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ゆらのと

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「アンタ……」
「玄夜はしばらく地球から離れていたけど、前回に来たのは、ちょうど、銀さんの家に例の事件が起きた頃らしい。これで、ほぼ決まりでしょう?」
ほぼ決まり、とは、万事屋の爆破に玄夜が関わっていたことを指しているのだろう。
貴重な情報だ。
しかし。
「アンタ、また、昔の知り合いから聞いたんだな」
そんな情報は闇の世界の住人からしか得られない。
関係を断ち切れと言ったはずだ。
だが、今それを指摘するのは責めているようで、そんなことをする資格は自分にはなく、だから、別のことを口にする。
「俺ァ、アンタから情報をもらおうとは思っちゃいねーよ」
「ねぇ、銀さん、私はまえに言ったわ。助けたいって」
雨は降り続いている。
傘をさしていても、特に足下から雨に濡れてしまう。
それでも、お咲は笑みを崩さない。
「私が助けてもらったから。あそこから逃げだすことができたのは、同じようにつかまっていた人たちに助けられたから。そして、銀さんたちに助けを求めて、助けてもらったからよ」
人身売買組織の拠点から逃げだしたときのことを話した。
「銀さんは、たしかに強い。だから、できるだけ自分ひとりで背負ってしまおうとするのね。でも、それじゃあ、まわりの人間は寂しい。助けが必要なら、助けたいんだから」
「だが」
だからといって、危険なことには関わらせたくはない。
「銀さん」
穏やかな口調で話していたお咲の声が少し強くなる。
しかし、近くを行く者たちとのあいだに降る雨が、その声音の変化を呑みこんでくれただろう。
「私が今ここでこうして立っているのは、これまで生き抜いてきたからよ」
その眼差しが真っ直ぐに眼を見すえてくる。
「私の強さを信じてくれない?」
お咲はふっと笑う。
やわらかそうな茶色い髪が揺れた。
「……どーやら、俺ァ、間違っていたらしい」
銀時は言う。
「俺がしなけりゃならねェのは、礼だ」
お咲のしたことを否定するのではなく。
「ありがとう」
そう告げた。
お咲は、また笑った。
「でも、さすがにこれ以上はなにもできないかも」
冗談のように軽やかに言い、自然な様子で歩きだした。
お咲は去ってゆく。
その後ろ姿を、見送る。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio