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とある世界の重力掌握

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アパートから飛ばされ、アパート前の路地に着地する神裂に向けて再び拳を放つ哀歌。

だが、その拳を神裂は躱し、避けざまに、蹴りを放つ

「つっ! 」とっさに両手を十時にしてガードの構えをとる哀歌だったが、そのまま衝撃を受けて吹き飛ぶ。

「哀歌!くそ、あんた何者なのよ? 」哀歌が飛ばされたのを見て、クリスと美希は少し後ろに引く。ウォール1の格闘戦のプロの一撃を軽々と交わしている時点で相手の実力が感じられた。

護は相手を『魔術師』だと言ったが、目の前の女がそうであるとして、彼女はまだ一度も魔術を使っていない。

「私達程度だったら、魔術を使うまでもないと思ってるわけ?! 」

「なぜ、あなた達が魔術のことを? 」

「あなたに答える義務なんてないわよ! 」

叫びと共にクリスは、ポケットから無数のパチンコ玉を取り出す。

「鉄球乱舞! 」クリスの手から放たれた無数のパチンコ玉は空中に舞い上がり、一直線に神裂に向かう。

「遅すぎです......... 」瞬間的に右に移動し、かわそうとする神裂だったが、直前鉄球が予想していたかのように向きを変えた。

「なに? 」

「私の能力は念動力。パチンコ玉を直進させるだけのはずがないでしょうが! 」

パチンコ玉が勢いをつけて突っ込んでいく。神裂は再びよける構えを見せるが........

「拡散! 」クリスの叫びと共に、進んでいた無数のパチンコ玉は、分散し、神裂に向けて全方向から襲い掛かる。

「さあ、これを避けられるかしら? 自称魔術師さん? 」得意げに言うクリスだったが、直後首を傾げた、追い詰められているはずの神裂の口元がわずかに笑っていたのだ。

「この程度で全力と見られるのは心外です.........七閃!」瞬間、迫っていたパチンコ玉はその全てが切断され地に落ちた。

「な?! いったい?! 」驚愕するクリスに向けて鉄球を切り裂いた斬撃が向かってくる。

「しまっ! ....」後悔する暇もなく、クリスの体を無数の斬撃.......に見せかけたワイヤーが切り裂く......筈だった。

「おい、いくら聖人でも、複数の能力者相手に圧勝できると思わないことだよ? 」

神裂の放った7本のワイヤーは、その全てが地に叩きつけられ、押さえつけられ、その切れ味をなくしていた。

「これは......... 」

「これが僕の能力『重力掌握(グラビティマスター) 。普遍的にこの世界にかかる力を制御する。ここは僕の占有地(フィールド) だ。いくらあなたが強くてもこの星にいるかぎり、僕だってあなたとやり合える! 」

護の手が高々と掲げられる。その手が指す真上になにか巨大な力が溜まっていく。

『重力鉄槌(グラビティックハンマー)』! 」刹那、一気に振り下ろされた護の手と連動して、真上から集められた巨大な重力の塊が神裂に向けて襲い掛かる。

凄まじい轟音が走り、土煙に一帯が包まれる。

「グフッ! 」その一撃をまともに受けて、それでも倒れなかったのはさすがといえるだろう。

神裂は、地面に出来た巨大なクレーターの中心で刀を支えにして、なんとか立っていた。

(うかつでした.......禁書目録(インデックス)の回収を最優先していたとはいえ、ここまでの相手と遭遇することは想定していなかった。不覚でした.....あとはステイルに任せるしかなさそうですね....... )

神裂がかけた、人払いの術式が効いているからよいものの、後で間違い無く大騒ぎになるだろう。

「終わりだ。禁書目録にこれ以上関わるのは止めてください。イギリス清教のこの街への介入を許すわけにはいかないんです。 それが僕達『ウォール』の役割なんですから 」

「なにを言っているか、分かっているんですか? 大体なんで私の所属を? 」

「それを語る必要はないですよね? とにかく、禁書目録(インデックス)を助けるには、あなたたちを止めることが必要なんです 」

神裂は、なにか言葉を返そうとしたがすでに体は限界だった。

神裂の意識は深い闇に沈んでいった。

「死んだの? 」完全に意識を失った神裂に向けて拳銃を向けつつ聞く美姫は首を横に振る護に驚いた表情を向けた。

「あれだけの技を喰らったのに、まだ生きてるっての? 」

「この程度で死ぬような人じゃない。それに、気を失ったのは重力鉄槌の打撃からじゃなくて、彼女の周囲の重力を操作して、重力鉄槌を止められた直後に後頭部に一撃を加えたからだよ 」

「なんて、やつ.........護のあれを防ぐなんて、人間離れしすぎじゃない 」

「僕らが言えないと思うけどね........ それより今はもう1人を抑えなきゃ 」

護が見つめる先、上条当麻の部屋に向けて階段を駆け上る哀歌がいた。

「あれ、哀歌もう復活してたんだ! 」

「あいつの回復力は人離れしてるのは知ってるだろ? さて、クリスはここで援護を頼む。美姫は一緒について来て。哀歌が先にいって、時間稼ぎしてくれる。いいか、美希、相手は得体の知れない技を使う魔術師だ。油断しないで 」

美希は不敵に口元を歪める。

「分かってるって、心配しないで? 私は腐っても学園都市レベル5の第3位の御坂美琴(オリジナル)と同じ力を持ってるんだから。オリジナルのことはまだ許せないけど、私は。前みたいな先走りはしない 」

「なら良いけどさ........よし、じゃあ行こうか 」

護は指し示す。護るべき少女と友がいる場所を。

「禁書目録(インデックス)捜索大作戦の終着点(フィナーレ)へ 」
<章=第十四話 とある女性と暗部対決>


「 しっかりしろ! 禁書目録(インデックス)! 」部屋の前で血まみれで倒れている少女を上条は必死に揺すっていた。

「どうしたんだよ!? いったい、どこのどいつにやられたんだ?! 」

「ん?? 僕たち、魔術師だけど? 」背後から聞こえてきた声にバッと反射的に後ろをふりかえる上条。その目に映るのは、赤髪の神父。

「こりゃまた、ずいぶん派手にやっちゃって 」

「なんで...... 」

「この子が部屋に戻った理由? さあね、忘れ物でもしたんじゃないかな? 昨日はフードを被ってたんだけど......,あれ、どこに落としたんだろうね? 」

上条は気づいた、少女(こいつ)は自分を戦いに巻き込まないためにわざわざフードを取りに戻ってきたことを。

「バッカやろうが! 」 「フンフンフンフン.....やだな、そんな顔されても困るんだけどね。それをやったのは僕じゃないし.....神裂だって、なにも血まみれにするつもりはなかったんじゃないかな。その修道服、『歩く教会』は絶対防御なんだけど.....はあ、なんの因果で壊れたのか 」

上条の胸の中にどす黒い感情が湧き上がる。

「何でだよ......俺には哀歌から聞いたりしても、魔術とか魔術師ってのを言葉としては理解してても、いまだに信じられないよ......でもな、お前達にも正義と悪ってもんぐらいあるだろう?こんな小さな女の子をよってたかって追い回して、血まみれにして、これだけの現実(リアル)を前にまだ自分の正義を語ることができんのかよ! 」
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン