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大佐の新しい二つ名

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ただ、屋根から落ちそうな猫を助けようとしただけだったのに。

「「危ないっ!!」」

二方向から同時に走る錬成の光、直後、光の洪水がその場に起こった。


―――

そして

「なんでセントラルにいるんだ!?アルフォンス・エルリック!!」
「そ、そんなこと言われても、買い出しに来てただけです~。」

頭痛がする。
頭に手をやると、発火布をしていない手が、金色の髪に触れた。
・・・まったく
なんで、また魂の入れ替えなんぞ、非常識な事態になるんだっ!!

困りきり、情けない顔をした自分の姿を見る。
こうして自分の体を見るのはこれが2度目だ。
・・・?いつも傍にいる鋼のの姿が見えない。あと師匠となったナギの姿も。

「それで・・・アルフォンス、鋼のとナギはどこだ?」
「ナギさんは薬草を取りに、兄さんは一緒に買い出しに来ているんで、多分近くに・・・あ、兄さんっ!!」

ちょうど通りの向こうに大量の食料を買い込んだ鋼のが見えた。
おーいと手をふる私の姿(中身はアル)を見て、ボトッと食料が山積みの袋を落とした。
しばし我々二人を見て固まって・・・クルっと背を向けた。

「えぇっ!? 兄さん!!」
そのまま遠ざかる背中に、アルフォンスが慌てる。
鋼の・・・この状況で逃げるとはいい度胸だ。

「アル、私の手袋を貸したまえ。」
「は、はい」
慌てて手袋をポケットから出して貸してくれた。本当に素直だな、アルフォンス。
これで何をするか説明しない私も私だが。

バチっ

指を鳴らして、火花が走る。

数十メートル先を逃走中の鋼のに、見事命中した。

「ぎゃっ!?」

「わぁっ!!兄さん!?」

少し燃えたショックで転んだ鋼のに追いつく。

「どうして逃げる?鋼の。」
道にあぐらをかき、ぷすぷすと頭から煙が出しながら座り込んでいる鋼のを見下ろす。
アル(大佐の姿)は心配そうな顔をしていた。

「だーーっ!!その顔で『鋼の』言うんじゃねぇっ!!なんだって、お前らはまた入れ替わっているんだよぉっ!?」
「不幸な事故だ。」
「威張るなよ。不幸な事故なら自分たちだけで対処しろっ!!俺は関係ないっ!!
せっかくの修行の合間の楽しい休日に・・・何が悲しくて大佐なアルとアルな大佐と・・・また悪夢を体験しなきゃならないんだっ!!」
「我々だって、好きで入れ替わったわけではない。」
「ナギに注意されてただろうっ!!二人でそばにいるときは錬金術を使うなよっ!!。」
「そばにいるとは知らなかったんだ。」
「知っとけよ、気づけよ。一度は入れ替わった魂だ。傍にあるとかなんとか気配で分かれよ。」
「分かるかっ!そんなことより、鋼の。私は午後から大事な会議があるんだ。欠席は出来ない。ナギはどこだ?」
「ナギ?」
「そうだ。ナギがいれば元に戻れるだろう。」
「・・・分からない。」
「『分からない』だぁ?」
「だって、ナギの薬師の仕事には俺たち関係ないだろ。薬草を取りに遠くの山に行くから、セントラルで買い出しをしててくれって頼まれて・・・2日後にセントラルの駅で待ち合わせているんだ。」
「・・・その薬草を取りに行った山とはどこだ?」
「聞いてない。」
「では、この2日間、ナギと連絡は?」
「取れない。」
「取れないですむか、鋼の!?じゃぁ、このまま2日間過ごせというのか?」
「俺に怒鳴るなよ、俺にっ!!だから、その顔と体で『鋼の』言うなっ!!」
「いい加減、慣れろっ!!」
「慣れるかぁっ!!」

