MuV-LuV 一羽の鴉
俺自身も今まで身を張っていたために多少の疲れがある。言葉に甘えて今は身を休めるとしよう。
そんな感じで伊隅が来るまでの時間は潰れていった。
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「此方です」
伊隅と呼ばれる赤毛の女性に案内される事数分。ようやく俺の部屋についたようだ。
「ありがとう」
感謝の言葉を言うのはスミカを除いて随分と久しぶりな気がするな。
「いえ。それでは」
それだけの言葉を言うと伊隅はスタスタと来た道を引き返していった。
随分と冷たい態度だがこう言うのは慣れている。それ程気にする事もなく、自分に宛てがわれた部屋の中に入る。
部屋の中には机と椅子。そしてベッドがあるだけの簡易的な部屋だった。寝るだけの部屋なのだから当然か。
そう思いながらも身にまとっていたパイロットスーツを脱ぎ、部屋に予め置いてあったハンガーに掛けておく。
服を脱ぎ、壁に掛けた所でベッドの上に身を投げ出し、目をゆっくりと閉じてゆく。
目を閉じた瞬間に瞼の裏に映し出されるのは、あのBETAと呼ばれる生物の事だ。
香月曰くBETAの単体の戦闘能力はそこまで高くないが、その物量が異常だと言っていた。
確かに俺が見たあの光景は異常とも呼べるものだった。
機体のモニターを埋め尽くすほどのBETAの数。あんな光景前の世界でも見たことがない。
…これから俺はあいつらと戦うのだろう。
違う世界に来ても俺がやる事は死ぬか殺すかの殺し合いだ。…シンプルで分かりやすい。
「少し…眠るか」
今この先の事を考えても仕方がない。まだこの世界の事に関しては分からない事だらけだ。
そう考えを纏め、意識を沈めていく。
まずはこの疲れを取りたい。そんな事を思いつつも、ゆっくりと意識を手放していった。
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作品名:MuV-LuV 一羽の鴉 作家名:コロン