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【腐】君を探す旅・2【西ロマ】

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部隊に守られながら帰宅し、ロマーノはようやく一息ついた。アントーニョの家はこじんまりとしており、スペイン時代の屋敷とは随分違う。
 やはり国が大きくなると『国』の待遇も変わるのだろうか。多くの人を雇っていたあの豪華な屋敷を思い出したものの、その後の没落まで思い出してしまい心が重たくなった。
「ロヴィの部屋はこっちやで!」
 ゲストルームを空けてくれたアントーニョが、にこにこと笑いながら呼びに来る。
 狭いながらも明るい部屋は懐かしささえ覚え、ロマーノはひと目で気に入った。荷物を部屋に置き、台所へ移動する。コンロも冷蔵庫もない台所は少しひんやりとした空気が漂い、窓の外には井戸が見えた。
「……風呂ってあるよな?」
 この時代、風呂禁止令が出ていただろうか。自分は無視して入っていた記憶があるが、ここではどうだか分からない。アントーニョに問いかけると、彼は「あるでー」と気楽に答えた。
「やっぱりロヴィ風呂好きなん?」
「当然」
 ローマの風呂好きを舐めて貰っては困る。『イタリア』ですからと胸を張って答え、場所を案内して貰う。お湯を運ぶのが楽だからか台所の隣にある風呂場には、大人一人が入れる程度のバスタブがあった。
 お湯を沸かすのが大変そうなので毎日は無理だろうが、それでもさっぱり出来るのは有り難い。もう少し暑くなったら水風呂でもいいかなと考え、そういえば今何月だろうと疑問が涌いた。
「七月やけど……」
 不思議そうに小首を傾げる姿に、暑さの感覚がイタリアと違うからと言い訳しておく。七月にしては暑いイメージがそこまでなく、こんな所で地球温暖化を感じる羽目になった。
「ジェラード食いてぇな」
 夏だと思うと、冷たいものが食べたくなる。一年中食べているとはいえ、やっぱり夏に食べるジェラードは格別だ。ロマーノが遠い目をしている横で、アントーニョが大きな目をぱちくりとさせた。
「ジェラード?」
「イタリアの氷菓だ。あ、一応国外持ち出し禁止の筈」
 たぶん、まだ作成方法は秘法扱いの筈と言葉を濁し、自分は『国』だから知っているし食べていたと誤魔化す。話を聞き瞳を輝かせたアントーニョだったが、持ち出し禁止という単語を聞いて可哀想な程がっくりと肩を落とした。
(うわー……罪悪感がビリビリと……)
 そういえば、スペインは美食家だった。美味しいもの好きな彼にジェラードを作ってあげれば、きっと喜んでくれるだろう。でもここに氷を作る技術は無い。
(エジプトで昔から氷を作ってたってテレビで見たけど、思い出せねーぞコノヤロー)
 ええと昔はどうだったかなと記憶を漁り、「雪があれば作れるんだけどな」と首を捻った。
 イタリアでは雪山の雪で作っていた気がする。需要が多い雪に税金をかけるとかかけないとか、そんな儲け話を弟がしていたような、していないような……怪しい記憶しかないのが辛い。
 どのみちこの時代で冷やせそうなのは雪しかないが、手に入れるのは大変そうなので諦めよう。それよりも夏ならパラグアジョ(スペインの桃)が出る筈だ。
 スペイン国内の流通がメインの桃だが、子供の頃から食べているロマーノにとって重要な季節もの。独立後もスペイン宅に突撃しては食べていた。せっかくなら食べておきたい。
「お前の金だけど、食材買いに行かねーか?」
 夕飯はイタリア料理をご馳走しようと肩を叩くと、何やら考え込んでいたアントーニョは嬉しそうに顔を上げ頷いた。
 布団を干している間に町へ出ることにする。長い間家を空けていたようで、食材は何も無いと子供は語った。アントーニョの腕力が許す限り買い込めば、荷物は山ほどになる。
「パスタはあってもトマトは無い……って、あれは!」
 野菜売り場に見える小さくて黄色い丸。ミニトマトかとダッシュで駆け寄れば、似ているが違う食用ほおずきだった。味も見た目も割と似ているものの、やっぱりトマトがいいと思うのは贅沢だろうか。
 しょんぼりとしつつも結局買うロマーノに、アントーニョが大分軽くなった財布を渡す。バジルもついでに買い、今日はほおずきとバジルのパスタにすることにした。