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ゆらのと

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銀時はニタと笑う。
「な、俺の日頃の行いの良さがわかっただろ」
「偶然アル」
「そうですよ」
そんなやりとりをしながら、三人そろって玄関のほうに移動する。
移動するといっても、すぐ近くだ。
郵便受けのあった玄関の被害は一番大きい。
玄関の外に、二十代半ばぐらいの女が立っていた。
なかなかの美人である。
その顔には見覚えがあった。
女はにっこりと笑う。
「おひさしぶりです。あのときはお世話になりました」
冬の午の薄い陽ざしと冷たい風に洗われて、その頬は明るく清らかに見えた。
「お咲さんじゃないですか、お元気だったんですね!」
新八が声をあげた。
それで、銀時は女の名が咲であることを思い出した。
「ええ」
お咲はまたにっこりと笑った。
そのあと、立ち話もなんであるからということになり、応接間兼居間に移動した。
「なにもお出しできなくて、恥ずかしいんですが……」
新八はソファに腰掛けた膝に手を置き、頭を下げた。
その隣には神楽が座っている。
神楽の向かいに座っているお咲は右の手のひらを軽く振った。
「そんなの、ぜんぜん気にしないで」
笑顔で、ほがらかに言った。
その隣に銀時は座っている。
「みなさんは私の恩人だから。あのとき、助けてもらってなかったら、私は今頃どこか遠くの星に売り飛ばされていたわ。それか、逃げだしたことの見せしめに、殺されていたかも」
お咲は明るい様子だが、言った内容は重い。
関わったのは、昨年の秋だ。
人身売買組織にさらわれ、しかし隙をついて逃げだしたお咲と、銀時たちは出会った。
お咲は組織の者たちに追われ、逃げているうちに体力をかなり消耗してしまったらしく、倒れていた。
その介抱をしていると、組織の者たちがやってきた。
戦いになり、銀時たちは追っ手を蹴散らし、逃げ帰らせた。
それから、銀時たちはお咲を万事屋に連れ帰った。
翌朝、お咲から事情を聞いた。
そして、警察に助けを求められないらしいことを知り、銀時たちは三人だけで人身売買組織の拠点に向かった。
結果、人身売買組織を叩きつぶし、お咲のようにさらわれてとらわれていた者たちを解放した。
すべてがうまく行った。
わけではなかった。
新八と神楽を解雇した。
だが。
それが、きっかけになった。
心配した桂がやってきた。
その姿が頭によみがえる。
そのあとの、いろいろなことを思い出す。
感情が大きく揺れる。
ダメだ、思い出すな。
そう自分に厳しく言い聞かせ、記憶を胸の奥底へと無理矢理に封じ込めた。
「本当はもっと早くにお礼を言いにきたかったんだけど、新しく住む場所や仕事を探さないといけなかったりで、バタバタしてしまって……」
お咲は伏し目になり、それから、近くに置いていた風呂敷包みをテーブルの上にドンと乗せた。
「これ、あのときのお礼に」
風呂敷の結び目を解くと、一升瓶があらわれた。
鬼嫁、だ。
かなりの辛口で酔いがあとを引くことで知られる酒である。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio