こらぼでほすと 解除7
スメラギも、ミッションプランは組んでいなかったが、ヴェーダを介して歌姫たちの動向は調べていた。しかし、いきなりにヴェーダが暴走したようにデータの羅列を始める。それまでスメラギが調べていたデータは綺麗に弾き飛ばされてしまった。何かしら、ヴェーダが勝手に動き出した。これは、どういうことだ、と、慌ててティエリアに連絡した。現在、ヴェーダを掌握しているのは、ティエリアのほうだからだ。
「心配はいらない。ヴェーダはフルドライブ状態で、ニールの奪還をフォローしているだけだ。しばらくは、他の作業はできない。」
涼しい顔で、ティエリアは、そう言うのだが、ヴェーダのフルドライブなんて、スメラギでも聞いたことがない事態だ。それに、ティエリアもリンクしているらしく目が金色になっている。
「ティエリア、それって・・・連邦側に、私たちが勝手に使っていることがバレるんじゃないの? 」
現在、ヴェーダは連邦に接収された形になっている。だから、ヴェーダが組織で使えていることも極秘事項だ。こんな大々的に動かしたら、それもバレると危惧したのだが、ティエリアのほうは、「それは問題ない。」 とのことだ。
「三大大国の軍と政府のマザーを掌握した。そちらで混乱を生じさせるように攻撃しているので、ヴェーダの動きなど察知するのは無理だろう。ニールの奪還が終わったら、ヴェーダのフルドライブも解除する。」
「ちょっ、ちょっと待って。それって・・・それってことは・・・」
「ニールを拉致するような愚か者には制裁を加えなければならない。その手助けをしているだけだ。本来なら、俺たちが奪還すべきところだが、こちらの機体が準備できていないから、キラたちのプランに便乗することになった。」
「ニールじゃなくて、ラクス・クラインが拉致されたんでしょ? そんなものに、ヴェーダを使ったら・・・」
ラクス・クラインの奪還に手を貸した、ということになる。それは組織の理念としては認められない。それに、組織と『吉祥富貴』との繋がりもバレてしまうではないか、と、スメラギは言い募るのだが、それもない、という、返事だ。
「ラクス・クラインの奪還はキラたちが行なっている。俺たちは、あくまでニールの奪還だけだ。ついでに、ラクス・クラインが奪還されても関係はないし、ヴェーダが関与しているという証拠など残すはずがないだろう? この件に関しては、組織は関係ない。三大大国のマザーは掌握している。俺たちの存在は、どこにも記録されないし、されていたとしても消去させている。」
スメラギの眼の前のパネルは忙しく切り替わっていくのだが、とんでもない情報が流れている。それは大国が隠している暗部の情報だ。どうやら、ヴェーダは本気で攻撃しているらしい。フルドライブということは、情報の撹乱と錯綜を誘導しつつ、キラたちやヴェーダの介入の情報の検索と削除、その他の地域での動きの把握など、世界規模でヴェーダが電脳世界を飛び廻っているということだ。
「つまり、三大大国に同時に攻撃を仕掛けているということなのね? 」
「そうだ。そちらは、俺ではなくリジェネが担当している。全てのセキュリティーを無効化して、しばらく放置する。その対応に、奴らは追われる。・・・・空母が一隻沈黙するぐらい、騒がれる心配はない。むしろ、瑣末なこととして処理されるだろう。」
「わかった。しばらくは様子を見ます。」
切り替わっていくパネルを横目にして、スメラギも笑い出した。あくまでティエリアたちヴェーダはニールの奪還を目的にして動いているのだ。宇宙規模で有名な歌姫様ではなく、ただの民間人のために、ヴェーダがフルドライブしているというのが笑える事態だ。
「マイスターをやめて、おかんになってからのほうが影響力は凄いわねぇ、ニール。」
あはははは・・・と、大笑いしてパネルの動きを眺めつつ、手元の酒で乾杯していたりする。拉致したユニオンだけは、執拗に攻撃しているらしく、なかなか静まる気配がない。どうやら、リジェネが個人的に報復攻撃を仕掛けているらしい。つまり、ニールが命じれば、ヴェーダを掌握したティエリアとリジェネは、必要に応じて、なんでも実行してくれるなんていうことになったということだ。そう考えると、スメラギには、かなりおかしい事態だ。なんせ、そのヴェーダに命じられる相手は貧乏性の庶民派で世界を牛耳ることなんて考えもしない男だし、できれば世界から争いなんてものがなくなればいい、と、本気で考えている変わった人だったりするからだ。
・・・・つまり、ヴェーダは、とても平和的な活用がなされるってことなのよね? ・・・・・
