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ゆらのと

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桂は悲鳴や苦情を無視して、銀時の怪我の処置をする。
病院に行くほどではないと銀時が主張したので、家につれてきた。
戦場に長くいたし、攘夷戦争終結後も攘夷志士として戦い続けているので、こうした処置には慣れている。
「英雄なんだろう、おまえ。英雄なら、これぐらいで騒ぐな」
ふと、廃工場を出たあとのことを思い出して、言った。
すると。
「はァ? なんのことだかサッパリわからねーな」
銀時はとぼける。
ならず者たちを全員倒して廃工場を出たあと、あの子連れの女が人をたくさんつれてくるのと出くわした。
女はやはり銀時のことが心配で近所の者たちに助けを求めたらしい。
近所の者は日頃からあのならず者たちの狼藉に苦しめられていたので、女の必死の訴えに、ついに立ちあがる決意をしたようだった。
彼らはならず者たちが全員倒されたことを知ると、銀時を英雄だと褒めたたえた。
だが、銀時は居心地が悪かったらしく、軽く手を振って応えただけで、そそくさとその場をあとにしたのだった。
「あ〜あ」
銀時が声をあげた。
つい桂は手を止める。
あぐらをかいている銀時の正面の畳に膝をついて立ち、銀時の頭に包帯を巻いているところだった。
「ちょっと散歩に行ってくるって言って、出て、それでこんなカッコで帰ったら、新八と神楽になに言われるかわからねェ」
「それは心配されるだろう」
「ヤツらがそんなかわいい反応するかよ。またかって、あきれきった眼ェ向けるに違いねェ」
しかし、たとえ銀時の言ったとおりになったとしても、新八も神楽も内心は心配しているだろう。
表に出すのが照れ臭いだけだ。
新八も、神楽も、そして、心配される側の銀時も。
なんだか微笑ましく感じ、桂の頬は少しゆるんだ。
だが、それを銀時には見せないようにして、ふたたび包帯を巻き始める。
「……なァ」
「なんだ」
「今夜ここに来るって言ってたけどさァ」
おとつい銀時がこの家に来たときに次に来るのは今夜だと予告していた。
その話らしい。
「来ないほうがいいだろうな」
あっさりと答えた。
怪我をして帰ってきた銀時が夜に出かけたら、神楽が心配しそうだ。
そう銀時も思ったからこそ、話を切りだしたのだろう。
包帯を巻き終わる。
だから離れようとした。
けれど、銀時の腕が伸びてきて、腰のあたりにまわされ、とらえられる。
「じゃあ、明日の夜は大丈夫か」
そう聞かれた。
明日、か。
桂の表情は硬くなる。
なにも言わないまま、銀時の肩を軽く押した。
銀時は腕をおろした。
解放されて、桂は畳に正座する。
銀時の眼を見る。
それから口を開く。
「そのことなんだが、銀時。俺はしばらく江戸を離れることになるかもしれん」
作品名:ゆらのと 作家名:hujio