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ゆらのと

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さらに一歩、足を踏み出してくる。
「まだ家には帰ってきてねェかもしれねェとも思った。だが、それでも良かった。会えるのかもしれねェんなら、じっとなんかしていられなかった」
身を寄せてくる。
その腕が背中にまわされるのを感じる。
抱き寄せられ、距離が無くなる。
「風がひでェのも、すげェ寒いのも、どうでも良かった。顔が見られるかもしれねェって思ったら、足が勝手にどんどん進んでた。天気なんざ、本当にどうでも良かったんだ」
触れている身体は冷たい。
すっかり冷えきって、凍りついてしまっているかのような冷たさだ
銀時が万事屋を出てこの家まできた道のりの長さと寒さを感じる。
どうでもいい、なんて普通では切り捨てられないような寒さだっただろう。
その道のりを思うと、それでもここまでやってきたことを思うと、胸になにかがこみあげてきた。
胸がつまる。
ぎゅっとつかまれたように、痛い。
「おまえは、バカだ」
また口がいつのまにか動いてた。
けなしたいわけでないのに、口からはそんな言葉が出ていた。
「そーだな」
銀時は軽く返事をした。
その胸にもたれかかり、体重を預ける。
もっとたくさん触れて、触れているところから凍えた身体を溶かすことができたらいいと思った。
「……なァ」
しばらくして、銀時が言った。
「移動しねェか」
「……ああ」
提案されたことに同意する。
背中にまわされていた腕の力がゆるんだ。
お互いに身体を少し退いて離れ、歩きだす。
寝室に入った。
そして、布団に腰をおろした。
寝ていたときにはあった温もりは、もう無くなっていた。
外からは相変わらず風が激しく吹き荒れる音が聞こえてくる。
聞いているだけで凍えそうなほどの冷たく鋭い音だ。
あの風の中、銀時は決して短くはない距離を歩いてきたのだ。
自分に会うために。
感情はさっきのままで高ぶっている。
銀時が触れてきた。
その手は冷たい。
近づいてくる。
顔が寄せられてきて、自分からも寄せていく。
唇を重ねる。
お互い、何度も重ねる。
そのうち深くなり、舌が入ってきて、だから自分のそれをからめた。
あたりは冷たいのに、体温は上昇している。
息をつく。
寄せられてきた身体にうながされるように、布団に身を横たえた。
銀時が見おろしている。
じっとこちらを見ている。
その唇が動いた。
「おまえが、好きだ」
どうしても言わずにはいられなかったように、言った。
だから。
「知ってる」
そう応えた。
充分すぎるほど知っている。
この男に愛されていることを知っている。
胸の中で感情が大きくうねった。
自分は男で、銀時も男だ。
しかし、そんなことはもうどうだっていい。
そう思った。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio