こらぼでほすと 解除6
階段から、少し通路に顔を覗かせたら、案の定、バリケードが築かれていた。その背後に、人の影があるし、その奥では何か工作機械を動かしている様子だ。扉の破壊だろうと予測はつく。時間は、あまりないらしい。
じゃあ、同時に、と、声をかけて気を高める。どちらも、集中して素早く通路に飛び出て、気功波と炎を同時に放つとバリケードに直撃した。その煙の中に悟空の如意棒がシュルリと伸びて、立ち上がって応戦しようとした敵を薙ぎ倒した。さらに、悟浄の鎖鎌でバタバタと敵は倒れる。銃撃が浴びせられると飛び退き、再度、同じ攻撃を繰り返したら、相手は沈黙した。
「あれ? もう終わり? 」
「人数が少なかったんだな。よっし、突入すんぞ、サルッッ。」
「あーエロガッパっっ、一番は俺だっっ。」
悟浄が大人気なく一番に走り出した。続いて悟空だが、ふたりが扉に辿り着く前に、「伏せろ。」 と、坊主の声がしてスライディングするように通路に転がる。そこに坊主の銃弾が通過していく。隠れていた敵が居たらしい。正確に坊主の射撃は命中したのか、敵がバタバタと倒れている。
「他に伏兵はいねぇーか? 」
扉を通り過ぎて、悟浄が向うの隔壁まで確認するが、人は居ない。オッケーと腕で丸の字を作ると、八戒が、キラに連絡だ。
カチャン
扉のカギは勝手に開いた。悟空が、扉の前に立つと自動的に開く。
「ママッッ。」
駆け込んだら、歌姫様がママの足を掴んだまま、「あらあら。」 と、慌てている。
「お早いお着きですね? 悟空。・・・・よろしいのですか? 」
歌姫様も不可侵のことは理解していたから、そこにいる対肉弾戦組に目を大きくした。
「ママを助けるのはオッケー。」
「ああ、そういうことですか。」
以前、悟空の知り合いが、ママをお寺の女房に認定してくれた。それにはそういう意味も含まれていたらしい。
「歌姫さんこそ、何やってんの? 」
「爪のお手入れをしておりました。ママの爪が荒れておりましたので。でも、足は半分もできませんでしたわ。」
とりあえず、靴下を履かせて、ラクスも立ち上がる。救助が来たので長居は無用だ。傍らで転がっているハロを抱えると、「お待たせいたしました。」 と、ニッコリ笑う。
「じゃあ、俺、おかんを担ぐ。ラクスは走れるか? 」
「ええ、大丈夫です。もし、足手まといになりましたら、担いでください。」
「オーナー、それは俺の担当だ。任せてくれ。」
行けるところまでは自力で行く、と言うので、爾燕が、そのフォローに廻る。扉を出たら、キラからの通信だ。元の道を誘導してくれる。
「隔壁を開けてるゴミがいるから、三階下の辺りは注意して。」
手動でも隔壁は開くことが出来る。時間がかかれば、それに気付いた敵が押し寄せてくることになるから、キラも急ぐように指示する。ハイネに指示をして、ある程度、そちらで暴れさせて意識は削ぐように手配したが、歌姫様の奪還だと気付いたのは、こちらへ急いでいる。
「おい、カッパ。そこの連射式の銃を、まず階下に向けてぶっ放せ。」
通路に放置された武器は使えるものは奪取する。あいよ、と、悟浄は何丁か取上げて階段へ急ぐ。一番機敏な動きのできるサルが、おかんを担いでいるから動けない。そこいらは武器でフォローだ。
「どうせなら、三蔵が担げばいいんじゃありませんか? 」
「サル、おまえ、先発するか? 」
「そうだな。俺が先のほうがいいんじゃね? 」
しょーがねぇーなー、と、坊主が女房を預かった。三蔵は、唯一参加オッケーな人間だ。敵を倒すほうが楽しいのでスルーしていたが時間の問題があるなら役割チェンジもする。とはいっても、片手で女房を担いで、片手にはマグナムだ。やる気はあるらしい。
