二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

大佐の新しい二つ名

INDEX|2ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 

というわけで、アルフォンス、会議の資料だが・・・あった、コレだ。これに全て目を通せっ!!会議は午後2時からだ。あと1時間しかないぞ。」
「ムリですって。こんなに読む時間、ないじゃないですか。」
「ムリでもなんでもやってもらう。イシュバールの復興がかかっているんだ。逃げも弱音も許さん。中尉・・・一緒に会議に・・・」
「できません。撃たない我慢だけで精一杯です。」
「・・・ならばこの体に合う制服を用意してくれ。
階級は適当に・・・そうだな軍曹でいい。手配を。」
「はっ」
「大佐?」
「キミだけ会議に出すわけにはいかんだろう。
本当なら中尉が一番適役なんだが、ムリなようだ。私が一緒に出る。」
「・・・そのアルの姿でか?」
「だから、変装するんだろうが。鋼の。
いいから、アルフォンスは書類を読め、鋼のはその手伝いをしろ。すぐに戻る。」

別室に行き、中尉が手配した制服に着替え、伊達メガネをかける。きちんとネクタイを締めれば、多少、若いかもしれないが、軍曹クラスの軍人に見えなくもなかった。

あと会議まで30分、こんなときにはなぜ時間が経つのが早いのか。

急いで部屋に戻ると・・・皆、唖然として、固まっていた。

「アル・・・意外と似合うな、制服。」
「そうだな、いつもより大人びて見えるぞ。」
「だーーっ!? 大佐、なんでアルを軍人に!?」
ブレダ、ハボック、鋼のの順に好き勝手な感想を言う。全く。

「落ち着け、鋼の。軍関係者の会議に一般人が出るわけにはいかんだろう。緊急事態だ。
今だけアルフォンス・エルリックは軍曹で、イシュバール政策の助手という立場を取る。
それより、書類、見終わったか?」
「え~っと・・・まだです。」
「まだ、半分も見てないではないかっ!もう30分切ったんだぞ
・・・コレとコレとコレ、あとコレだな。少なくともこの書類だけは見ろっ!」
「は、はい。」

「大佐~、資料だけじゃなくって、表情とか仕草も特訓した方が良かないですか?」
ハボックが最もなことを言う。
確かに、いつもの私らしからぬ言動をしてもらうと、今後の業務に支障が出る。
「アルフォンス・・・会議の間だけでいい。私らしくしろ。」
「大佐らしくって・・・え~っと・・・」
「だから、ここに、眉間にしわを寄せて、口は半分上げて、人を馬鹿にしたような表情すればいいんだよ。」

ハボック・・・貴様も鋼のと同じような意見か・・・

「え~っと・・・眉間にしわを寄せって・・・こうですか?」
「違う、違う、そんな困った顔じゃなくて・・・威嚇するような顔。」

「もういい、ハボック!!時間だ。アルフォンス、出るぞ。」
「は・・・はい。」
「とりあえず無表情でいろ。質問で分からないところは私がフォローする。
・・・あと、当たりが少しキツイかもしれないが・・・冷静に対応しろ。」
「わ、わかりました。」
「鋼の、なるべく早くナギと連絡が取れるよう、しらみつぶしに知り合いに電話をかけろっ!!。そこの軍の回線を使って構わない。」
「分かった。」

こうして不安そうな大佐姿のアルと、イライラした様子のアル(中身は大佐)は会議室へと向かっていった。


―――――

「大佐、相当キレてたな。」
怒鳴られるような指示を受けたエドが言う。

「そうですね。この会議、失敗したらイシュバールの復興が遅れるのは目に見えてますからね。」
とはフュリー曹長。

「会議室・・・燃えないといいな」
ハボックが誰もが心配していながら、口に出さなかったことを言う。

「まさか・・・」
「まさかな・・・・」
「「「「はっはっはっはっ」」」」

乾いた笑いがマスタング大佐の部屋に響き渡った。


―――――
所変わって、ここは軍上層部の会議室。
軍の上層部だけあって、いかつい顔をした、年配の風格ある軍人が、びっしりと机を囲み込むように座っている。
―― 迫力あるなぁ
自分も大佐としてそんな怖い顔の軍人と一緒に席に着いているとは、不思議な気分だ。ついつい、客観的に観察してしまう。
ナギさんから教えてもらって気を読む練習を少しはしているけど、・・・とりあえずホムンクルスっぽい気はないから、全員人間ではあるみたいだ。・・・なかには、本当に人間ですかってくらい怖い顔の人もいるけど。

「ロイ・マスタング大佐・・・マスタング大佐」
後ろから大佐(体はアル)に小突かれる。
「あ・・・ハイ。」
そうか、今、マスタング大佐だったんだ。忘れてた。
「イシュバールの復興の報告を。」
報告、報告・・・確かさっき見た紙にあったような・・・
ガサゴソしていると、スっと紙が目の前に出された。
大佐のフォローだ。
「え~っと、イシュバールの民の流入が思ったより遅れています。
スラム間の距離が遠く、また情報の伝達が十分になされていないのが原因です。」
「それは、イシュバールの民が帰りたくないからではないかね。」
「・・・イシュバールの民にとって、イシュバラは聖地です。帰りたくないと考えている民はいません、いてもごく少数だと思います。」
「その根拠は?」
「彼らが信じる宗教感です。聖地に住みたくないという信者ないないでしょう。」
「ふ~む、どうも、そこらへんがよく分からないのだが。」
「異文化と異なる宗教、ここを理解するかどうかが、本当に分かり合えるかどうかの鍵です。」
「じゃが、イシュバールの民はアメストリスをよく思ってはおらん。
そのような者たちのためにこれ以上、予算をつぎ込むのはどうかと」
「そ、そんなことありませんっ。
イシュバールの人たちは、あんなことがあったのに、アメストリスを救ったんです。
許してくれているのかはわかりません。だけど、アメストリスは彼らに感謝すべきです。
少なくとも壊した建物、街を復興する手伝いはしていいはずです。」
「その復興を例え国の予算で行ったとしても、恩義には感じまい。
無駄な予算じゃ。それどころかアメストリスに復讐を考えておるかもしれん。」
「どうしてそんなこと思うんですかっ!!
・・・皆、いい人たちですよ。スラムに移住してからも・・・不便な生活なのに
・・・明るくふるまって、旅人を迎え入れて・・・いい人たちなんです。」
ホムンクルスから逃げたとき、なにも言わずに迎えれてくれたイシュバールの人たちを思い出す。貧しくても明るく、困っている人を助けてくれた。
あれ・・・なんか涙が・・・ぼろぼろと出て、報告書が見えなくなった。
一生懸命こらえようとするんだけど、あの時の思い出と一緒にポロポロ出てきて、止まらない。

「・・・・・・・・・・・・・」
会議室が波を打ったように静かになった。

「あ~・・・反対意見もないようだし、この案は可決で。」
「えっ、じゃあ認めてくれるんですか?」
「あ、あぁ。」
「ありがとうございます。」

袖口で涙をぬぐって、にっこり笑ってお礼をしたら・・・
いかつい顔をした皆さんがビシっ固まった。
多分、一番偉い大総統の席に座っている人なんか、目をまん丸にしてこぼれ落ちそうだ。

「よ、予定より早いですが・・・今日の会議はこのへんで終了します。」
上ずった声で、議長が会議の終了を宣言した。

えっと・・・終わったのかな?
作品名:大佐の新しい二つ名 作家名:海人