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ゆらのと

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男は桂の鋭い視線を受け止めると、余裕たっぷりに笑った。
「なァ、アンタ、俺のこと、覚えているか」
そう聞いてくる。
だから。
「久松」
桂は男の名字を冷静に告げた。
すると、久松は眼を見開いた。驚いているようだ。
「……まさか、アンタが覚えているとは」
それには返事しないでおく。
思い出したわけでなかった。
万事屋が爆破されたあと、脅迫状の件を調べていたら、その名前が出てきたのだ。
脅迫状の文面から攘夷志士が関与しているのだろうと思っていたが、少し違っていた。
久松とその仲間は、攘夷戦争中のある時期までは志士であったらしい。
それも桂と同じ軍にいた頃があるらしかった。
あの桂や白夜叉とともに戦っていたことがある。
そう久松が自慢するように話していたのを聞いた者がいた。
しかし、そのあと、久松は桂と銀時のことをさんざんけなしていたそうだ。
なにか恨みがあるらしい。
だが、桂はその名を覚えておらず、人相書きを見てようやくおぼろげながら思い出した。
たしかに、同じ軍にいた。
けれど、久松は志士仲間の四人とともに、ある日、潜伏先であった寺から姿を消した。
原因は銀時だ。
本人がそう言っていたのだから、間違いないだろう。
久松を含めた五人は銀時ともめて、去っていった。
もめた理由がなにであったのか、桂は知らない。
銀時から、あの五人ともめて、そのせいで彼らは去り、もうもどらないと、聞かされたのだ。
そのあと銀時に押し倒された。
だから、その記憶とともに思い出した。
あの頃は銀時の気持ちをまったく知らずにいたので、疲れているのだろうと思っていたのだが。
今から思えば、自分は鈍すぎだったと反省する一件である。
「アンタが、俺みたいな下々の者の名前まで覚えているとはなァ」
久松の顔から驚きの表情が消え、皮肉めいた調子で言った。
下々の者。
謙遜しているようで、棘のある表現だ。
神経を逆なでされたような気分だ。
しかし、桂は黙ったままでいる。
「もしかして、銀時から聞いたのか」
問われた。
もめたとは聞いた。
だが、もめた理由は聞いていない。
あのとき、聞かないほうがいいかと思ったし、押し倒されたことで、うやむやになってしまった。
推測はしたが、その推測は間違っていたような気がする。
「俺たち五人が、銀時のいない隙を狙って、アンタの寝込みを襲うつもりだった、ってな」
作品名:ゆらのと 作家名:hujio