ドガガガガガっと、派手な音をさせて悟浄が階下へ撃ち込む。その隙に全員が階段に出る。
「じゃあ、ちょっくら蹴散らしてくるぜ。紅、行こうぜ。」
「おう、参加する。」
紅と悟空が先陣を切って階段を駆け下りていく。その後を悟浄が銃と共に降りていく。この三人で、ほぼ階下は制圧された。まあ、ただの人間が妖怪に敵うわけはない。そこを小走りに残りが駆け下りて、甲板に通じるドアの前に辿り着いた。
「ハイネ、援護して。イザーク、ヘリを近づけて。」
キラからの指示で甲板のほうも動く。ヘリをギリギリまで近づけて、銃弾はフリーダムで避ける。キラから許可が出ると対肉弾戦組が甲板に飛び出した。目の前にヘリの搭乗口だ。順番に駆け込むと、すぐにヘリは浮き上がり、さらにフリーダムが、そのヘリを掴んで飛び上がった。
「じゃあ、アスアスちゃんたち、存分に暴れておいで。」
キラは眼の前のパネルで確認して、エンターキーをクリックする。空母のエンジンとマザーで同時にウイルスが爆発する。電源は、これで完全に沈黙する。通信機も使えない状態だ。
「ヒルダさん、援護に向かって。シン、レイ、もう少し敵と交戦して。」
キラの指示で、フリーダムの援護にジェットストリームな面々は動き出す。シンとレイは電波妨害をしたままで、MSの相手をする。戦闘機は、ほぼ沈黙させた。残りは僅かだ。
フリーダムが、ある程度の距離を稼いだら、シンたちも撤退する。その時に、当初のヘリは破壊して海に落とす。証拠隠滅だ。
「キラさん、俺らも終了。離脱します。」
「お疲れ、シン、レイ。周囲の警戒は怠らないでね。別の基地からのMSが飛来しそうだ。」
「叩きますか? 」
「ううん、妨害粒子を流して離脱して。僕らの機体を見られないほうが安全。とりあえず海に潜って帰ってきて。」
空母からの通信が不通になったから、おそらく最寄の基地から偵察隊が飛ばされた。まだ距離はあるから、全速力で離脱すれば見つからない算段だ。
「ディアッカ、きみの機体、海に潜れないから、さっさと逃亡。」
「キラ、その言い方は傷つくぞ。」
「いいから、さっさと帰ってきて。」
シンとレイがしんがりを務める。最悪、敵のMSのレーダーに察知される範囲に入っても、二機は深海へ隠れることができるから、ぎりぎりまでは戦ってもらった。敵のMSを海中に沈めてしまえば、そこからデータは読めない。つまり、誰が交戦していたかの記録も残らない。戦闘機もしかりだ。おそらく空母も使い物にならないだろう。これで、『吉祥富貴』が関与していると知っているのは人間だけということになる。人間の目しか証拠がなければ、言い訳はしやすい。それに、今回は得体の知れない最終兵器も出したから、あちらも解析もできないだろう。
「キラ、各セキュリティー復活。」
「こっちのチェックも終わったよ。キラたちだと解る痕跡は消しておいた。」
アスランとリジェネも作業を終わらせる。ヴェーダの容量は大きい。これを自在に動かせるリジェネが手伝ってくれたから、作業もスムーズに終わった。リジェネが参加してくれなかったら、もう少しキラの仕事は忙しかったはずだ。
「リジェネ、ありがとう。」
「別にいいよ。ママは大丈夫? 」
「うん、クスリ飲んで寝ていたから、何も知らないと思う。だから、内緒ね? 」
「わかってる。・・・・ママが降りる時、僕も一緒に降りるから、その時にママの独占はさせてもらうよ? 」
作品名:こらぼでほすと 解除6 作家名:篠義