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とある世界の重力掌握

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その攻撃を防ぎ、また押し返し、避けてとしているうちにクリスはアガレスの正面の位置に来ていた。

「こうなったら直接........! 」

クリスはその念動力の全てを前に立つゴーレムにぶつけるべく精神を集中させる。

その時だった。

「準備完了ってとこか 」

突然アガレスの背後から現れたダビデが、その手に握る光り輝くチョークを真上に向けて放り投げる。

空中に放り投げられたチョークは突如爆発し、5つの閃光を放つ。

放たれた5つの閃光はそれぞれまるで吸い寄せられるように、クリスを遠巻きに囲むように彼女の周囲5か所に着弾する。

次の瞬間、先ほどオオタカが放った光線と同色の光の線が地面に巨大な逆五芒星を描きだした。

「これは.........!? 」 クリスが異変を感じて動きだすより早く、アガレスがその右手に持つ杖を勢いよく投擲する。

まっすぐ飛んだ杖は五芒星の中心に突き刺さる。その瞬間逆五芒星が凄まじい光を放った。

「創作術式、五芒大激震(レイダット・アマダ―)! 」

ダビデの叫びにクリスが身構えた直後、五芒星に囲まれた地面が大きく振動した。

いや、実際にはそう感じたのはクリスだけだったろう。なにしろ五芒星から1キロも離れていない位置にいるダビデは平然と立てているのだから。

「アガレスがもつ伝承の1つにはこういったものがあるんだよ。すなわち地震を起こす能力を持つってことだ。もっとも悪魔そのものではない偽物(ゴーレム)に本物(アガレス)そのままの力を再現させるのには無理がある 」

五芒星の中にいるクリスにはダビデの言葉を聞いている余裕はなかった。もはや立っていることもできず地面にへたり込んでいる。

「そこで可能な限りオリジナルに近づけるために俺が考え出したのがこの術式だ。その逆五芒星の中にいる者は疑似的に悪魔の支配地域に居る者と同等の存在と認識されるようになっている。当然悪魔の支配地域は地獄だ。そして、その地獄で、認識されない支配地域において、当然ながらそこの住人の存在は現実世界、人が暮らす物質世界からは切り離されることになる.......もっとも純粋かつ大量の魔力が必要なんで地面に立つゴーレムをアガレス1体にしなきゃいけない欠点があるけどな! 」

彼の言葉を証明するようにすでに広場にバアルと人造兵士たちの姿はなく、ただ崩れた砂や石、コンクリートなどが散らばっているだけとなっている。

クリスの視界を閉ざすように五芒星の輝きはさらに激しさを増し、それと同時に彼女を襲う揺れも激しさを増す。

「その結果としてその五芒星の中だけで内部にいる人間だけがアガレスの能力を疑似的に再現した幻覚............人間の五感を誤認識させる術式の効果を受けることになるわけだ...............描け! 」

ダビデの言葉に導かれるように鮮血のごとき色彩の逆五芒星がさらに広範囲に広がる。その大きさはすでにビル前広場を覆うほどとなった。

その星の中心点で何事もないかのように平然と立つアガレスの背中に立ちダビデは高らかと宣言する。

「地獄の東方大公爵!従えし31の軍団の待つ深紅の地獄にいざまいらん! 」

ダビデの叫びに応えたアガレスが星の中心に突き刺さる杖を引き抜いた瞬間、ビル前広場は凄まじい深紅の閃光に包まれた。

それが消えた後、もはやビル前広場には巨大な五芒星の形をした穴しか残っていなかった。


その様子を某ビルから眺めていた剣夜はため息をついて、呟いた。

「さすがに、ただの能力者で魔術師に抗するには無理がある.......か 」

携帯を取り出しリダイヤル機能で相手を呼び出しながら剣夜は、すこし口元を吊り上げて笑みを浮かべる。

「だけど...........すでに調整済みの仲間を助けてどうするつもりなのかな?見物だね古門護 」

そう言った後で剣夜は少し表情を曇らせた。

ぽつりとまるで後悔を述べるかのように聞こえるか聞こえないかの細い声で彼は続けた。

「足掻いてみせろ..........かつての僕がそうしたように 」

呟いた直後にリダイヤル機能で呼び出した相手と繋がった剣夜は電話の相手、学園都市にいる仲間に言葉を放つ。

「禍島様のご指示が出た。我ら神裔隊は4番隊を除く全隊が本計画のために動く。始まるよ...........学園都市を、ひっくり返そう 」
<章=第六十四話  とある広場の大魔術>
「来たアルね、リーダーからの指令が 」

学園都市の一角で、禍島率いる人造神たちの集団『神裔隊』のメンバー、アレプーリコスは携帯に来たメッセージを確認して口元に笑みを浮かべた。

アレプーリコスは人造神である。とはいっても彼女自体の戦闘能力は、人造神たちに例外なく備わっている、通常の人間を凌駕する身体能力を除けばそう高いものではない。それは高杉との戦闘においてあれだけの火球を操り攻撃を仕掛けながら、彼の身体に直接的なダメージを与えることができなかったことからも明らかだ。

それはアレプーリコス自身重々承知している。そして今回彼女に与えられた役割はウォールの主力とぶつかることではない。

ウォールの動きをけん制するための阻害活動である。

「さて、じゃあまずはここから行くアルね 」

アレプーリコスが立ち止ったのは、とある施設の前。

その前に止まっている車両をその筋の人間ならすぐに分かったはずである。それは警備員(アンチスキル)の車両だった。

躊躇も躊躇いもなくアレプーリコスはその施設内に正面から足を踏み入れる。

「ん?なんだ君は……… 」

入り口付近にいた警備員の男、突然の訪問者に対して彼が詰問の言葉を述べるのも待たず、レプーリコスは容赦なく男の身体を殴り飛ばした。

大の男が小柄で別段筋肉質でもない少女に一気に3メートルほど吹き飛ばされるという、非日常の光景にあっけにとられる施設内の警備員たちにアレプーリコスは口元に微笑を浮かべながら、予定されたセリフを呟いた。

「了解、片づけるアルよ、超重力砲(グラビティマスター) 」

その一言に唖然とする警備員たちに向けて狐の面を顔につけた少女は、両手に炎を宿しながら襲い掛かった。

同時刻、護たちウォールとは違う闇から産まれたとある組織に属する男は、とある個室の中に置かれた安楽椅子に座りこみ、目の前の液晶画面に映しだされている隠しカメラが映し出した警備員詰所の映像を見つめていた。

彼には、常人を超えた身体能力で次々と警備員たちを吹き飛ばす少女についても、彼女が両手から次々と放つ爆発する火の玉のことも、気を向ける対象ではない。

かれが気をひかれる事柄はただ1つ。彼女が発した一言だ。

「これがわれらに対するお前の最終行動だというなら……感謝するぞ、古門護 」

男はそのハイテクじみた義手と義足から機械音を発しながら、椅子から立ち上がり、腰元から、学園都市性の小型通信機を取り出した。

「これでわれらが戦う大義名分は与えられた 」
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン