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とある世界の重力掌握

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護の説明によると偶然発動した大魔術『御使堕し(エンゼルフォール)』では、魔術的な結界などで身を防いだごく一部の例外を除いてほぼすべての人間の外見が入れ替わるはずである。

だが、目の前にいるクリスにはその変化はない。

「(クリスの中にあるアイルランド神話の『女神の素質』がそうさせたのか、あるいは他に理由があるのか..................)」

考えをめぐらす哀歌だが、そんな考えを中断させるかのようにクリスが言葉を発する。

「これ以上犠牲を出したくないのよ哀歌。あなたも早く捕まってくれない? 」

「それは無理..............だいたいなんでウォールのメンバーであるクリスが仲間を攻撃しようと...........」

「え?なに言ってるの? 」

本当に理解できないと言った表情で首を傾げたクリスは直後に哀歌にとって信じられない言葉を放った。

「あなたが仲間だからウォールが行っている洗脳から助けようとしてるんじゃない 」

哀歌はクリスの言葉を理解するのに数秒必要とした。

「何を言ってるの?..........あなたは護をリーダーとする暗部組織ウォールの一員で古参格の1人。護の意思に真っ先に賛同したメンバーじゃない! 」

「よほどひどく洗脳されてるようね.............なら実力であなたを取り戻す 」

刹那、哀歌は廊下沿いの窓に向ってタックルをかまして外に飛び出した。

それと同時に放たれた不可視の衝撃波が哀歌が直前までいた廊下や壁を粉々に吹き飛ばす。

落下していく哀歌に向けてどうやら通報によって駆け付けたらしい警官達が拳銃を向ける。

機動隊らしきものまで来ているところから見るに、事前に銃器犯罪として通報されていたのだろう。

そのまま一台のパトカーの上に着地し、ボンネットを大きくへこませた哀歌は一応頭を下げて近くの警官に謝りながら、全力でビル前広場から離れるため駆けだす。

「止まれ! 」

「止まらんと撃つぞ! 」

制止と警告の言葉を発する警官たちを無視して走る哀歌。

正直なところ学園都市外部の装備で身を固めた警官たちは哀歌にとってさほど脅威ではないためだ。

だが突如警察官たちのいる方角から明らかに異質な攻撃が放たれた。

聞き覚えのある轟音とともに、哀歌のやや右側の地面が大きくえぐれる。

嫌な予感を抱きながら後ろを振り返った哀歌はそこに、予感通りの人影を見た。

「まったくアンタも世話かかるわね 」

その黒髪の前方に火花を散らせながら手の中のパチンコ玉を転がす少女。

学園都市レベル5の第3位である『超電磁砲(レールガン)』、御坂美琴と瓜二つの外見を持つ少女。

彼女の名は。

「この御坂美希がアンタを止めるわ! 」

空中に無数のパチンコ玉を放り投げる美希。

それを見て慌てて哀歌が体を動かした直後、中に浮かぶ無数のパチンコ玉が凄まじい勢いで次々と連射された。

美希が独自に編み出した技、『超電速射(レールバルカン)』。

その攻撃を全て紙一重で躱しつつ哀歌は、近くに設置されている自動販売機をその怪力で片手で持ち上げ勢いよく美希に向けて放り投げる。

かなりの重量をもつ自販機が垂直に美希に向って飛ぶが彼女に焦りの表情はない。

冷静に自販機を見つめながら美希はその手から雷撃の槍を放ち自販機をはじき返す。

さすがに哀歌のいる場所までははじき返されなかったが、それでも哀歌の表情に焦りの色が浮かぶ。

哀歌の戦闘能力の全てを解放すれば、この場もろとも全てを破壊することができるだろう。

『破壊大剣(ディストラクション・ブレード)』を現出させる完全な竜人化させ行なってしまえばそれで済む話でもある。

だが他の武装集団メンバーはともかく、なぜか敵となっているクリスと美希相手に『死なせるリスク』がある術式及び技は使えない。

かといって今の状況では手詰まりである。

すでにビルから出てきたクリスが狙いをつけようとしているし、攻撃を外された美希も電気を周りに走らせながら攻撃の準備を整えている。

もはや敵の手から逃れるには上空からしかない。そう判断した哀歌は足に力を込めるが、直後背後から体に重く冷たい感触が伝わった。

「降伏しろ哀歌。この距離からじゃいくらお前でもばらばらだぜ?なまじ半竜人の状況のお前じゃな 」

その声にも哀歌は聞き覚えがあった。むしろ先の2人の実例があるから予想さえしていた。

「高杉..........あなたもなの? 」

「そうだよ 」

哀歌の背中にその得物、機能性炸裂弾射出器を突きつける銀髪に黒い瞳の少年、高杉宗兵は哀歌の問いに残酷なまでに当たり前のように答えた。

「今の俺達は、竜崎哀歌。お前の敵だよ 」
<章=第六十三話  とある三者の冷酷宣言>


「降伏しろ哀歌。これ以上抵抗すれば死によってしかウォールの、護の洗脳から解放できなくなっちまうぜ?」

哀歌の背後で彼女の背中に銃口を突き付ける高杉の声には一切の迷いは感じられなかった。

哀歌はその声からそれを理解し、内心首を傾げた。

現在攫われて行方不明になっていた3人はなぜかウォール、及び護を敵視している。

だが哀歌の名を憶えていることから、ある程度の記憶や意識は行方不明前と同一だということが分かる。

状況から考えられるのは、何らかの方法で3人は部分的に記憶を変化、あるいは削除、追加されているというものである。

もし魔術的な方法でそれが為されているとしたら、哀歌にはその変化が見抜けるはずであり可能性としては薄い。となると残るのは科学的な方法、学園都市の先端科学技術や心理系能力(テレパス)を用いた方法である。

哀歌は科学サイドの知識でいえば他のメンバーと比較して疎い面はあるものの、学園都市の科学技術を使えば人の人格や記憶も変化可能な可能性は想定できた。

さらに今回の敵は外部組織ではなく内部組織、学園都市統括理事の1人の可能性が高い。統括理事ともなればそれらの技術を保有していても可笑しくはない。

「私は、高杉やクリスや美希が何と言おうと護の仲間............殺せるものなら殺してみたら? 」

哀歌の言葉に溜息をつき首を振った高杉は冷静に引き金にかけた指に力を込める。

「じゃあな、哀歌 」

その引き金が容赦なく引き絞られようとした次の瞬間だった。

突然、哀歌と高杉の周辺から人の気配が消えた。

「? 」

その変化に高杉が一瞬気を取られた隙をつき哀歌はそのままの位置から高杉に向けて後ろ回し蹴りを喰らわせ後方に派手に吹きとばす。

体勢が戻るのを待たず、クリスが念動力によって操る無数のパチンコ玉や美希の放つ雷撃の槍が哀歌に襲い掛かるが、それらの攻撃は突如ぱっくりと口を開けた地面から現れた巨大な掌によって防がれる。

「これは、人払い............来てくれたの........? 」

「当たり前だろ!俺達救民の杖はまだロンドン塔での恩を返せてねえんだよ! 」

地面から掌の後に上がってきたのは、杖を持ち、学生服のような物の上にローブをはおった少年。魔術結社『救民の杖』のゴーレム使い、ダビデだった。
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン