二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

大佐、逮捕される。

INDEX|2ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

「それは私も考えた。しかし、脱獄するとなると、調査をするのに表立って動けないし、捜索の手が必ず部下に及ぶ。部下に迷惑がかかるだろうが。」
「部下だけじゃなく俺らの迷惑も考えろっ!!牢に入れられてるんだぞっ、牢にっ!!」
「安心しろ、私は人殺しはしていない。無実だ。」
「じゃ、自分で大人しく入ってろよっ!!」
「大人しく入っていては、無実を証明出来んだろうが。自分の手で今回の事件を調査するためにも、これしか方法がなかったんだ、諦めろ。」
「諦められるかぁっ!!」
大佐なんぞ無視して、俺は部屋を出ていこうとした。
「どこへ行く。」
「牢屋だっ!!誰かさんのせいで牢に入っているアルがきっと不安がっている。心配に決まってるだろっ!!」
「今行っても面会はできんだろう。さっきので警戒されているだろうからな。」
「じゃ、何も事情を知らないアルが一人で牢にいるのを放っておけっていうのか?」
「そうだ。」
「できるかぁ!!」
「鋼の。アルフォンス・エルリックなら心配いらん。彼は冷静に状況を判断出来る。・・・その点では、並み居る軍人、いや、キミ以上かもしれない。
あの親玉を倒したとき、彼の判断力は見事なものだった。あのとき、彼が咄嗟に人体錬成をしていなければ――キミが殺されていたら、戦況は変わっていただろう。
彼なら牢に入れられる状況くらい耐えられる。心配はいらない。」
大佐の言いたいことは分かる。多分、アルは俺が思っているより強い。だけど、だからって心配しないってわけじゃない。
っていうか、アルが牢に入っているのも、面会出来ないほど警戒されているのも、どれもこれも大佐のせいじゃねぇかっ。
くっそー、今すぐ、アルの体から大佐の魂だけ引っ張り出して、ボコボコにしてやりたいっ!!
拳を震わせる俺に向かって、大佐はアルの姿で冷静に言ってきやがった。

「私の無実を証明しなければならない。協力しろ。」
「・・・お前、人の話を聞いてたか?勝手に巻き込んでおいて、牢まで入れて、協力しろだぁ?ふざけんなっ!!」
「ふざけてなどいない。協力したくないのなら好きにしたらいい。だが、弟の魂は牢に入ったままだぞ。」
・・・怒りで拳が震える。どんな脅し文句だ。自分でこの状況を作っておきながら・・・こんの腹黒大佐めぇっ!!確かに協力しなきゃ、アルは牢に入ったままだが・・・一言、言っておかないと気がすまない。
「この貸しは高くつくぞっ!!」
「事件が終わったらいくらでも借りを返してやる。」
「その言葉、忘れんなよ!」

