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【腐】君を探す旅・3(完)【西ロマ】

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「あ、せや。すっかり忘れてたけど」
 しばらく無言でイチャイチャしていたものの、スペインの腹の音であえなく解散となる。一度イギリスに荷物を取りに帰ると背を向けたロマーノの腕を掴み、スペインはにっこりと、だが笑ってない瞳を向けてきた。
「イギリスん家での、尻の痛い思い出って何?」
「は……?」
「言うてたやん。『いい思い出になった』って。『尻が痛い』ともな」
「あ、いや、そういう変な意味じゃなくて」
「浮気はアカンよ?」
 もしかして、ここに連れ込んだときの怒りは嫉妬だったのだろうか。それにしても嫌な部分だけ聞いているものだ。誤解しか与えない単語だけ聞いているんじゃないと怒ってみたものの、スペインはイギリスとの関係を訝しんだ。
 いつの間にか腕は両手とも抑えられ、テーブルの上に縫い付けられている。まるで蝶の標本のような姿に暴れるが、スペインの腕力はびくともしなかった。
「誤解だっ!」
「せやの? じゃあ確認しよか。……全部、な」
 口角が上がるのに、瞳は射抜くようなまま。恐怖で動けないロマーノにはパジャマを脱がす手を止めることは出来ず、奥の奥まで痕跡が無いか調べられる羽目になってしまうのだった。


 勿論確認作業だけで終わる筈もなく。スペインはぐったりとベッドに沈む恋人に布団を掛けてやる。顔には涙の跡があり、それもまたそそるなとロクでもないことを考えた。
「おかえり」
 さらさらの髪を撫でてやり、小さく声を掛ける。消えたと思っていた青年。彼の言葉通りに、だが予想とは違った再会をスペインは迎えることとなった。
 突撃した屋敷。ドア越しに聞こえる声。嫉妬に駆られ連れ出したものの、胸を渦巻く感情を言葉に出来ない。形に出せない感情が涙になり視界をにじませた時、いつもなら変化に気付かないロマーノが信じられない言葉を口にした。
『泣くなよ、ピアニョーネ』
 昔、彼によく言われていた言葉。同じような暖かい声で、ロマーノが口にする。そして彼と同じ動きで頭を撫でると、やがて二人の関係を思い出したのか手を引っ込めてしまった。
 ただ似ているだけだったロマーノの顔に、ロヴィーノの顔が重なっていく。フランスが言っていた「子供ぶっている」という言葉が頭を渦巻き、スペインは酷く狼狽した。
 本当のロマーノは、こんなに大人だったのか。
 こんな、ロヴィーノのように……。
(ああ、ここに居たんやね)
 目の前に探し続けたロヴィーノが居る。その発想はスペインの脳に浸透していく。いつか会える、待っていると言ってくれた彼が、スペインが愛し育てた子供の中に居たのだ。
『愛しているよ、アントーニョ』
 そして自分を罰するように愛を告げた日が嘘のように、春風のような爽やかさで彼は口にした。美しい顔は微笑みを湛え、いつもの子供っぽい照れた顔ではない。
 どちらも選べないという自分を丸々受け入れ、抱きしめてくれる姿に、守ってあげなければならない子供の姿は消えていた。そっと体を預ければ、しっかりと抱き返される。
 夢中で唇を重ねる間、ずっと二人について考えていた。ロマーノとロヴィーノ。同じ顔の二人のことを。だが二人について考えていた筈なのに、ロヴィーノがロマーノと重なり消えていく。
 やがて頭は、ロマーノのことでいっぱいになっていった。
 肌を合わせた今となっては、どちらがより好きかなんて考えるのも馬鹿らしい。可愛い恋人の言う通り、二人を纏めて抱きしめてしまえばいいだけなのだから。
 余程上手く自分の中で混じったのか、ロマーノの寝顔を見てもロヴィーノが浮かばなくなっている。それがいいことかどうかは分からないが、きっとロマーノは喜ぶだろう。
(忘れた訳やない、……思い出になったんやね)
 きっとようやく自分は、ロヴィーノが消滅したことを受け入れられたのだ。受け入れ、昇華した。そして本当のロマーノを見つけられたのだろう。
 おやすみのキスをし、スペインは大切な人を抱きしめながらありし日の情景へ別れの涙を零した。

 君を探す旅の終わり。
 ここから始まる、二人の新しい旅路。


END