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Kissing ball

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「ロックオン!」
「よお、メリークリスマス。アレルヤ」
迎えた声がやけに弾んでしまったせいか、起きて来たロックオンは笑ってアレルヤを呼んだ。
「サンタからのプレゼントは、開けてみたか?」
「まだだよ。ロックオンを待っていたんだ」
「そっか、悪い。じゃあ、コーヒーは後でいいから、先に開けてみろよ。折角のクリスマスだ」
そう言って促すロックオンは自分宛ての贈り物があるとは思っていなかったのだろう。リビングに踏み入れて、ぴたりと動きを止めた。
アレルヤはふふ、と浮かぶ笑いを堪えて、ツリーの元に膝をつくと、何気ないフリでプレゼントを持ち上げた。
「……グリーンの方が僕宛てみたいだから、こっちはロックオンだよね?」
「ああ、……そうみたいだな」
照れたように表情を崩したロックオンに、アレルヤも顔がゆるむのが抑えられない。
ちらちらとロックオンを見ながら、プレゼントの包装を丁寧に解いていく。中のビロードケースを開くと、納まっていたのは石のついたチョーカーだった。
「あ……」青と緑の中間。南の島で見る浅瀬の海の色。ロックオンの、瞳の色だ。
「アレルヤはあんまりアクセサリーとかはつけないだろうけどさ。たまには良いかと思って」
長い指が鎖を摘まむと、アレルヤの首を両腕が囲んだ。
「良い子のアレルヤにサンタからのプレゼントだ。気が向いたら、つけてくれよ」
アレルヤの首にチョーカーを着けると、器用にウインクを寄こしてロックオンが笑った。
「うん。ありがとう、ロックオン」
首を回る慣れない鎖の感触が不思議な感じだ。どきどきする。
「こっちは…、シャツか」
ロックオンが紙袋から取り出した生地を広げて、肩に当てた。手触りのいいベルベット生地の光沢を渋いグリーンの色合いが落ち着かせて見せている。アレルヤはほっと息を吐いた。
「良かった、似合っている」
ファッションには疎いアレルヤだ。プレゼントに向いたものを、と店員に尋ねて勧められた中から、ロックオンに似合うものを選んだつもりだったが、少し不安だったのだ。
「ああ、いい色だな。アレルヤが選んだのか?」
「うん、……どうかな」
「サンキュ、嬉しいよ。着させてもらうぜ」
アレルヤの肩を引き寄せると頬に感謝のキスをして、ロックオンが笑顔を見せる。良かった、嬉しい。初めての贈り物だ。
「喜んでくれたなら、嬉しいよ」
「当たり前だろ。俺のサンタクロースが選んでくれたんだからな」
広げたシャツを丁寧に畳んで、ロックオンが立ちあがる。
「着替えてくるよ、朝食にしようぜ」
「そうだね」
包装紙をまとめてアレルヤも立ち上がり、ふと思いついてロックオンを追いかける。
「ロックオン」
「ん?」
パジャマの裾を摘まんで、引きとめた。
寝室に続く扉の前。吊るしたヤドリギの下。
肩越しに振り返ったロックオンへ、背伸びをするようにして顔を寄せた。
「メリークリスマス。……コーヒー、淹れておくよ」
少しだけ驚いた表情を見せるロックオンに満足して、早口で捲し立てるとアレルヤはくるりと背を向けた。

キッチンへと向かったアレルヤは何でもないような素振りだったが、ちらりと見えた耳は真っ赤になっていた。
自分からキスをしておいて、照れていては話にならない。おいおい、と呆れたように呟いてみるが、……ロックオンもだらしなく緩んだ表情を隠せなかった。
こっそりプレゼントを用意してみたり、挨拶程度のキスを仕掛けて真っ赤になってみたり。
あれは物慣れない中でのアレルヤの精一杯で、ロックオンを喜ばせようとしてくれたのだろう。いじらしくて可愛い恋人だ。
着替えてアレルヤの所にいったら、今度はこちらから思い切り抱きしめて、愛情の籠ったキスをしてやろう。
今日はクリスマス。ヤドリギの下でなくても、恋人にキスを贈るのに理由はいらないのだから。
作品名:Kissing ball 作家名:紗博