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東方~宝涙仙~其の弐拾七(27)

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東方宝涙仙


「レミィが一人でやられるとは思わないけど、あの子心が弱いとこもあるから」


ー紅魔館エントランス付近廊下・紅美鈴&フランドール側ー
「で、魔理沙は今どこかわからないのね」
「おそらくエントランスの階段にいるかと思われるらしいんです」
 美齢とフランドールは霊夢に出会っていた。美鈴は霊夢に魔理沙の行方について話している。
「霊夢、なにより早く階段へ行ったほうがいいんじゃない?ここからエントランスなんてそう遠くないわ」
「パチュリーの言うとおりね。急ぎましょう」
 4人は一緒にエントランスへ向かうことになった。
 歩いているとフランドールが口を開いた。
「お姉さまは?」
 その質問にパチュリーが答える。
「レミィは風香の部屋に居るわ」
「なんで?置いてきたの!?」
 フランドールが足を止めてパチュリーの服を掴む。
「違うわよ。レミィは自分で先に行けと言ったわ」
「でも…お姉さまになにかあったら…!」
 パチュリーとフランドールの会話を割って霊夢が口を挟んだ。
「フラン。大丈夫よ、その時は私が動くから」
「もちろん私もお嬢さまを助けに行きますよ!」
「ええそうね。レミィが一人でやられるとは思わないけど、あの子心が弱いとこもあるから」
3人がフランドールの心を支えた。フランドールは自分に"頼もしい味方がいる。自分の周りには今白しかない。だから大丈夫"と言い聞かせ、また歩き始めた。


ー紅魔館エントランス・魔理沙側ー
 魔理沙は階段の下で倒れていた。
「いたたた…」
 別に頭や足に致命傷を負ったせいで倒れたわけでもなく、ただ疲れと急な緊張感のほぐれで足をもたつかせて階段で転んだだけだ。下から数えて何段目かのあたりで転んだだけだからかこれといって外傷はない。
「こんな調子で異変解決できるのか?」
 床に体を這い蹲りながら魔理沙は笑った。
「だ、大丈夫ですか?」
 魔理沙の上から声が聞こえる。
「その声は天のささやきですかえ?」
 魔理沙は顔を上に向けた。魔理沙の上にはメイド長風香が覗き込んできていた。
「ああ問題ない。転んだだけだ」
「それじゃあ階段の上で倒れている人とは関係がないんですね?例えばあなたが倒した…とか―」
「なんだバレてたのか。それじゃあ嘘、疲れて転んだ」
「どのみち自分から転んだんですね」
 呆れ笑いを浮かべる風香。魔理沙は再び目を閉じた。
「階段の上で倒れてる奴は生きてるか?」
 目を瞑ったまま現在の唯一の情報源にシズマの生存確認をした。
「ええ、だいぶ深手を受けたようで気絶してますが」
「ならいいんだ」
 魔理沙はそのまま床で寝てしまった。誰の声も聞こえないほど深く。
「起きてください」
「……」
 起きない魔理沙の横に風香は座った。


ー紅魔館メイド長の部屋・レミリア側ー(文体:レミリア視点)
 私がここに来る前に何が起こっていたのだろうか。またひとつ命を失った。それも毎回私の目の届かないところで失う。
この暗い部屋で死んでいったのだから暗殺されたかまっとうに戦って負けたのかどちらかだろう。爆発とか炎上だとかに巻き込まれたような死に様ではない。タンスや机が壊れている。相当強く飛ばされたらしい。
咲夜依頼私はこの紅魔館が平和だと気を抜き始めていた。その瞬間にこの有様なのだから自分が悔しい。
私は咲夜を守れなかった。
 そればかりか妹を犯人扱いして長く幽閉してしまった。
 フランは495年の時を経て徐々に温かみを知り正気な吸血鬼へと成長していた。もはやフランを犯人にする理由などないはずだったのにも関わらず。
咲夜の死、フランの幽閉。そして今回の紅魔館炎上に副メイド長の死。
 そうしたらいいのだろう。犯人はあの姉妹だろう。
ただ、私は全くもって適わなかった。そもそもあの姉妹を倒そうとも咲夜も夢子も帰っては来ない。それだけじゃない。あの姉妹にフランを連れて行かれた。連れて行かれたというよりフランが着いていってしまった。
すべての元凶は私なのだろう。
 いっそこのまま紅魔館の炎上と共に自分も焼き払われてもいい。
  こんなこと咲夜に言ったら怒られるのかな。風香なら怒らないだろうけど。
そういえば風香が見当たらない。夢子と共戦して生き延びて逃げたか、それともどこかで生きているか…
どちらにせよ生きていてほしい。
  夢子…か。もと魔界のメイド。私とは無縁であり咲夜とは同職無縁の人物。初めは嫌いだったが今ではそんなことなくなった。そんなばかりの時を突かれた。
許すわけにはいかない。たとえ黒幕が誰であろうとも必ずその血を捨ててやろう。
 …。早く霊夢たちのところへ戻ろう。
「!?」
 ぐふっ…。顔を誰かに掴まれている!
「誰だ!?」
 誰だ!?
私は投げ飛ばされて床に叩きつけられた。
「がああああああぁぁぁ!!」
 肩を噛まれているのか、まるで刃が突き立てられたような激痛が走る。
「ふふふっ、これがレミリアの味…そしてこれがレミリアの血……」
 確かに噛まれたようだ。新手の吸血鬼?いや、吸われた感覚はない。
昔自分の腕の血を吸ってみた事があるが吸われた時は確実に吸われた感覚がする。
「お前の身体能力、特性は把握したぞ。ふふっ、さっそく試してあげようか?」
 何が言いたいのかわからない。暗闇に慣れた目はその姿を完全に見切った。
だが全く知らない奴が下劣に笑っている。
 すかさず立ち上がって殴りかかるも、奴は瞬間的移動を行ったのか私の後ろに消えた。
「速い速い。これがお前の身体能力。次は特性を調べようか」
 速さでは自信がある。間髪与えず後ろにいる奴を爪で切り裂いた。
「ッ"ァ!」
 うん、完璧に切り裂いた。相手の反応といい、手応えといい、確実に攻撃は成功したようだ。
「痛い…がこの再生力。痛くとも肉体は治る。これがお前の特性」
 完治したらしい。先ほどの噛み付きといい、まるで吸血鬼だ。
私は誇り高き吸血鬼レミリア・スカーレット。まるで吸血鬼まがい程度に負けるなんて。でもどうしようかしら。敵を目で捉えることえままならない。
あhりうぇvfんうぇjこn3いおーーーーー
 また噛まれた。激痛というほど痛くはないが何かを吸収されているようだ。血?血。血を吸われているだけじゃない。精気も吸われているかのように力が入らない。
空気を殴るように腕を振るう。数打てば当たるものね、拳は敵の顔面に当たったらしく哀れにもがいている。吸血鬼の私の実力を超えられるかしら?今の私は悲しみとか憎しみとかで動いているのが実感できる。自分を失ったような気持ち。
故に私は冷酷にでも残酷にでもなれる。
 スペルカードなんてもの忘れて、生身で襲い来る敵を殲滅してやろう、そんな考えしか浮かばない。
暗闇に目が慣れれば敵も見え出す。まだ床に這いつくばっていたのね。
「レミリア・スカーレットォ…。このカラダは使いやすい…んーすがすがしい世界にでも入門した気分だ」
 ※土藤芫花(どとう げんか)
 二つ名:ドッペルの人
 能力:体質、能力、特性を真似する程度の能力
「あらあなたは幻想郷初心者?見たことがないわね」