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こらぼでほすと 解除10

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医療ルームには、紫猫と黒猫が居た。そして、後から桃色猫もやってきて、ガラス越しに医療ポッドを睨んでいる。まだ、メディカルチェックが終わらないから、親猫は眠ったままだ。数時間は必要だとわかっているのだが、離れる気にならなくて、そこに滞在している。
「おまえら、まだまだ時間はかかるぞ? 」
 ハイネがガラス越しに注意してくるが、聞く耳はない。アレルヤとロックオンは、機体の整備に散っていったが、三匹は、そのまんまだった。遺伝子情報の解析なんてものは、すぐにできるものではない。だというのに、そのままガラスに張り付いているのて、ハイネも呆れている。データを解析機器に載せたので、ドクターも一休みしている。結果が出るまでは、何も起こらないのは確定している。
 一応、ハイネがドクターの代わりに付き添っているが、それだって、これといってやることはないのだ。やでやで、と、医療ルームを出て、三匹の許へ向かう。
「あのな、最低二時間は、ママニャンは寝たままだ。その間に、やることやっておけ。」
 とりあえず、三匹に注意すると、渋々といった体で、桃色猫が動いた。そして、黒猫と紫猫の額にでこピンして、そこから追い出す。もう一度、トランザムバーストをやるなら機体の整備もあるし、周辺に設置した計器のチェックもある。それをやらないで待っていても、何も変わらないだろうが、と、強めに叱ると、追い出された紫猫と黒猫も通路を引き上げていく。全員を追い払ったら、今度はスメラギが顔を出した。
「どんな感じ? ハイネ。」
「たぶん、順調だとは思うんだけどさ。解析が終わらない限りは、なんとも言えないな。」 
 解析している機器から異常音は聞こえないから、順調にデータは処理されているはずだ。肉体のほうは、メディカルチェックで異常のないことは判明している。残るは遺伝情報の異常だけだ。
「結果が出たら教えて頂戴ね、ハイネ。」
「もちろんですよ、スメラギさん。」
「ニールの意識は? 」
「二時間もすれば、目が覚めると思うんだけど、これも正確な時間は不明。」
「じゃあ、あなたも暇なんでしょ? 休憩すれば? 」
 解析が終わるまでは、何もすることがないのは、ハイネも同様だ。ここは、ニールの古巣で害される心配もないから警護も必要ではない。
「まあ、そうなんだけど。付き合っていただけるなら? 」
「付き合うわよ? さすがに飲むのはマズイから食事ぐらいなら。」
 さあ、どうぞ? と、スメラギに案内されてハイネも従う。確かに、ほとんど動き詰めだから、ちょっと横になりたいところだ。二時間しか時間がないから、熟睡とはいかないのだけど、休憩は有り難い。




 二時間後きっちりと、黒猫は医療ルームに戻って来た。ポッドからは出されてベッドに横にされている。ハイネが、側の椅子に座っているが居眠り態勢であるらしく、刹那が扉から入っても反応しなかった。ゆっくりとベッドに近寄って、計器に視線を移す。どの数値も正常値だ。ほっとして、ベッドの端に座る。まだ意識は戻っていないが、親猫の顔色は悪くない。
「きみのほうが早かったか。」
 ぬっと横手から、ドリンクが出てきた。ティエリアだった。こちらも、やることをやって戻ってきたらしい。
「リジェネが言うには、分析は六割がた終了しているが、現段階では異常は見られないそうだ。」
 ティエリアは、リジェネから先に分析中の情報を教えてもらっていた。各部位からサンプルを取り出して調べているが、チェックが終わった部位には問題がないらしい。残るのは循環器やら脳という重要な部位だ。遺伝子情報に異常があれば、即座に死に直結する部位だから、何回もチェックをすることになっている。
「だが、意識は、もう戻るはずだ。」
「ああ、医療ポッドから出されたからな。次があるなら、このまま受けてもらえばいいだろう。」
「そうだな。」
 そこで扉が開いた。今度は、ロックオンだ。
「まだなのか? 」
「そろそろだ。」
「なぁーんだ、慌てて来なくてもよかったな。」
 そして、続いてフェルトとアレルヤもやってきた。みな、二時間を目一杯に働いて、区切りはつけてきたらしい。
 四人も人間が出入りすると、さすがにハイネも目を覚ます。子猫たちが一同に、ベッドの前にいる。ニャアニャアと親猫が起きるのを今か今かと待っているらしい。
「俺、ちょっと船に戻って来る。」
 四匹も付き添いがいれば、ハイネも付き添う必要はない。この間に、ニールが預けているものを取ってくることにした。ニールは治療で意識がないから、ハイネが預かって、ここまで運んできたのだ。



 出発前に、ニールが買出しのアッシーをハイネに頼んだ。それも、いつもの近所のスーパーではなくて、『吉祥富貴』の近くの大型ショッピングモールへ連れて行け、というので、ハイネが渋い顔をした。
「行き先は決まってるし、買うものも決まってる。正味二十分とかからないからさ。」
「俺が買って来るんじゃダメなのか? 」
「いや、現物を見てみたいんだ。」
 ニールが、ブツについて説明すると、ハイネもしょうがないな、と、クルマをそちらに回した。確かに、自分で用意したいだろう。それだけなら、大した移動ではない。
「本当はナマモノがいいんだけど、無理だからさ。あいつ、何度も俺にくれたからお返しにな。」
 ショーウインドウに並ぶ、それを眺めてニールは微笑んでいた。思っていた色合いのものがあったから、喜んで、それを買う。そして、その荷物をハイネに託した。
「予定では、当日に俺の意識は戻るらしいから、それまで預かっててくれ。」
「他の子猫にはいいのか? 」
「いいんだ。他のは、降りて来た時にでも用意する。初めてだから、ちゃんとしたものを用意したかったんだ。」
 それほど高額ではないが、そこそこ金額の張るものだ。確かに、宇宙で、これは珍しいだろう。ただ、野郎に贈るものではないとは思ったが、そこいらはスルーだ。ニールが貰っていたのは、これのナマモノだったからだ。
「アレハレたちにも、降りて来たら用意しないとな。・・・・・くくくくく・・・そっちのほうが楽しみだ。どんなものを言うのかな? 」
 アレルヤたちは、長いこと行方不明だったから、その日に祝うことができなかった。陰膳だけは、毎年、供えていたが、当人たちに本当に届いていたわけではない。だから、五年分ドーンとお見舞いしてやるんだ、と、ニールは楽しそうに笑っていた。
 通路をドッグに向かって、荷物を取り出した。両手に収まるサイズだが、それでも綺麗なものだ。とりあえず、ニールに渡してやれば、ニールからの頼まれごとはクリアーになる。




 ハイネが出て、しばらくして、うーんとニールが声を出した。そろそろ目が覚めるらしい。ティエリアとフェルトが、腕や足を擦って血流を良くしようとすると、ぼんやりと目が開いた。
「ニール? 」
 刹那が声をかけると、それで、ティエリアとフェルトもニールの頭のほうへ飛んで来た。しばらく、しぱしぱと目を瞬かせて、意識がはっきりすると、「よおう。」 という暢気な親猫の挨拶だ。
「気分は、どうですか? ニール。」
「ニール、痛いところは? 」
作品名:こらぼでほすと 解除10 作家名:篠義