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ゆらのと

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驚いた。
だが、すぐに納得する。
これだけたくさんの者を、それもそこそこ腕がたつだろう男たちを、たったひとりでこれだけ見事に倒してしまうのだから。
桂は壁にそっと寄り、出入り口から隣の部屋の様子をうかがう。
後ろ姿が見えた。
洋装にきものを片袖脱ぎに着た、銀色の癖毛の男が、たくましい腕に木刀を持ち、堂々と立っている。
銀時だ。
「ただの通りすがりだろーがなんだろーが、俺ァ、護りたいと思ったもんを護るだけだ」
力のみなぎるその身体が動いた。
まえへと。
そこには男が三人いた。
おそらく、この廃工場を根城にしている集団の中心的な者たちだろう。
「クソッ……!」
悪態をつき、刀をかまえる。
三人とはいえ、数では勝っている。
それに銀時は怪我をしているようだ。
しかし。
それでも、銀時にはまったくかなわない。
速さも、鋭さも、強さも、銀時のほうがはるかに上だ。
次々に倒されてゆく。
桂はその様子を冷静に観察していた。
すごいな、と感心する。
むしろ銀時は手加減しているぐらいだろう。
俺が助太刀する必要なんか全然ないじゃないか。
広い背中を見ながら、そう思った。
銀時の木刀に斬りつけられて、ある者は吹っ飛んで尻もちをつき、ある者は床に倒れ、ある者は床に両膝をついた。
三人とも、すっかり戦意を喪失しているようだ。
その三人に銀時は告げる。
「俺ァ正義の味方じゃねェし、えらそうなこと言えるほどえらくねェし、だから、まっとうに生きろとか説教するつもりはねェよ。喧嘩したけりゃすりゃあいい。ただし、まっとうに生きてるもんに迷惑かけんじゃねェ。力がありあまってんのなら、なんか他のことに使え」
銀時らしい台詞だと思った。
その直後、人が忍び寄ってくる気配を背中が感じ取る。
振り向きざまに、その者の腕を錫杖で強打した。
もちろん利き腕だろう右腕をねらった。
刀が男の手から離れる。
それで終わりにせず、続けて攻撃する。
距離を一気に詰め、殴り飛ばす。
うまく拳が入り、男は後方に倒れた。
気を失ったようだ。
床に伸びている姿を見おろす。
桂はふたたび出入り口のほうを向いた。
「……えれー乱暴な坊さんだな」
近づいてくる銀時と眼が合う。
「つーか、のぞき見してたのかよ。趣味悪ィな」
「俺の趣味は悪くない」
「いや、そーゆーことじゃねェから」
そんなやりとりをしているうちに、銀時がすぐそば来た。
その左腕があがる。
左肩をつかまれた。
銀時は顔を伏せている。
痛みをこらえているように見えた。
「……病院に行くか」
「いや、ちょっと疲れただけだ」
そう言うと、銀時は左腕をおろした。

「ちょっ、おめー、もうちょっと優しくしろ!」
「うるさい、おとなしくしろ」
桂は容赦なく消毒液を銀時の腕の傷口にかけた。
「うぎゃー!」
銀時が悲鳴をあげた。
廃工場で勇ましく戦っていたのと同一人物だとは思えない。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio