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白の祓魔師

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君なればこそ


−side C−

メリークリスマス!

告げた言葉は、今日のこの日であればそこかしこで飛び交っているものだが、言った当人 ― 人というのとは些か違うが ― にはあまりにかけ離れたものだったが故、アムロの眉間にしわが寄せられてしまったのは致し方なかった。

「はいぃ?」
「だから、メリークリスマスだよ。アムロ」
「だ・か・ら! 何だって、あんたがその言葉を口にするんだって事だろ」
「今日はクリスマスだろう? 全国民が、あちこちで言っている。間違っていないはずだ」
「そりゃね、人が言うなら間違っちゃいないさ。だが、あんたは悪魔だろう! おかしいだろうが!?」
「悪魔がクリスマスを祝ってはいけないという決まりはないぞ」
「決まりだとかじゃなく! 立場的におかしいだろうって言ってんだっ!」

こめかみに青筋まで立ちそうなほどご立腹のアムロを目の前にし、シャアこと魔界公爵アスタロトは平然としていた。
キャンキャンとわめく様も可愛く見えて仕方がないのだ。

 シャアがアムロと出会ったのは、アムロが10歳の時
生誕直後からバチカンから聖人と称されたアムロを滅ぼそうと現れたバフォメットを、その身を持って退けた彼に強い興味を抱いたシャアが、アムロを守護すると言って人間界に留まりだして既に5年を経ている。
常は長毛種の猫の姿をとっているが、時々こうして元の姿をアムロの前に晒す。
何をどうやっても魔界へ帰る気にならないシャアの存在を、アムロは渋々容認 ―というか、黙認と言った方が正確だが― している。それでも、シャアが時折起こす非常識にアムロがキレるのは毎度の事だ。
今日も今日とて、悪魔がキリスト誕生を祝う日を何の嫌悪も違和感もなしに受け入れている事に、アムロはキレたのだ。

「悪魔は享楽的にできているのだよ、アムロ。楽しい事は大好きなのだ。だから、それが神の子の誕生日だろうが仏陀の誕生日だろうが関係ないのだよ。それよりも、はい。これ」
語尾にハートマークが付いていそうな程明るく告げながら差し出した包みを、アムロは怪訝な表情で凝視してきた。
「なに?これ」
「だ・か・ら!クリスマスプレゼントだ」
「〜〜〜〜〜〜〜」
「受け取ってはくれないのか。君の為に吟味に吟味を重ねて、手に入れた物なのだが」
しょんぼりという形容が当てはまる風情で言えば、アムロも素気無く出来かねたのだろう。
「・・・・・・どうやって手に入れたんだ?」
「そりゃ、仕事をして?」
「・・・なんで疑問系での返答なんだ?」
「一般的な仕事と言って良いか、若干の疑問があるからだ。私的には仕事というのも馬鹿馬鹿しいのだがね」
「・・・・・・内容は聞かない方が僕の精神的安息に繋がりそうだから、あえて聞かないよ」
「で?受け取ってくれないのかね?」

可愛らしくクリスマス仕様でラッピングされた袋は、丁度アムロの手掌に乗る位の大きさだった。
「開けてみたまえ。きっと君の気に入ると思うのだよ」
こうしてニコニコと満面の笑みを浮かべて見つめている美青年が悪魔だと、周囲の誰が想像するだろう。知っている筈のアムロですら、束の間忘れそうになったのだ。そんな自分に腹を立てたのか、アムロは袋を乱暴に開いた。
中から暖かそうな手袋が出てくる。

「これは、海外の某ブランドが冬に数量限定で生産しているカーフで出来た手袋なのだ。丁寧になめしてあり、内側は起毛してある。暖かさはライダー達のお墨付きという逸品なのだよ」
「!こんな高いものっ!」
「君が使うなら、値段など関係ない。君は寒がりだからね。これを着けて外出すれば、手が悴んで物を掴み損ねる事も無い。さぁ、着けてあげよう」
シャアはアムロの手の中から手袋を取り出すと背後にするりと回り込み、腕の柵に閉じ込めるようにして手袋を嵌めた。そして、そのまま胸の中にアムロの痩身を抱き込むと、漆黒のマントで包み込んでしまう。
「ちょっ!」
「本当なら毛皮のコートをプレゼントしたかったのだが、きっと君は頑強に拒否するだろうと思ってね。これ位なら受け取ってくれるだろう? 冷え切ってしまっている身体は、私がこうして暖めてあげれば良いのだし」

腕の中でもがく華奢な身体をやんわりと抱き込んで動きを制すると、シャアはアムロの冷たい耳に唇を寄せて甘く囁いた。その声の威力にアムロの膝がカクンッと脱力する。
シャアは嬉しそうに微笑むと抱く力を少しだけ強めた。

“君なればこそ、じっくりと時間をかけて私を受け入れて貰いたいと思うのだよ。これ程に心惹かれた人間はいなかった。いつかきっと、君を私の、私だけのものにしてみせる。ミカエルの欠片と共にバチカンの深窓に閉じ込める真似などさせない。君は私の為にだけ生まれた愛しい者なのだから”

シャアは冷気を纏ったアムロの巻き毛に顔を埋めると、改めて強く誓ったのだった。
2011/12/22
作品名:白の祓魔師 作家名:まお