ヴェーダのフルドライブを命じられる相手が、そういう人間であれば、スメラギも安心だから、この案件は静観でいい。しかし、まあ、ちょっと残念ではあるが、それは仕方がない。ニールが組織に戻ってくれれば、ヴェーダは自由に使えるのだが、絶対に刹那が許可しないからだ。許可しない理由はスメラギにも、なんとなく理解できているので、それについてはしょうがないとは思っている。
ティエリアは、ヴェーダとリンクした状態で作業をしていたが、突然に、「終わったぞ。」 と、リンクを切った。傍には、アレルヤが居て、「よかった。」 と、両手を挙げている。
「刹那にも連絡しておくね? 」
「ああ、MS運用の必要もなくなった。時間は遅れるが、シャトルには搭乗できるはずだ。」
何時間かはかかったので、予定通りとはいかなくなったが、ニールはラボの医療ルームに収容された。これで、冷凍処理をすれば、搬送できる。医療カプセルで処理をする時間もあるから夜明け前に別荘は出発できるだろう。
「時間は大幅に狂った。少し休憩しておこう。」
「そうだね。こちらの準備はできているし、そのことも、刹那たちにも伝えておくよ。」
数時間の余白が生じた。そういうことなら、こちらも休息しておくほうがいい。アレルヤが、それらも刹那たちに打診しておく。
「でも、シャトルからエターナルまでの道中の警戒はいいのかい? ティエリア。」
「それは、リジェネがやっている。何かあったら、すぐに報せてくれる。」
ヴェーダはフルドライブを解除したが、まだ完全に警戒態勢を解いたわけではないし、執拗にユニオンには攻撃を続けている。もう少し時間を与えて、ティエリアも報復は止める。アローズの母体だったこともさることながら、今回の拉致には、さすがに怒りがこみ上げたので、ティエリアが感じた怒りの分は、リジェネに返しておいてもらうことにした。アローズ関連のデータは流出したままにしておくように頼んでおいた。あそこの責任者は、すでに死亡しているが、これでユニオンは世界から非難を浴びることは必定だ。
「ねぇ、ティエリア。もうすぐ、きみの誕生日でしょ? ちょうどニールの目が覚めるだろうし、お祝いしようか? 」
刹那たちに連絡が終わると、アレルヤは陽気に、そんなことを言う。本当に、たまたまだが、ティエリアの誕生日当日辺りに治療が終わって、ニールはトレミーで目を覚ます予定だ。
「なんの準備もしていないのに、祝いなんて無理だろう。」
「心配はいらない。ヴェーダはフルドライブ状態で、ニールの奪還をフォローしているだけだ。しばらくは、他の作業はできない。」
涼しい顔で、ティエリアは、そう言うのだが、ヴェーダのフルドライブなんて、スメラギでも聞いたことがない事態だ。それに、ティエリアもリンクしているらしく目が金色になっている。
「ティエリア、それって・・・連邦側に、私たちが勝手に使っていることがバレるんじゃないの? 」
現在、ヴェーダは連邦に接収された形になっている。だから、ヴェーダが組織で使えていることも極秘事項だ。こんな大々的に動かしたら、それもバレると危惧したのだが、ティエリアのほうは、「それは問題ない。」 とのことだ。
「三大大国の軍と政府のマザーを掌握した。そちらで混乱を生じさせるように攻撃しているので、ヴェーダの動きなど察知するのは無理だろう。ニールの奪還が終わったら、ヴェーダのフルドライブも解除する。」
「ちょっ、ちょっと待って。それって・・・それってことは・・・」
「ニールを拉致するような愚か者には制裁を加えなければならない。その手助けをしているだけだ。本来なら、俺たちが奪還すべきところだが、こちらの機体が準備できていないから、キラたちのプランに便乗することになった。」
「ニールじゃなくて、ラクス・クラインが拉致されたんでしょ? そんなものに、ヴェーダを使ったら・・・」
ラクス・クラインの奪還に手を貸した、ということになる。それは組織の理念としては認められない。それに、組織と『吉祥富貴』との繋がりもバレてしまうではないか、と、スメラギは言い募るのだが、それもない、という、返事だ。
「ラクス・クラインの奪還はキラたちが行なっている。俺たちは、あくまでニールの奪還だけだ。ついでに、ラクス・クラインが奪還されても関係はないし、ヴェーダが関与しているという証拠など残すはずがないだろう? この件に関しては、組織は関係ない。三大大国のマザーは掌握している。俺たちの存在は、どこにも記録されないし、されていたとしても消去させている。」
