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白の祓魔師

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−side A−
 
メリークリスマス!

告げられている言葉に違和感を覚えた。
だって、言ってる奴は悪魔 ―しかも、ぺーぺーの地位じゃなく、魔界公爵― だから、変だろう?
思わず眉間に皺が寄った。

「はいぃ?」
「だから、メリークリスマスだよ。アムロ」
「だ・か・ら! 何だって、あんたがその言葉を口にするんだって事だろ」
「今日はクリスマスだろう? 全国民が、あちこちで言っている。間違っていないはずだ」
「そりゃね、人が言うなら間違っちゃいないさ。だが、あんたは悪魔だろう! おかしいだろうが!?」
「悪魔がクリスマスを祝ってはいけないという決まりはないぞ」
けろりとして言う奴に、腹立たしさが募ってくる。
「決まりだとかじゃなく! 立場的におかしいだろうって言ってんだっ!」
思い切り怒鳴ってみたのだが
「悪魔は享楽的にできているのだよ、アムロ。楽しい事は大好きなのだ。だから、それが神の子の誕生日だろうが仏陀の誕生日だろうが関係ないのだよ。それよりも、はい。これ」
奴はニコニコとしていて、一向に引き下がる気が無いどころか、声と共にクリスマス仕様にラッピングされた物を差し出してくる。
だが、俺は受け取るのに躊躇した。

相手は悪魔だ。
どんな交換条件を出されるかわかったもんじゃない。

俺は目の前の手ごろな大きさの袋を凝視した。
「なに?これ」
「だ・か・ら!クリスマスプレゼントだ」
「〜〜〜〜〜〜〜」
“それが怖いんだって”
「受け取ってはくれないのか。君の為に吟味に吟味を重ねて、手に入れた物なのだが」
いつまでたっても手を出さない俺に向かって、しょんぼりという形容が当てはまる風情 ―例えて言うなら、大型犬が買う主につれなくされて、耳をペタンと下げているかのよう― で言われては、俺も素気無くし続けるのが心苦しくなった。

「・・・・・・どうやって手に入れたんだ?」
「そりゃ、仕事をして?」
「・・・なんで疑問系での返答なんだ?」
「一般的な仕事と言って良いか、若干の疑問があるからだ。私的には仕事というのも馬鹿馬鹿しいのだがね」
「・・・・・・内容は聞かない方が僕の精神的安息に繋がりそうだから、あえて聞かないよ」
「で?受け取ってくれないのかね?」

渋々手を出して受け取ると、途端に満面の笑みを零れさせた。
「開けてみたまえ。きっと君の気に入ると思うのだよ」
目の前にいるこの美青年が悪魔だと、誰が想像出来るだろう。
知っている俺ですら、束の間忘れてうっとりしそうになる位の威力だ。

“馬鹿!祓魔師の俺が誘惑されてどうする!”

情けない自分に立腹しつつ、俺は袋を乱暴に開いた。
中から出てきたのはキャメル色の暖かそうな手袋。

「これは、海外の某ブランドが冬に数量限定で生産しているカーフで出来た手袋なのだ。丁寧になめしてあり、内側は起毛してある。暖かさはライダー達のお墨付きという逸品なのだよ」

“なんだって〜?!スレッガーさんから聞いた事あるけど、これ、注文しても数年先じゃなきゃ手に入らないって言って無かったか??”

「!こんな高いものっ!」
「君が使うなら、値段など関係ない。君は寒がりだからね。これを着けて外出すれば、手が悴んで物を掴み損ねる事も無い。さぁ、着けてあげよう」

驚きに固まる俺の手のひらから手袋を取ると、奴は俺の背後に素早く回り込むと腕の中に閉じ込めるようにしてから手袋を嵌めた。そして、マントで俺の全身を包み込み、他者の視線から隠してしまう。

「ちょっ!」
取らされた体勢に焦って抵抗してみても、奴の腕による拘束は、痛みを伴わないのに外せない。
更に、耳元に冷たい唇が押し当てられて、不覚にも全身が戦慄した。
「本当なら毛皮のコートをプレゼントしたかったのだが、きっと君は頑強に拒否するだろうと思ってね。これ位なら受け取ってくれるだろう? 冷え切ってしまっている身体は、私がこうして暖めてあげれば良いのだし」

甘く囁かれた声の威力に、情けなくも膝の力が抜けた俺の体を、奴は苦も無く支えて髪に顔を埋めた。
齎される温もりは他の誰よりもあたたかくて安心感を与えてくる。

“絆されたらいけないって解ってるけど……。今日はこのプレゼントへのお返しだ。腕の中で大人しくしててあげよう。明日からは、また敵対する者同士の立場に戻るけどな”
俺は自分にそう納得させて奴に全身を預けた。

ふわりと、甘くもスパイシーな香りに包まれ、俺はひと時の安らぎを得たのだった。
2011/12/25
作品名:白の祓魔師 作家名:まお