ゆらのと
以前なら肌をむきだしにされたとしても、同じ男だから、銀時だからという理由で、おそらく平然としていただろう。
けれど、今は、身の危険を感じている。
なにをされようとしているのかを正しく察知している。
やっとだ。
銀時は笑いたくなった。
しかし、笑うかわりに、さらに桂を追い詰める。
「銀時ッ」
名前を呼んで、それで止められると思ってるのか。
それで正気にもどるとでも思っているのか。
こっちはもとから正気なのに。
残念ながら。
そう思いつつ、普段は隠されている肌に無造作に触れる。
手を這わせる。
桂は身を震わせ、逃れようとした。
だが、背後は壁で、正面には銀時がいて、そして左右にも行けないよう銀時の腕がふさいでいる。
その左腕のほうを突破しようとして、跳ね返された桂の身体が、沈んだ。
前後左右が無理だから、下へと逃れたのだ。
もちろん銀時はそれを追う。
床に座り込んだ桂に覆い被さっていく。
距離を詰める、その途中で、鋭い音がした。
頬に痛みが走る。
平手打ちされたのだ。
「やめろ!」
桂が怒鳴った。
「迷惑だ……!」
その切れ長の眼は大きく開かれ、銀時をにらみすえている。
迷惑。
恋情を向けられることに対してだろう。
拒絶の言葉だ。
銀時は身体を起こした。
だが、立ち去るつもりはない。
両の手を握った。
その拳を壁に叩きつける。
ガンッと激しい音がした。
「そんな言葉じゃ足りねェよ」
胸に吹き荒れる感情に押されるままに言葉を吐き出す。
「嫌いって言えよ。俺を本気であきらめさせてェんなら、嫌いだ、二度とそのツラ見たくねェって言え」
桂の表情が変わった。
さっきまでは怒りで強張っていたのが、あっけにとられたような顔をしている。
銀時はその顔をじっと見て、返事を待った。
しかし、桂はなにも言わない。
イラ立つ。
「言えよ……!」
そう怒鳴った。