スメラギの眼の前のパネルは忙しく切り替わっていくのだが、とんでもない情報が流れている。それは大国が隠している暗部の情報だ。どうやら、ヴェーダは本気で攻撃しているらしい。フルドライブということは、情報の撹乱と錯綜を誘導しつつ、キラたちやヴェーダの介入の情報の検索と削除、その他の地域での動きの把握など、世界規模でヴェーダが電脳世界を飛び廻っているということだ。
「つまり、三大大国に同時に攻撃を仕掛けているということなのね? 」
「そうだ。そちらは、俺ではなくリジェネが担当している。全てのセキュリティーを無効化して、しばらく放置する。その対応に、奴らは追われる。・・・・空母が一隻沈黙するぐらい、騒がれる心配はない。むしろ、瑣末なこととして処理されるだろう。」
「わかった。しばらくは様子を見ます。」
切り替わっていくパネルを横目にして、スメラギも笑い出した。あくまでティエリアたちヴェーダはニールの奪還を目的にして動いているのだ。宇宙規模で有名な歌姫様ではなく、ただの民間人のために、ヴェーダがフルドライブしているというのが笑える事態だ。
「マイスターをやめて、おかんになってからのほうが影響力は凄いわねぇ、ニール。」
あはははは・・・と、大笑いしてパネルの動きを眺めつつ、手元の酒で乾杯していたりする。拉致したユニオンだけは、執拗に攻撃しているらしく、なかなか静まる気配がない。どうやら、リジェネが個人的に報復攻撃を仕掛けているらしい。つまり、ニールが命じれば、ヴェーダを掌握したティエリアとリジェネは、必要に応じて、なんでも実行してくれるなんていうことになったということだ。そう考えると、スメラギには、かなりおかしい事態だ。なんせ、そのヴェーダに命じられる相手は貧乏性の庶民派で世界を牛耳ることなんて考えもしない男だし、できれば世界から争いなんてものがなくなればいい、と、本気で考えている変わった人だったりするからだ。
・・・・つまり、ヴェーダは、とても平和的な活用がなされるってことなのよね? ・・・・・
ヴェーダのフルドライブを命じられる相手が、そういう人間であれば、スメラギも安心だから、この案件は静観でいい。しかし、まあ、ちょっと残念ではあるが、それは仕方がない。ニールが組織に戻ってくれれば、ヴェーダは自由に使えるのだが、絶対に刹那が許可しないからだ。許可しない理由はスメラギにも、なんとなく理解できているので、それについてはしょうがないとは思っている。
ティエリアは、ヴェーダとリンクした状態で作業をしていたが、突然に、「終わったぞ。」 と、リンクを切った。傍には、アレルヤが居て、「よかった。」 と、両手を挙げている。
「刹那にも連絡しておくね? 」
「ああ、MS運用の必要もなくなった。時間は遅れるが、シャトルには搭乗できるはずだ。」
何時間かはかかったので、予定通りとはいかなくなったが、ニールはラボの医療ルームに収容された。これで、冷凍処理をすれば、搬送できる。医療カプセルで処理をする時間もあるから夜明け前に別荘は出発できるだろう。
「時間は大幅に狂った。少し休憩しておこう。」
「そうだね。こちらの準備はできているし、そのことも、刹那たちにも伝えておくよ。」
数時間の余白が生じた。そういうことなら、こちらも休息しておくほうがいい。アレルヤが、それらも刹那たちに打診しておく。
「でも、シャトルからエターナルまでの道中の警戒はいいのかい? ティエリア。」
「それは、リジェネがやっている。何かあったら、すぐに報せてくれる。」
ヴェーダはフルドライブを解除したが、まだ完全に警戒態勢を解いたわけではないし、執拗にユニオンには攻撃を続けている。もう少し時間を与えて、ティエリアも報復は止める。アローズの母体だったこともさることながら、今回の拉致には、さすがに怒りがこみ上げたので、ティエリアが感じた怒りの分は、リジェネに返しておいてもらうことにした。アローズ関連のデータは流出したままにしておくように頼んでおいた。あそこの責任者は、すでに死亡しているが、これでユニオンは世界から非難を浴びることは必定だ。
「ねぇ、ティエリア。もうすぐ、きみの誕生日でしょ? ちょうどニールの目が覚めるだろうし、お祝いしようか? 」
刹那たちに連絡が終わると、アレルヤは陽気に、そんなことを言う。本当に、たまたまだが、ティエリアの誕生日当日辺りに治療が終わって、ニールはトレミーで目を覚ます予定だ。
「なんの準備もしていないのに、祝いなんて無理だろう。」
作品名:こらぼでほすと 解除7 作家名:篠義