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ゆらのと

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桂は正面を向いていて、こちらのほうを見ていない。
「ただでさえ今は寒いんだ。そんな遅い時間になればもっと寒いだろう。それに、おまえが来るまでに帰ってこられるかもわからん。寒さがひどくなるまえに来て、それを使って家の中に入っておけばいい」
そう堅い声で告げた。
銀時は鍵をつかみあげる。
「これって、合鍵?」
「そうだ。なくすなよ」
「わかってる」
軽く返事して、鍵をしまう。
この家に通うようになってからずっとほしいと思っていたが、桂が抵抗を感じるのではないかと思ってなかなか切り出せずにいたものだ。
まさか、なにも言わないでも、桂が用意してくれるとは。
桂のほうを見る。
相変わらず正面を向いている。
表情はいつものように堅い。
けれど、決まり悪そうにしているようにも見えた。
つい、銀時は少し笑う。
腕をあげた。
桂のほうに伸ばす。
その頬に触れ、それから黒髪をなでる。
「なァ」
呼びかける。
「こっち向いてくれ」
頼んだ。
その声は自分の耳で聞いて照れくさくなるほど優しく甘いものになってしまった。
一瞬、間があった。
そして、桂がこちらを向いた。
だから身を乗りだす。
顔を近づける。
「ありがとう」
ささやくように告げた。
さらに距離を詰めると、桂がまぶたを閉じた。
その唇にくちづける。
触れているところから自分の想いが伝わればいいと思う。
そうやって桂の中に想いが積もり積もって、いつか自分と同じ想いを抱いてくれるようになることを願った。









作品名:ゆらのと 作家名:hujio