。
 傷の大きさは十数センチ程で、やや深い。これは動いたら中身が出そうだと傷口から視線を逸らし、鞄からタオルを取り出した。
(えーとえーと、圧迫止血とかそんなのあったよな)
 仕事をサボっている間に見た医療ドラマを思い出し、タオルで腹をしっかりと押さえる。
 腹なのが幸いしたのか、見た目よりも血は出ていないようだった。そんなロマーノの横で、アントーニョは泣きながら男を励ましている。この男はどうやら仲間の一人らしい。
 鞄から包帯を取り出してタオルを固定する。取りあえずここに居ては危険だと判断し、二人は男を連れて村に戻ることにした。
「おっちゃん頑張りやー!」
 足の怪我は良くなったのか、猛烈な勢いで男を背負い走っていく。その後を追いつつ、ロマーノもまた走って行った。
 走った振動で怪我が悪化したらどうしようと村についてから気付いたものの、救急車なんて勿論無い。仕方がなかったと自分に言い聞かせとにかく医者を頼もうとするが、村には医者が一人も居なかった。
(あー、医療ってもんがそもそも確立されてねーのか)
 宿を借りた老人に頼み込み、納屋をまた借りる。顔色悪い男にアントーニョは何度も声を掛け続け、涙を零していた。このままでは危険な状況、だが医療器具は何も無い。
(このおっさん、アントーニョの大切な人なのかな)
 老人に水を貰って納屋へ戻る。ロマーノに気付かず泣き続ける少年を見て、そんな感想が浮かんだ。姿が小さい『国』を、国民が親気分で面倒を見るという話はあちこちである。アントーニョにとってこの男がそうなのかもしれない。
 ……助けたい。泣かないで欲しい。
 祖父が消えた日のことを思い出し、ロマーノの胸がズキリと痛む。これから長く生きるのだから、こんな別れも増えるだろう。だからといって、目を逸らすことも出来ない。
(スペインの為、スペインの為っ!)
 俺にはシーズンを通して見終えた医療ドラマと、日本から借りた医療漫画の知識がある。更にこれは外科の領域で、特殊な病気じゃないと自分に言い聞かす。
 傷口のグロさを思い出し泣きそうになるが、スペインの為になるならと腹をくくった。こんなの、マフィアと戦うよりはマシな筈だ。
「アントーニョ、これ、U字に曲げてくれ」
 鞄からソーイングセットを取り出し、一本の針を彼に渡す。この形が皮膚を縫うのに適しているという漫画知識だが、不器用な自分が頑張るには道具だけでも近付けた方がいいだろう。
 不思議な顔をしつつ持ち前の馬鹿力で曲げる横で、辛うじて意識のある男に鎮痛効果を狙って頭痛薬を飲ませる。酒でも飲ませて意識を失わせようかとも思ったが、血流が増えそうなので止めておいた。
「あ、そういえば……」
 鞄を漁り、虫さされの軟膏を取り出す。確かこれには局部麻酔の効果があると聞いたことがある。皮膚を麻痺させることで痒みを押さえる効果が、早漏に聞くとかなんとかで覚えていた自分が少し悲しい。
 気休めでもいいやと傷の周りに塗り、小さな消毒液の瓶で曲げて貰った針を消毒する。ソーイングセットの中に小さく巻いておいたシルクの糸を針穴に通すと、アントーニョに男の体を押さえるよう指示した。
「な、何するん?」
「何って、腹から中身出ねーように縫うしかねーだろ!」