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The British Museum

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Episode 1



「さて、着いたんだぞ。」

大学で考古学を専攻しているアルフレッドは、アメリカからイギリスへ留学に来ていた。
そして、手始めにイギリスが世界に誇る大英博物館に行くことにしたのだ。

小さい頃、イギリスに住んでいる義兄と何回も来たことのあるこの博物館だが、
一日では見きれない上に来る度に新たな発見があるので、何度来ても飽きることはない。
今日は、あの自分に対して極度の心配性でお節介な義兄もいないから、自分の好きなように
館内をまわれるし、邪魔されることもないだろう。
高揚感に胸を高鳴れせながらも、俺は売店でしっかりガイドブックとドーナツを買って
今日見るエリアのルートを考えることにした。

腹ごしらえを終えて、さっそく館内をまわる。
目星を付けていた場所を大方まわったところで、館内で1番目立たない所にある東洋の島国、
Japan-日本-のコーナーに行くことにした。
大陸や、地域ごとにフロアが分けられている中、この国だけはアジアのフロアに属していない。
その1つ上の最上階に、1ヶ国だけぽつんと配置されているのだ。
小さい頃は、それより下のフロアを見るだけで1日が過ぎてしまい、
そんなおまけのようなフロアがあることすら知らなかったが、最近サムライやニンジャと
いった日本独特な文化に興味をもち始めたので、いい機会だと思い、少し覗いてみることに
した。

1ヶ国しかないからか、広さは他のエリアより狭い。
だが、やはり少し異質なこの文化は他のフロアと一緒くたにすることは難しかったのだろう。

興味津々に刀や和室―床は畳というものらしい―を見ていると、6〜7人くらいのグループが
入ってきた。

「ツアーガイドかな?」

自分は、機械を借りてイヤフォンから説明の音声が流れるものを使用しているが、
決められた時間帯に係員と一緒に館内をまわって説明をしてくれる、ツアーがある。

先頭をきって歩いているのは、どうやら東洋人らしい。
さらさらと少し長めの黒髪をなびかせて、静かに滑るように歩くその姿をつい目で追って
しまった。
しかし、目的のガラスケースの前に立つと、集まった人だかりであっという間に
見えなくなってしまう。

「男の子にしては小柄だから、女の子かな。」

気になって、自分もその輪の後ろの方に近づいてみる。

「こちらは、江戸時代に使われていた鎧でして…」

思っていたより随分と低い声だ。小柄だが、男の子なのだろう。
静かだが、決して聞こえづらいわけではなくその声音は、はっきりと何の雑音もなく耳に届く。
説明のスピードも速すぎず、遅すぎず調度いい。
淡々と話しているようにみえて、よく聞いてみると面白い。
自分も日本のことはよく知らないが、それでも「へぇ〜」と楽しめる話が
盛り込まれている。



作品名:The British Museum 作家名:Sajyun