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ゆらのと

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どんな反応をすればいいのか。
しかし、返事は今ではないほうがいいとも言われた。
どうすればいいのだろう。
思案していると、銀時の抱く力が弱まり、その腕が離れていった。
「行くか」
至近距離から、銀時が何事もなかったかのように言った。
本当に今は返事がほしくないらしい。
「ああ」
同意する。
そして、お互いに少し離れた。
着衣の乱れを軽く直すと、部屋の外に出る。
双方ともに無言で、階段をおりていく。
だが、返事をしないままでいいのだろうか。
歩きながら考える。
ここで返事をしないというのは、肯定はしないが否定もしないということになる。
つまり、先延ばしにするということだ。
先延ばしにするということは、先があるということになる。
銀時には、もう、別れる気が一切ない。
そう感じた。
一度は完全に別れて、それが偶然会って関係を持ち、そして今日またそれを繰り返した。
それでも、やはり、もう二度と会わないほうがいいのではないか。
それならば、はっきりそう告げたほうがいいのではないか。
悩む。
答えが出ないうちに階段をおりきり、玄関のほうに進んだ。
草履をはき、傘を手に取った。
戸口の向こうに外が見える。
細かな雨がパラパラと降っている。
傘はさしたほうがいいだろうが、ささなくても問題なさそうだ。
ほっとする。
外へ出よう。
そう思ったあと、ふと、さっきまで考えていたことが頭をよぎった。
このまま、そのことには触れずに外に出て、別れたら。
そして、次はもう同じことを繰り返さないことにしたら。
今度こそ断ち切るべきではないのか。
そう思ったとき。
傘を持っていない左の手のひらに、触れるものがあった。
指だ。
銀時の手だ。
その手が、そっと手をつかまえた。
触れている手のひらから、伝わってくるものがある。
自分とは異なる体温。
それが、つなぎとめようとしている。
去ろうとしているのを、止めようとしている。
「また連絡する」
手を握ってくる力が少し強まった。
俺と一緒に生きてほしい。
そう言われたのを思い出した。
胸の中で、感情が湧きあがり、大きくうねる。
まるで激流のようだ。
流される。
「……ああ」
うなずいた。
そして、手を握り返した。
この男を愛している。
そう思った。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio