とある世界の重力掌握
「無駄だと...........! 」
飛んでくる弾頭に余裕の表情を崩さない井坂だが、そんな彼女に対して碧はその右手を力強く握りしめると同時に叫んだ。
「吹っ飛べ! 」
次の瞬間、空中で突如分解した弾頭からあふれ出した水が井坂に向けて降りかかり、同時にその降りかかった水が、唐突に爆発した。
「っつ! 」
その凄まじい衝撃波により巻き起こった噴煙と、爆炎に視界を塞がれ、井坂の眼前から碧の姿がかき消される。
「今のうちに!鹿角! 」
「はい! 」
新たな少女の声に井坂が疑問を覚えるより早く、その視界は新たな純白の閃光に閉ざされた。
「相変わらず派手になっちゃうわね鹿角の攻撃は...... 」
純白のエネルギー波によって完全に消滅した第4学区の一角を、双眼鏡で確認しながら
『ボックス』のリーダーである愛華は、真上から襲い掛かってきた両腕から鎌を生やして、長い尾を備えた男を、空中で形作られた巨大な窒素の杭で串刺しにして地面に縫い付けたうえで、その頭に容赦なく拳銃を突きつけ、引き金を引いた。
銃声と共にその命を刈り取られ、正体を無くして痙攣する男にもはや目もくれず、愛華はその着ている服のポケットから取り出したスマートフォンを操作し、次いで耳に当てる。
電話のかけ先である相手が声を出すのを待たず愛華は言葉を放った。
「始めまして古門護くん。私は、暗部組織『ボックス』のリーダーの琴吹愛華。今からあなたに会いに行くから待っていて。私たち『ボックス』はこれより『ウォール』と共同して外部勢力と内部勢力の殲滅に当たる。拒否はなしね、だってこれは..... 」
そこで一度言葉を切り、愛華は電話の向こうの相手の心情に思いを馳せながらつづけた。
「学園都市統括理事長の指令なんだから 」
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン