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ゆらのと

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しばらくして、視線の先を正面にもどした。
止めていた足をまえへと踏み出す。
何事もなかったように歩く。
万事屋までの帰り道だ。
次々に落ちてくる雨粒が、頭上の番傘を打ち鳴らす。
足下でも雨粒が白く跳ねている。
その音を聞きながら、考える。
やがて、二階家の近くまできた。
階段をのぼり、万事屋の玄関の戸のまえに立つ。
傘を閉じる。水滴が散った。
戸に手をかけ、ガララッと開ける。
「おーい、帰ェったぞー」
家の中に新八と神楽がいるのは、三和土にそれぞれの履き物があるのでわかった。
傘を玄関に入ったすぐに置いてある傘立てに無造作に入れる。
ブーツを脱ぎ、廊下を進む。
応接間兼居間に行く。
部屋の中に入ると、ソファに座っていた新八と神楽が顔を向けた。
「銀さん、おかえりなさい」
「おかえりアル」
あたりまえのように、そんなふうに迎えられて、胸の中で感情が揺れた。
巻きこみたくない。
危ないことには。
だが。
さっき、帰り道で考えたことが頭に浮かぶ。
お咲から宇宙海賊玄夜の船が密航してきていると聞いた。
玄夜が万事屋の爆破に関与していたかどうかはわからないが、あれだけの高値がついているのだから桂を狙って動くだろう。
桂をとらえて、売り飛ばして、大金を得ようとするだろう。
売り飛ばされた先で桂がどんなめに合おうが、ヤツらにとってはどうでもいいことなのだろう。
冗談じゃない。
桂のことを想う。
あれは、俺の。
最愛、だ。
「どうかしたんですか、銀さん」
無言で立ちつくしていると、新八が首を傾げて聞いてきた。
ふいに。
お咲の声が耳によみがえった。
銀さんは、たしかに強い。だから、できるだけ自分ひとりで背負ってしまおうとするのね。でも、それじゃあ、まわりの人間は寂しい。助けが必要なら、助けたいんだから。
「新八、神楽」
ふたりの名を呼んだ。
危険なことには巻きこみたくない。
できることなら、全部、自分ひとりで背負ってしまいたい。
けれど。
私の強さを信じてくれない?
また、お咲の声が耳の奥に響いた。
心を決める。
「おまえらの助けがいる」
そう告げると、新八と神楽の表情が変わった。
真剣味を帯びた、きりりとした顔つきになる。
「どんなことですか」
「聞いてやるから、話すヨロシ」
ふたりは口々に言った。
その表情から、もう引き受けるつもりでいるらしいと感じる。
なァ、桂。
胸の中で、呼びかける。
悪ィが、俺たちのことや例の件を、コイツらに話す。
まえにオメーが言ったように、コイツらは俺の家族みてェなもんだから、ゆるしてくれ。










作品名:ゆらのと 作家名:hujio