「まぁまぁ二人とも、落ち着いて。」

アル(大佐の姿)の仲裁に・・・鋼のの力が抜けた。相変わらず現実拒否しているらしい。

「ちょうどいい。このまま軍司令部に戻る。鋼のも連れ帰るぞ。そっちを持て。」
「は、はい。」

私とアルフォンスはそれぞれ鋼のの腕を持つ。さながら連行する犯人よろしく、鋼のを引き吊りながら、セントラルの街を軍司令部へと急いだ。


―――――
軍司令部。マスタング大佐の部屋に、異変が起こった。
「こんにちは。」
「こ・・・大佐?」
「アルフォンス・エルリック・・・私が自分の部屋に戻るのに、『こんにちは』はないだろう。」
「あ、そうか・・・じゃ、ただいま。」
「いちいち、そんな挨拶はせんっ!!いいから早く部屋に入り給えっ!」

「はい、ゴメンなさい・・・」

アル(大佐の姿)が急にとまり、両手を上げる。おかげで鋼のを一人で抱えるはめになった。

「おい、急に手を・・・中尉、銃を構えるな。敵じゃない。」
「しかし・・・大佐ではないですよね。」
「アルフォンス・エルリックだ。・・・いいかげん、慣れないか。」
「あ~らら、また大佐とアル、入れ替わったんですか?」
「ハボック・・・何を呑気に。・・・まぁ、その通りだ。」
途端に部屋にいたブレダ少尉、ファルマン准将、フュリー曹長に取り囲まれる。
なぜかハボックが得意気だ。
「へぇ~、ハボックから話には聞いていたんですが・・・半分、嘘だと思ってました。本当に入れ替わるんですね、魂。」
「・・・いつもの大佐ともアルとも雰囲気違うな、確かに。」
「アルフォンス君はこんな険しい顔、しませんもんねぇ。」
「だろだろ?あ、アルの大佐に名前呼んでもらってみれば、面白いぜ。アル、全員の名前を呼んでくれ。」
「え、え~っと、ハボックさん。ブレダさんにファルマンさんとフュリーさん・・」
「「「おぉぉぉっ」」」
「俺、大佐に『さん』付けで呼ばれたの、初めてだ・・・」
「私も」
「僕もです。」
「な、面白いだろ・・・・ってっ痛っ!!」

「何を遊んでいるんだっ!!お前たちはっ!!」
「何で俺だけ殴るんっすか?」
「お前が主犯だからだっ!!」

思わず後ろから殴りつけたハボックが抗議の声をあげる。
本当はもっと上から殴りつけたかったが、身長が足りない。威力も半減だ。
全く、鋼のや中尉のように固まってしまうのも鬱陶しいが、ハボックらのように遊ばれるは、腹立だしいっ!!

なぜ、皆心配するとか、普通の対応が出来んのだっ!!

「じゃ、今度こそアルに頭を下げて・・・」
ゴン

懲りずに私の体で遊ぼうとするハボックにもう一度制裁を下してから、こんなことをしている場合ではないことを告げる。

「緊急事態だ・・・今日の会議をどうする!?」

「「「「あーーーっ!!!」」」」

部下4人の声がハモる。
やっと思い出したか、今日の会議の重要さを。
「マズイっすよ。大佐が出席しないと。イシュバール政策の予算、今日の会議で決まるんでしょう。」
ハボックでも、ことの重大さが分かるらしい。
「もちろん、欠席するつもりはない。なんとしてでも軍の上層部を説得して、予算をもぎ取る。」

「・・・誰が出るんですか?」
不安そうにフュリー曹長が尋ねる。

「私の姿のアルフォンス・エルリックに出てもらうしかないだろう。」
「えぇっ!?僕、会議とか出たことありませんっ!!。」
「人生何事も経験だ。初めてのことをするのはいいことだ。」
「そういう問題っ!?」
「そういう問題だ、いい機会だと思って軍の上層部会議に出席したまえ。滅多に出られるものではないぞ。」
「・・・そりゃそうだ。」
「うるさいぞ、ハボック。
作品名:大佐の新しい二つ名 作家名:海人