二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

とある世界の重力掌握

INDEX|69ページ/106ページ|

次のページ前のページ
 

それは護は知る由もなかったが、彼女が哀歌と戦った際に見せた第3段階の姿。彼女の中に宿ると言う『咲耶姫』の具現した状態の姿だった。

「なるほどね......あの哀歌に重傷を負わせたんだから絶対に何か力を持っている人だと思ったけどそういうことなんだ......君は哀歌と同じ人ならざる者なんだね? 」

「さすがはウォールのリーダーと言うところかしら。正解よ。確かに私は人ならざる者。正確にはこの国を守る神の一人ね 」

「神.....か。僕はウォールリーダーになってから一度だけ神って名乗る人と戦ったけどその人よりはあなたの方がまだ互角にやれそうだ 」

「第2形態の火野咲耶を吹き飛ばせたくらいで図に乗らない方が良いですよ 」

護の言葉に火野咲耶......いや火野咲耶の中に宿る女神は口元にうすら笑いを浮かべた。

「今の私はまさしく人ならざる者。能力を封じられ体内の異能の力も半分以上封じられている今のあなたでは私には勝てないですよ? 」

「そう断言もできないと思うけどね。上条当麻がアウレオルスを破れば僕に力は戻る 」

護の言葉に咲耶は訝しげな顔をした。

「なぜ断言できるの? 」

「僕は知ってるからだよ。あの人が必ず勝つことを 」

「予言者とでも言うつもりかしら? 」

「さあ? どうとでも解釈してくれてかまわないですよ。ただ..... 」

護は一拍開けて続けた。

「あなたが人外の者、本来この世界の住人じゃない存在なように僕もちょっと変わってるんですよ 」

「あなたも人ならざる者とでも言うつもりかしら? 」

「そこは想像にお任せします。今はそんな話をしている暇なんてないんじゃないですか 」

護の言葉にはっとした咲耶が身構えるより早く護は、緋炎之護を構えながら勢いよく跳んだ。

距離は1メートルもない。あっという間に咲耶の前に着地した護は緋炎之護を勢いよく突きいれたが咲耶はその突きいれられた槍をその右手に持つ日本刀で横に払いその狙いをそらせる。

予想外の力で槍の狙いを外された護は間髪入れずに緋炎之護を今度は横なぎに払うがその攻撃を咲耶は軽そうに跳び上がって躱す。

そのまま3メートル近くの高さまで跳び上がった咲耶はその位置からくるくると前回転しながら護目がけて急速に落下してくる。

護が槍を掲げて防御の構えを取った直後、緋炎之護の柄を咲耶の日本刀が切り裂きそのまま護の胸を切り裂く。

「ぐわああああ! 」

回転力まで利用したあり得ない斬撃術で切り裂かれた緋炎之護は現れた時と同じように空間に溶け込むように消えていく。だが護にはそれを確かめるすべなどなく斬撃時の衝撃に2メートルほど後方に飛ばされ地面を転がって一歩も動けない状態になってから初めて気付いた。

「くそ.....緋炎之護.....が.... 」

「大口をたたいた割には大したことがないのねウォールリーダ。それが本気かしら? 」

満足に体を動かすこともできない護を見て咲耶は残念そうな表情を浮かべた。

「あなたの部下の竜人少女はなかなか良い相手だったから。その上司のあなたには期待していたんだけど跳んだ期待はずれだったようね。今の攻撃は本気の10分の1もだしていないのだけど 」

「あなたは.....だれなんだ? 」

「さっきも多少は説明したと思うしあなたに教える必要はないのだけど冥土の土産に教えてあげましょう。あなたが察した通り私は人じゃない。この体は人のものだけど、この力や私と言う意識は人ならざる者のものよ。私の名は木花咲耶姫。この国の神話に出てくる女神の1人よ 」

「そんな神なんて知らない.....それにこの国の神話の神なんて多すぎて.....ありがたみとか湧かないし.....」

「そうね....確かに今は私達のような小さな神はその存在が薄れていると思うわ。なにしろ今の世の中で信仰されている宗教.....3大宗教と呼ばれる十字教、イスラム教、仏教では神は絶対唯一の存在でそれ以外に神はないことになっているものね。 でもそう言った宗教の中にも私達のような小さな神の影は見え隠れしているわ。あなたでも十字教やイスラム教で語られる天使や悪魔ぐらいは知っているでしょう? 」

「羽....が生えた天使と....か角が生えた悪魔とか.....なら 」

「同じように仏教では地獄の鬼や魔羅(マーラ)、第六天魔王と呼ばれる存在や仏や菩薩と言った神に準ずる存在が語られているわ。つまりどの宗教でも人間ではまねできない力をもつ『何か』の存在自体は否定していないのよ。だいたい十字教では『天使の力(テレズマ)』なんてものの存在が公認されているくらいなのだしね 」

咲耶は愉快そうにその日本刀をくるくると回した。

「その人間ならざる何かの存在が認められているか認めらていないかの違いはたった一つなのよ。それは積極的に人と関わり人の前に姿を見せるかそうじゃないのかということだけ。私のような小宗派の神は人にとって重要ながら現代ではほとんど意識されないのが特徴なの 」

咲耶の言葉に対してもはや護は返すこともできない。いつの間に人払いを使われたのか周りには人影もなく助けが来るとも思えない。

「それだから本来は神秘性が増してありがたみがます気がするのだけど。人間はそうは考えないようね.....正確にはこの国に今住む人間だけど 」

咲耶はくるくる回していた日本刀を真上にピンと掲げる。

「講義はここまでよ。そろそろ終わりにしましょう? 」

掲げられた日本刀に炎の色としては濃すぎる深紅の炎が纏っていく。

「火照命(ホデリ)、火須勢理命(ホスセリ)、火遠理命(ホオリ)、わが炎を纏いて現世(ウツツヨ)にまいれ! 」

咲耶姫の言葉と同時に彼女の周りに突然現れた3つの深紅の炎が人の形をなしていく。

その姿は赤き肌をした巨人。

護が知るステイルのイノケンティウスのような『人の形をした炎』ではなく『炎が具現化した人間』のような怪物だ。

1人は剣、1人は槍、1人は戦斧を持っている。何かの力を使わなくても今の護なら巨人1体の拳の一撃で死にいたるだろう。

「私をたった1度ではあったけど吹き飛ばしたことに免じて神の力で殺してあげる。感謝することね。痛みを感じる間もなく死ねるわよ 」

彼女の言葉と共に3体の巨人がそれぞれの武器を振り上げる。

「そうか..... 」

喉の奥から絞り出すような声で護は咲耶姫に向って告げた。

「神様ってのは.....弱者ですら.....いたぶ....り殺す.....悪趣味な奴だったんだね 」

その言葉には答えず咲耶は右手を上から下におろす。それを合図に振り下ろされた巨人たちの武器が護の体を問答無用で粉みじんに変える。

そうでなければおかしかった。

次の瞬間咲耶は疑問を覚えた。護にはいま力はない。アウレオルスにより能力は封じられ理屈は分からないが魔術を使った力も現在はほぼ封じているために使用不可能なはずである。

ではなぜ目の前の少年は振り下ろされているはずの巨人たちの武器をその持ち主たちごと宙に浮かばせているのか?
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン