佐藤君、勤労に感謝する。
厨房内に、佐藤の包丁の音だけが響く。
まな板の上のキャベツはみじん切りを通り越して、
原型をとどめないなにかゲル状のものに
変化していた。
相馬はけげんそうに佐藤を見上げた。
「佐藤君?」
「相馬…。」
今朝の状況からすると昨日の夜は、オレたち二人は、
いったいどこをどうしたらあんなことになってしまったのか。
いやいや、最後まではやってないよな。
やってないという確証もないがやったという確証もない。
良かったら教えてください。
佐藤の頭を疑問と困惑が駆け巡ったが、それを彼は言葉にすることができなかった。
「昨日のことだけど。」
佐藤は言葉少なに切り出した。
「昨日のこと?」
「ああ…。」
佐藤はうなづいた。
相馬は言いよどむこともなくすらすらと続けた。
「昨日のことって、昨日佐藤君が僕をベッドに押し倒して、
服を脱がせて、いろんなところにあんなことやあんなことを…うわあ!」
佐藤が思わず振り上げた包丁を避けるために、相馬は手近なところにあった
なべのふたを頭にかぶった。
「佐藤君、はやまらないで。殺人はまずいよ殺人は。」
作品名:佐藤君、勤労に感謝する。 作家名:pami