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大佐、逮捕される。

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「「大佐が逮捕されたぁ!?」」
『あぁ。』

ちょうどセントラルのホテルに着いた途端、フロントから呼び出された電話はハボック少尉からのものだった。
大佐絡みだろうと思ったが、予想外の言葉にアルと一緒に固まる。
「ついに、税金泥棒だってバレたのか?」
『大将・・・それくらいじゃ逮捕できないから。そうじゃなくって、殺人容疑。』
「「さ、殺人っ!?」」
またもアルと大声でハモってしまった。俺らの声に何事かと振り返る人がいる。
アルとお互い顔を見合わせて、ゆっくり深呼吸・・・ひと呼吸おいてから電話を続ける。
「殺人って・・・どういうことだよっ!?」
『俺らも何のことやらサッパリだ。殺されたのはハクロ将軍の部下でコッカー中佐。南部の部隊で俺らとは接点がない。が、昨日あった会議で大佐と意見が衝突したらしい。
・・・そんで今朝、焼死体となって発見されて、大佐が逮捕されったってわけだ。』
「焼死体か・・・」
『そ。で、大佐はモチロン容疑を否認しているんだが・・・で、大佐から伝言。会いに来て潔白を証明して欲しいって。』
「証明って・・・俺ら、今セントラルに着いたばっかだぞ。何を証明するっていうんだ?」
アリバイとかの証明ならムリだ。あの会議前の入れ替わり以降、ここ最近、大佐には会ってもいない。
『そこらへんは俺にもわからん。ただ、大佐がエルリック兄弟を呼んで欲しいってことで、連絡したんだ。頼む、軍司令部にすぐに来てくれないか?』
珍しく真面目なハボック少尉の声に事態が深刻であることが分かる。
大佐が俺らを呼んでいるってことは、何か錬金術師でも関わっているのだろうか・・・アルを見ると心配そうな顔で頷いた。
「分かった、すぐに向かう。」
電話を切って、出掛ける支度をする。
しかし、あの大佐が逮捕ねぇ。いつもそつなく立ち回っているのに、どこでそんな失敗をやらかしたのやら。・・・大佐が人殺しをするとは思えない、多分、何かの濡れ衣か、捜査関係者の恨みをかった八つ当たり逮捕だろう。
俺は、アルほどは心配していなかった。どちらかというと、鉄格子の中の大佐を見てみたい好奇心・・・それで、軍司令部に行くと答えたのだが。
――後になって、会いに行ったことを死ぬほど後悔した。好奇心なんて、身を滅ぼすだけだと知っていたハズなのに。本当に、本当に何で会いに行ったりしたんだっ、俺はっ!?


――――
軍司令部に着いたら、門のところでハボック少尉が待っていた。
そのまま地下室、留置場へ向かう。
地下へ降りる階段の手前でハボック少尉は残り、俺とアルだけ先に進んだ。
すぐ脇に見張りの兵がいる鉄格子の中、大佐は座っていた。
さすがに軍服ではなく、黒いズボンに白のワイシャツで、普段より数割増でくたびれた様子だった。手には手枷まで付いていて、とてもからかえるような様子じゃない。
「おい、大丈夫かよ。」
声をかけたら、立ち上がって近づいてきた。鉄格子越しに触れ合えるほどの距離に。
「やぁ、来てくれたのか、鋼の。アルフォンスも。ありがとう、待っていたよ。
早速だが、君たちに私の潔白を証明して欲しくてね。」
「あぁ、少尉から聞いた。・・・だが俺たちが・・・」
何を証明するっていうんだと続けようとした言葉は大佐の囁くような声に遮られた。
「鋼の。・・・少し見張りの兵を遠ざけてもらえないか?」
「・・・?あぁ、分かった。」

一緒に行こうとしたアルを大佐が呼び止めた。
「アルフォンス、私の肩に先ほどから違和感があるんだ。ちょっとさすってくれないか。」
「いいですよ。」
「ありがとう・・・先に言っておく。何を聞かれても答えるな。それと・・・すまない。」
「えっ?」

