こらぼでほすと 解除7
「僕、輸送部に、ちょっと頼んでおいたから、ケーキぐらいはなんとかなるよ? さすがに花は無理だったんだけどね。」
ティエリアの誕生日は、これまでお祝いできたことがなかった。昨年は最終決戦前だったし、その前はアレルヤが不在で、ティエリアが口を割らなかったからだ。初めてお祝いできるのだが、今回も盛大に、とはいかなかった。ニールの治療をするためにダブルオーの再生を急がせていたからだ。ただ、アレルヤとしては、少しぐらい、と、考えて物資の注文をする時に、それを個人的に頼んでおいた。
「ニールが少しだけトレミーに滞在することになったから、そういうイベントできるなーと思って。」
「きっきみは、忙しい時に、何を暢気なことを考えていたんだ? 」
「だって、ようやくお祝いできるんだから、少しぐらいやりたいじゃないか。」
ニコニコとアレルヤがそう言うと、ティエリアも怒りは静めた。というより、嬉しい気分のほうが勝ったらしい。
「だが、俺の誕生日は・・・。」
「それは言いっこなしだよ? 僕だって、組織に拾われた日だと思うから。別に、一年に一度、きみが生まれてきたことを感謝する日ってだけだ。日付なんて、こだわらなくてもいい。ただ、感謝したいんだ。」
「アレルヤ。」
「僕らに、こういう楽しい日があることを教えてくれたニールがいる日にやりたいんだよ。だから、いいでしょ? まあ、プレゼントは用意できなかったから、地上に降りたら希望を教えてね。」
「きみは・・・希望はあるのか? 」
「そうだねぇ。ティエリアがくれるなら、なんでもいいんだけど・・・・初めての時は記念になるものがいいかな。」
「どういうものだ? 」
「身につけられるものがいいな。そういうのを一緒に探して贈って貰いたい。」
「それなら、一緒に探そう。その時に、どちらも気に入ったものを互いに贈ればいいんじゃないか? 」
「うん、それがいいね。じゃあ、イベントだけやらせてもらう。実は、フェルトと刹那にも相談したから、イベントはやることに決まってるんだ。」
忙しい合間に、アレルヤは、その打ち合わせもしていた。フェルトと刹那も、それは是非、やろうと同意してくれたとのことだ。みんなが揃うということは、今後も少ない。なんせ、ニールは地上だ。だから、珍しいことでもあったので、刹那とフェルトも頷いたのだ。
「まったく、きみたちには呆れるな? よく、そんなことを相談する暇があったものだ。」
「ちょっとした休憩の時とか食事の時間とか顔を合わせた時に、相談したんだ。別に時間のかかることじゃなかった。」
アレルヤが連絡や食事の手配やらの雑用は引き受けてくれていた。たぶん、その合間に打ち合わせをしてくれたのだろう。そう思うと、ティエリアも自然と頬が緩んで笑いたくなる。
「・・・・ありがとう・・・・」
「どういたしまして。さて、僕らも休憩しよう? ティエリア。」
小休止の時間ができた。身体と神経を休めて本番にとりかかる。アレルヤが立ち上がると、ティエリアも同じようにデータを閉じて立ち上がる。
「リジェネにもカードだけ送るね。」
「そうだな、あいつも喜ぶだろう。」
ふたりして、部屋から出ると、ちょうどフェルトがやってきた。こちらの事態は把握していただろう。終わった、と、告げたら、ほっとした顔になる。予定が遅れると教えたら、じゃあ、みんなで休憩しよう、と、一緒に並んで歩き出した。
「ティエリア、あたし、ラクスから春に降下するようにお願いされているの。いいかな? 」
「かまわない。それなら、俺が戻って来よう。俺のほうは適宜、地上と宇宙を行き来するつもりだ。そのつもりで休暇の予定を組んでくれ。」
ティエリアはアレルヤと、一端、地上に降下して旅をするつもりだが、刹那のように長期間というわけにはいかない。組織の復興やら新しいMSの製造の手助けやらで忙しいから、二ヶ月もすれば戻って来る予定だ。そこからは、アレルヤと一緒に行ける場所だけ参加することになっている。
「じゃあ、フェルト、先に予定を組んでよ。それで、僕のほうの行き先も考えるから。刹那が四月って言ってたから、きみが三月だろ? ロックオンは、十一月に降りたばかりだから六月ぐらいでいいんだよね? ということは、五月はティエリアの休みを入れられる? 」
「うん、大丈夫だと思う。ちょっと待ってて。・・・あ、でも、ニールと一緒に降りるんだよね? 」
アレルヤたちは、ニールの地上降下と一緒に出かける。そうなると、早めに予定を組んだほうがいいのか、と、フェルトは考えた。だが、いやいや、と、ティエリアが返答した。
「慌てなくていい。二月には一度、戻って来る。とりあえず三ヶ月ばかり休みを貰う。予定は、戻った時に判明していればいい。」
「わかった。それなら、なるべく一度に長く休めるように考えておくね? ティエリア。」
「きみのほうも長いのを入れておけ。再始動前に、フェルトは何度か行けなかったし、休暇を短くしたこともあっただろ? 」
「もういいよ、そんなの。」
「よくないぞ。きみだけ不利益を蒙るなんていうのは、組織として公平ではない。夏にでも三ヶ月ばかり休め。」
「そうだね。ニールのところで、のんびりさせてもらおうかなあ。夏なら、また海に行けるし・・・。」
再始動前の夏の思い出が蘇って、フェルトも満面の笑みで頷く。確かに、あの休暇は楽しかった。今度は、ニールも一緒に海に行けるだろう。そうしたら、今度は一緒に、なんでもできると思うと楽しみになってくる。シュノーケリングして貝を拾ったり魚を取ったり、あれはとても楽しかった。
「それ、いいなあ。」
「じゃあ、アレルヤとティエリアも合流すればいいよ? カガリのところへ遊びに行くのだけ一緒に行けば? 」
「そうだね。それだけ参加させてもらおうよ? ティエリア。刹那たちは秋にでも降下してもらえばいい。」
どんどん勝手に予定を作っているが、ティエリアも、まあ、よかろう、と、鷹揚に頷く。刹那は再始動前に世界を放浪していた。ティエリアがフェルトと組織の復興に勤しんでいたのだから、今度は刹那が、そちらを担当すればいい。
予定を勝手に決められている刹那のほうは、ダブルオーのコクピットに居た。アレルヤからの報告に、ほっと肩の力を抜いた。キラたちのことは信じているが、不測の事態なら、このまんまダブルオーで加勢に向かうつもりで準備をしていたからだ。
「ダーリン、アレルヤからの連絡入っただろ? 」
すぐに通信をロックオンも繋いできた。あちらも飛び出すつもりで、デュナメスリペアの発進準備をしていた。このドックではないが、同じように別のドックに詰めていた。
「ああ、無事ミッションクリアーしたらしい。」
「てか、あいつらはエゲつないぞ? 空母への奇襲を隠すために、三大大国のマザーのセキュリティーを無効化して騒ぎを起こしやがった。・・・・とんでもないぜ。」
「キラに常識は通用しない。」
「そうなんだろうけどさ。あれが、『白い悪魔』って恐れられてた意味が、ちょっとわかった気がする。」
「あんなものじゃない。もっと、エゲつないことをしていた。」
作品名:こらぼでほすと 解除7 作家名:篠義