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ゆらのと

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しばらして、握った手を開いた。
だが、その手は銀時につかまれたままだ。
「銀時」
小声で、名を呼ぶ。
いつまでもこうしているわけにはいかない。
それは銀時もわかっているはずだ。
つかんできたときと同じように、そっと、銀時の手が離れた。
敷居を越え、外に出る。
しかし、道へは進まず、立ち止まった。
「……俺はこちらのほうに行く」
左のほうを軽く指した。
ここで別れて別々の方角に進んだほうがいいと判断した。
「わかった」
銀時は強い調子で言った。
おそらく別の方角に行くことも承知したのだろう。
顔をあげ、銀時のほうを見る。
眼が合った。
銀時はじっとこちらを見ていた。
その眼差しは、強く、真剣だ。
いつもは、やる気のなさそうな眼をしているくせに。
落差がかなりあって、だからこそ、心が揺れる。
その心の揺れを隠したくて、眼をそらした。
「それでは」
別れを告げた。
「ああ」
銀時は返事をする。
「またな」
さらりと続けた。
それには返事せず、歩きだす。
銀時はついてこない。
逆の方向に行ったはずだ。
お互い、どんどん遠ざかっているだろう。
それでも。
自分の身体に、ふと、銀時の匂いや温もりを感じる。
さっきまで、それらに包まれていたから、肌に移っている。
人の行き交う道を、表情を殺して歩きながら、自分の身体に残された自分とは違う匂いや温もりを感じる。
今も、抱かれているようだ。
抱かれていたときのことを、鮮明に思い出す。
心が乱れる。
自然に歩く足が速くなった。
思い出すな、今は。
そう自分に言い聞かせ、頭から記憶を消し去る。
だが、今は消し去っても、きっと、また思い出すだろう。
きっと、断ち切ることはできない。
そう頭が告げるのを聞きながら、歩いた。













作品名:ゆらのと 作家名:hujio