ゆらのと
手のひらに温もりがじんわりと広がる。
茶を飲む。
少し苦みのあるさわやかな味を舌に感じ、緑の葉の香が鼻をすうっと駆けあがった。
後味はほのかに甘い。
温もりが喉から胸のほうへと落ちてゆき、冷えていた身体が暖まる。
湯飲みを机に置いた。
「……そういえば」
ふと、桂が言った。
「エリザベスをちゃんと捜してくれているんだろうな」
鋭い眼差しがこちらに向けられる。
それを受け止め、返事する。
「あたりめェだろ」
嘘ではない。
ただし、他の仕事や用があればそちらを優先するといった、二の次、三の次状態だ。
「結構いろんなところを捜したんだが、いなくなってしばらくの目撃情報はいくつかあったものの、今どこにいるのかさっぱりわからねェ。もしかして江戸にはもういないんじゃねーか」
「江戸は広い。江戸中を捜したわけではないんだろう?」
「まーな。つーか、やみくもに江戸中を捜しまわるのは御免だ。それこそ、江戸は広いんだからな」
「……そうだな」
桂は眼をそらした。
「寒空の下でつらい思いをしてなければいいんだが」
独り言のようにぽつりと言った。
整った横顔は憂いを帯びている。
だから。
「大丈夫だろ。アイツ、しぶとそーだし。それに、テメーみてェな変な趣味のヤツにちゃっかり拾われてるかもしれねェぞ」
身体を寄せ、軽く肩をぶつける。
「俺の趣味は変じゃない」
桂が言い返してきた。
ついでに身を寄せ返してくれたら嬉しいのだが。
しかし、退くことなくそのまま動かずに受け止めてくれているだけで良しとする。
「……まァ、そのうち、ちゃんと見つけてやるから」
「頼む」
即座に桂は言った。
その声の調子から、信じてくれていることがわかる。
俺はおまえが思っている以上に、おまえのことが好きだ。
などと思ってしまう。
「……銀時」
「なんだ」
「今日は泊まるのか」
「いや、もうちょっとしたら帰る」
「明日は」
「夜に来るつもりだ」
「明日の夜は用があって帰るのが遅くなる」
「じゃあ、遅い時間に来るようにする」
日付が替わるぐらいの時刻なら大丈夫だろうかと考える。
すると。
桂はなにかを取り出した。
白く長い指がそれを机の上に置く。
鍵だ。
桂のほうを見る。