俺が見張りの兵に近づいて、牢から少し離れて・・・そのとき、光の洪水が起こった。

眩い光が去った後は・・・倒れている二人の姿。
鉄格子の外側にはアルが、内側には大佐が。・・・そう、見た目だけは。

「何が起こったっ!?」
慌てて見張りの兵が俺を押しのけて牢の中を見る。
「大佐、マスタング大佐っ!?貴様、何をしたっ!?」
見張りの兵は、すぐ傍に倒れていたアルに詰め寄る。
「うっ・・・つぅ・・・」
ゆっくり目を開けたアルは・・・目の前の光景を見て、薄く微笑んだ。
「あぁ、すまない。少し静電気体質でね。大佐に触った途端、光ったんだよ。」
・・・あの光が静電気でごまかせるわけないだろう。
「静電気ぃ~?」
兵が疑わし気にアルを見る。
「あぁ。よくあるじゃないか、バチって。それの少々、大きなものだ。
・・・ほら、大佐もすぐに目を覚ます。大したことはない。」
アルが言うとおり、鉄格子の内側では大佐がうめき声を上げながら、正に目を覚ますところだった。
「う・・・あれ・・・・えぇっ!?」
「大佐、静かに。あとは安心して我々に任せ給え。・・・必ず無実は証明する。」
目を見張ったままの大佐に、妙に説得力に満ちた声でアルが言う。
そして目で脅す。これ以上、大げさに驚くな、声を立てるな、と。
―――っていうか、これ、絶対アルじゃない。アルなわけがない。

「おっ・・・・」
お前ぇぇーーと叫びたかった俺の口を、すぐにアルが塞ぐ。
「さ、言いたいことは伝えた。早く帰るぞ。はが・・・じゃない、兄さん。」
半ば引きずるようにアルは俺を引っ張って、牢のある地下から1階へ向かう。
階段の途中でアルの手を隙を見て外した。どうしても言いたいことが山ほどある。
「何するんだっ!!」
「うるさいっ、大声を出すなっ!!苦情は全て部屋で聞く。・・・せっかく成功したんだ。こんなところでボロを出すなっ!!」

1階に出るとすぐにハボック少尉が近寄ってきた。
「ハボック、は・・・兄さんを頼む。口をちゃんと押さえとけよ。」
「・・・本当にやっちまったんですね。」
呆れながらもアルに発火布の白い手袋を渡し、アルは早速その手袋をはめた。
「当然だ。協力しておいて何を言う。」
「大将~。怒んないでくださいね。上司命令には逆らえないんですよ。」
俺はギンって少尉を睨む。最初からグルだったのかっ!?
今度は少尉に抱えられながら、俺は大佐の部屋まで連れてこられた。

―――
大佐の部屋に着いた途端、自由になった俺はアルに・・・アルの姿の大佐に詰め寄った。
「どういうことだっ!!た・・・」
大佐と言おうとした俺の目の前を火花が通過する。俺の鼻先でバチっていったぞ、オイ。

「大声を出すなよ、に・い・さ・んっ!!今その言葉が外に聞こえたら、全て無駄になるではないか。せっかく私が『兄さん』と呼んでやっているんだ。察しろ。」

この無駄に上から目線の口調に偉そうな態度。間違えようがない。
「てめぇ・・・わざと入れ替わりやがったなっ!!」
「あぁ、そうだ。こんなに上手くいくとは思わなかったが、やれば出来るもんだな。」
「やるなよ、そんなことっ!!クセになったらどうするんだっ!!」
「非常事態だ、大目に見ろ。」
「大目に見ろって、お前なぁっ!!なんで俺らがお前の非常事態に付き合わなきゃならないっ!!しかも、代わりに牢に入れるとは、どういうことだっ!!
入れ替わることが出来るくらいの錬金術が使えるなら、脱獄すりゃいいじゃねぇかっ!!」
作品名:大佐、逮捕される。 作家名:海人