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ゆらのと

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桂はまぶたを閉じる。
視界が真っ暗になり、意識はゆるやかに睡眠に誘われる。
しかし。
ガチャガチャッという音が耳を打った。
玄関の戸の鍵を開ける音だ。
一気に意識は冴え、眼を開けた。
はじかれたように上体を起こした。
冷気がすうっと身体にまとわりついてきて、さっきまで布団の中にいて暖められていた肌から体温を奪おうとする。
しかし、それにかまわず、立ちあがった。
部屋の灯りをつける。
それから寝室を出て、玄関のほうへと向かう。
裸足に触れる廊下はひどく冷たい。
少し進んだところで、足を止めた。
前方に銀時がいた。
眼が合う。
その口が開かれる。
「よォ」
近づいてくる。
「雪、降ってきたぞ」
外からは相変わらず、風の吹き荒れる音が聞こえてくる。
脳裏に、漆黒の闇の中に降る白い雪が風に吹き散らされる様が浮かんだ。
「すげー寒いな」
銀時は冗談のように軽く言った。
距離が縮まる。
すぐそばまで来ると、銀時は立ち止まった。
触れていなくても、その身体が冷えきっているのを感じる。
「バカじゃないのか」
いつのまにか口が動いていた。
「なんで、よりにもよってこんなときに来るんだ。天気がもっと穏やかなときに、今夜じゃなくたって、明日にでも来たらいいだろうが」
どうしてこんなふうに責めるような言葉を銀時にぶつけているのか、自分でもよくわからない。
非難したいわけではないのに。
胸が痛くて。
締めつけられたように痛くて。
でも、それは嫌だからでも、つらいからでもなくて。
落ち着かなくて、なにか言わずにはいられなかった。
落ち着かない自分の気持ちをごまかすように、非難してしまった。
しかし、銀時は表情を変えなかった。
その口がふたたび開かれる。
「本当はもっと早くに来たかったんだが、いろいろあって、こんな時間になっちまった」
「それなら……」
「明日じゃダメだ」
銀時は言葉をさえぎった。
「時間があるのに、今すぐ行けるのに、明日まで待てるかよ」
強い調子で、少し早口で言う。
「風が吹いてんのも、雪が降ってんのも、すげェ寒いのも、全然かまわねェ。顔が見たかった。天気なんざ、どうだっていい。おまえの顔が見たかった。それも、すぐに、だ」
作品名:ゆらのと 作家名:hujio