黙った俺を確認した後、大佐は部下を見回す。
「それより、状況を報告しろ。コッカー中佐の死体を発見したのは誰だ?」
「焼死体の第一発見者はハクロ将軍です。朝、迎えに来ないので、訪ねてみたら焼死体を発見したとのことです。」
ブレダ少尉が報告する。
「現場の状況は?」
「玄関から入ってすぐの廊下で黒焦げになった遺体がありました。廊下等、延焼した箇所はなく、死体だけが黒焦げだったそうです。発見者のハクロ将軍がそのまま現場を指揮しているとか。それですぐに大佐への逮捕状が出たわけです。」
フュリー曹長が答える。
「そうか・・・その状況なら私を疑うだろうな、ハクロ将軍なら。・・・コッカー中佐の昨夜の足取りは?」
「軍上層部会議の後、大佐と飲みに行ったことが確認されています。」
ホークアイ中尉が冷静に報告する。
「それは事実だ。会議後、彼と飲んだ。その後は?」
「特に立ち寄った形跡は今のところありません。真っ直ぐ自宅に帰ったものと思われます。」
「そうか・・・」
「あ~、ところでコッカー中佐となぜ飲みに?殺人の動機は会議で意見が合わなかったからって聞いたんっすけど。」
ハボック少尉が最もなことを聞いた。そうだ、確か大佐が疑われたのは、会議でそのコッカー中佐ともめたからじゃなかったか。
「・・・会議で意見が衝突しただけで、人殺しなどせん。そんなことになったら、私はほぼ軍上層部全員を殺すことになる。
それに、コッカー中佐とは意見が対立したが、軍の命令系統に関する改正の方向性が異なるだけで、彼の意見にも一理あった。なかなか有意義な意見だったんだ。
会議後、コッカー中佐から話しかけられてな。もう少し、話し合いたいと。私も彼の意見に興味があったので、二人で飲みに出かけた。それだけだ。」
ホークアイ中尉が冷静に問いかける。
「因みに、コッカー中佐と別れた後、大佐はどちらに?」
「私も真っ直ぐ自宅に戻った。」
「それを証明する人は?」
「いないな。一人暮らしなものでね。」
「そうですね。・・・大佐、最後の質問です。コッカー中佐を殺しましたか?」
「殺していない。・・・大体、私が殺すなら焼死体だけは作らない。すぐに疑われるからな。」
「・・・・・・・・分かりました。」
「なんだ、今の間は?」
「いえ、お気になさらず。」
いつもの冷静な中尉だ。あれ?・・・確か、大佐とアルが入れ替わるときは、中尉は俺と同じで固まってたのに。
「中尉は平気なのか?そのた・・・アルが?」
「えぇ。大佐が大佐でないのが認められないだけで、アルフォンスくんが普段と違うのは大丈夫よ。」
そうだったのか、羨ましい。俺はどっちもダメだ。
「助かるよ、中尉。この間の制服はまだあるかね。」
「あります。別室に既に用意してあります。」
「さすがだ。少し席を外す。」

――――
戻ってきたアルの姿の大佐は、予想どおり軍服に着替えていた。

「で、どうするんだよ?」
「まずは焼死体の確認だな。ノックス先生のところに行く。」
「俺も行く。」
「焼死体の様子を見るんだが。」
「なんだよ?」
「大丈夫か?」
「子供扱いすんなっ!大丈夫だ。・・・もし錬成された跡があったら、俺は大佐を疑うからな。」
「なるほど。監視も兼ねているわけか。」
そう言ってアルの姿の大佐は薄く笑った。・・・だから、そんな皮肉気な顔、しないでくれよ。アルが段々、性格悪く見えてくる。
「あぁ、そうだ。それに、アルの姿で無茶されたら、どんだけ迷惑すると思ってんだっ。知り合いに会うんなら、アルがアルじゃないってことを説明しないと、アルの人間性が疑われる。」
「いいだろう。では、はが・・・エドは私と一緒にノックス先生の所へ。
他の者はなるべくコッカー中佐の情報を集めてくれ。・・・なぜ彼が殺されたのか。情報が一つでも欲しい。」
「「「「了解っ」」」」

―――
大佐(アルの姿)の軍服のおかげか、特に見咎められることもなく、俺たちはノックス先生がいる軍の死体安置所にたどり着いた。
コンコン
「失礼する。」
無機質なドアを開けると、相変わらずボサボサ髪のノックス先生以外、生きた人間は誰も部屋にはいなかった。
「あぁ?誰だ、ここには、死体しかねぇよ、用があるんなら少し待ってもらえるか。」
顔も上げないノックス先生に、大佐はいつも通り声をかける。
「その死体に用がある。」
「死体に?・・・って、誰だ、お前さん?・・・エドワード?・・・おぉ、よく見りゃアルフォンスじゃねぇか。いつから軍に入ったんだお前?」
「あー、ノックス先生。久しぶり。その・・・あの・・・これはアルだけどアルじゃないっていうか。」
作品名:大佐、逮捕される。 作家名:海人