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ゆらのと

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銀時の眼が点になった。
「……フツー、それを礼に持ってくるか。だいたい、俺ァいいが、他のふたりは酒が呑めねーし」
「あっ、そうね、ごめんなさい。つい自分の好きなものを持ってきてしまって」
お咲は謝ったが、その様子はカラリと明るい。
「なんだか姉上が重なって見えてきました……」
新八が遠い眼をして言った。
おそらく新八の中のお咲の印象が大きく崩れてしまったのだろう。
あのとき、万事屋に連れ帰った翌朝、事情を話したお咲は泣いていた。
涙ながらに、まだ囚われている者たちを助けてほしいと訴えた。
新八の中でお咲は薄幸の美人という位置づけをされていたのだろう。
しかし、他の囚われている者たちの助けがあったとはいえ、お咲は隙をついて人身売買組織の拠点から逃げだしたのだ。
さっき、お咲は冗談のように言ったが、本当に殺される可能性もあっただろうに。
お咲は自分ひとりだけでも逃げたいから逃げたのではなく、他の者たちを助けるために、命の危険を覚悟の上で逃げたのだろう。
ずいぶん気丈な女であるらしい。
その横顔を、銀時はチラと見る。
頬には笑みが浮かんでいる。
短い髪は光の加減で茶色に見え、やわらかそうだ。
「……それで、新しい仕事は見つかったんですか」
気を取り直したように、新八が聞いた。
「ええ、今は甘味処で働いているわ」
お咲は店の名前も言った。
そこは江戸で何軒も店を出している有名な甘味処である。
もちろん銀時も行ったことがあり、そのときに食べたものが頭に浮かんで、口内につばが湧いた。
「あっ、そうそう」
お咲はなにかを思い出した顔になった。
「今日はあのときのお礼に来たんだけど、それ以外にも、お願い事があって」
「どうしたんですか」
「うちの店を経営してる人が猫を飼っていて、子供が拾ってきた猫らしいんだけど、家族みんなでかわいがっていて、でも、その猫が数日まえからいなくなっちゃったらしいの。それで、家族みんなで探したんだけど見つからないらしくて。だから、そういうことを仕事にしてる人に頼めないかって」
「それって、仕事の依頼アルか!?」
「ええ、そう。お願いしてもいい?」
「もちろんアル! 探しものと大工仕事は大得意アル!」
神楽は大はしゃぎし、新八も顔を輝かせている。
そのあと、詳しい話は甘味処の経営者に会ってからすることになり、お咲は帰った。
銀時たちは元のように万事屋の修理をすることにする。
持ち場にもどろうとして、ふと、新八が言う。
「そういえば、お咲さんって、銀さんの好きな結野アナに似てますよね」
結野アナはお天気お姉さんであり、彼女のファンであることを銀時は公言している。
「そーかァ?」
銀時は気のない返事をした。
しかし、たしかに似てるなァと、ぼんやり思った。

「あッ! あっちに逃げたアル!」
神楽は声をあげ、走り出した。
甘味処の経営者から直接に依頼を受けて、その飼い猫を探しているところである。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio