こらぼでほすと 解除1
「だから、七月の頭ぐらいならいいだろ? とーさんも一緒に家族旅行ってことなら、休めると思うんだ。」
「俺たちも、それぐらいなら休みになっているので。帰ってから、留守番とかお盆の手伝いは、俺たちも参戦しますから。」
「予定がちゃんと取れたらな。店のほうを休めるか、わかんないだろ? 」
「それは、キラさんに言ったら、オッケーだって言ってた。キラさんも、ねーさんとオーヴへ遠征するとか予定してた。なんか、結構、ねーさん絡みの予定が出てるんだ。」
シンたちが、家族旅行に行きたい、と、キラとアスランに予定を説明したら、すぐにオッケーが出た。あちらはあちらで、オーヴへの遠征の予定を春頃に予定しているとのことで、そちらにも参加しろ、と、シンたちも言われている。
「はい? 」
「ああ、キラさんたちの予定は春頃です、ママ。フェルトが降りて来るのと合わせて、カガリの別荘で騒ごうっていう話です。」
他にも、オーナーやカガリが、何かしら予定を考えているらしい。今までは、特区から動けなかったから、そこいらが解禁されるとなれば、みな、どこかへ出かけたいと考える。
「ただいまぁー、腹減ったぁー。」
外から、悟空も帰って来た。すぐに、特大のお好み焼きと焼きそばが運ばれてくる。本日のオヤツは、粉モンシリーズだった。シンたちが、来年の予定を悟空にも告げると、うんうんと、こっちも大笑いしている。
「プラントかあー。俺も行ってみてぇーなー。」
「じゃあ、おまえも来いよ、悟空。旅費は割り勘な? ねーさんの分は、三人で持つから。」
トダカとニールの分は、シンとレイが用意することにしていた。たまには、いろいろな意味のお返しをしておきたいから、そういうことになった。だから、悟空も来るのなら、ニールの分も受け持ってもらう。
「いいぜ、そういうんなら、俺も出す。」
「ただし、おまえまでだぞ? 三蔵さんとか悟浄さんたちは遠慮してもらってくれ。あくまで、家族旅行なんだ。」
レイが、そこいらは釘を刺す。そうしないと、キラとかハイネとか鷹とか虎とかが参加表明して、なんだか全員で慰安旅行なんてことになってしまいそうだからだ。
「うちの親父は行かねぇーし、悟浄たちも大丈夫だ。問題あるのはキラだろ? レイ。」
「いや、キラさんは春にオーヴへ遠征があるから、そっちでいいそうだ。そっちも参加するだろ? 悟空。フェルトが降りてきたら、カガリの別荘に遊びに行くんだ。」
「うん、そっちも参加する。春休みにしてくれ。」
「もちろんだ。そうでないと、俺たちも動けない。」
「待て待て、おまえさんたち。勝手に、どんどん予定を詰め込んでるけど、俺の個人の予定もあるんだぞ? 」
よくわからないうちに、来年の予定が埋められていくので、ニールが声をかける。
「わかってるよ。刹那の誕生日は外すから。」
「その頃には、俺たちも学校が始まってるので、その前になります。」
「刹那が、さんざんっぱら宣言してたぜ? ママ。今年こそは、寺の桜を花見するんだってさ。」
ニールが寝ている間に、刹那が、それは宣言していた。今年は、俺の誕生日は、おかんの独占を要求する、と、おっしゃったので、そこいらの予定は空けてある。まあ、そうは言っても、寺で、みんなで花見になるだろうと予想はされているのだが。
「完治すると言っても、遺伝子段階のことですから、すぐに体調が戻るわけじゃありません。暖かくなるまでは、今まで通りに静養してもらいますよ? ママ。」
「そーそー、どっちにしろ、体力ねぇーんだから、すぐに全力疾走とか無理なんだぜ? ねーさん。」
そこいらも、シンとレイは考えていて、引き続き、お寺に居候態勢は継続する。試験期間は、さすがに戻れないが、それ以外なら、こちらで暮らしていても問題は少ない。
「しばらくは、このままだぜ? ママ。掃除とか洗濯は、俺らがやるからさ。とりあえず、さんぞーの相手してて。」
悟空も、ばくばくとお好み焼きを消費しつつ、そう言う。体力的な問題は、解消するには数年はかかる。だから、来年の最初は、そんな感じでやろう、と、すでにシンとレイと打ち合わせしている。
「そう思うなら、女房を返せ。」
背後から、坊主が低い声をかけてくる。わきょわきょと台所で騒いでいるので、亭主は放置されていた。
「すいません、三蔵さん。今日は梅干ですか? それともほうじ茶ですか? 」
「ほうじ茶でイモをくれ。それと焼きソバだ。」
バイトに出る坊主とサルが優先なので、ニールも慌てて、亭主の晩酌の準備をする。本日は、シンとレイが居残りだ。芋焼酎をほうじ茶で割って差し出す。アテは焼きソバだ。紅ショウガを多目にしてアクセントにしてある。
「今日は早めに寝ろ。」
「いや、しばらくは顔を会わさないんだから待ってますよ。」
「おまえの顔なんて見たところで、有り難くもなんともないぞ。」
「まーまー、俺が寂しいってことで。たぶん、明日は夕方だと思います。」
「デートでもするか? 」
「時間がないような気がするなあ。まだ、全部作れてないから。」
二週間分の夜食とか軽食なんてことになると、かなりな量になってくる。さすがに、毎日、同じものをチンさせるわけにもいかないから、ちまちまとおかずの作り置きをしているのだが、一日でできるもんでもない。
「足りなきゃ、八戒に作らせる。そこまで、きっちりしなくていい。・・・しばらくは、軟禁なんだから外へ出たほうがいいんじゃねぇーか? 」
「あ、そういうことなら、あそこの中華に行きませんか? 俺、ラーメンと餃子が食べたいなあ。」
「おまえ、そればっかりだな? 俺は日本蕎麦と出し巻きがいい。」
「それでもいいですよ。なら、俺は鳥南蛮か鍋焼きにしようかなあ。」
「鍋焼きにしろ。どうせ、半分は俺が食うことになる。あれなら酒のアテになるもんが入ってる。」
「はいはい。じゃあ、明日はデートってことで。」
シンとレイと悟空は、もう一々ツッコミするのも面倒だから、このいちゃこらについてはスルーだ。どう見ても、寺夫夫は、いちゃこらしているようにしか見えないのだが、どっちもいちゃこらしてないと全否定しやがるのだ。当人たち曰くは、「デートとは言うが、昼飯を外食することだ。」 ということらしい。たぶん、店でも、この調子なのだろうから周囲にアンケートすれば、いちゃこらに大量の票が投じられるとは思われる。
作品名:こらぼでほすと 解除1 作家名:篠義