佐藤君、勤労に感謝する。
「ウソだろう。」
佐藤の背に冷たい汗が流れる。
「何でオレがオマエと…。」
「佐藤君、酔っ払ってたからね。」
相馬は淡々と状況分析をしてみせる。
いったいどういう神経をしているんだ、と佐藤は思った。
「間違えたんだ、オレは…。轟だと思って…。」
「そうだね、オレを轟さんだと間違えちゃったんだよね。」
「オマエもオマエだろう、なんで拒まなかったんだ…!」
「えー、何でかな。おもしろいから?」
「おもしろいから!?」
「佐藤君があわてるとおもしろいんだもん。ほら、そんな風に、
うわあ、やめて落ち着いて、佐藤君!」
必死の力で理性を総動員しながら、振り上げた包丁を佐藤は再び降ろした。
こんな風になった相馬には何を言っても無駄かもしれない。
相馬はいつもそうだった。
自分のプライベートのことなどについては
のらりくらりと話をかわしながら、彼が核心に触れてくるのは
相手の弱みにつけこむときだけだった。
まじめな話をする気がない相馬とは、
佐藤はまともな会話ができたためしはない。
佐藤は力なく言った。
「おもしろいから?
おもしろければ何でもいいのかお前は。
おもしろければ、男と寝るのか?」
作品名:佐藤君、勤労に感謝する。 作家名:pami