二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

とある世界の重力掌握

INDEX|87ページ/106ページ|

次のページ前のページ
 

足元の運動量のベクトルを操作し、一度圧倒したことのある美琴に攻撃を仕掛けようとしたアクセラレータだったが、彼女の前に移動した直後に美琴の前に立ち塞がったツンツン頭の少年......上条の右拳を顔面にぶち当てられ吹き飛ばされる。

再び倒れそうになる身体をなんとか制御しフラつきながらも体勢を立て直すアクセラレータだが、その内心はすでに崩壊寸前だった。

「(ぐ......なンだってンだァ!?あのツンツン頭の攻撃まで俺の防御を無効化しやがる.......これは奴の手にもそういった力があンからか、それとも第4位の力のせいか?) 」

どれが正確なのか判断できず、混乱の極みにあるアクセラレータに護は静かに言葉を放つ。

「アクセラレータ。君が決めた信念の為に、二度と悲劇を繰り返さない為に、この計画に参加したこと自体を私は否定しない。そのような権利を私はもたない。だが、妹達(シスターズ)たちは人形じゃない、彼女たちも人間.........君が幼き日に何らかの形で傷つけてしまった誰かと同じ存在だ 」

護はアクセラレータに緋色の瞳を明確に向ける。

「彼女たち一人一人にかけがえのない一生があり、それぞれが精一杯人生を生きているのだ。君はかつての悲劇を繰り返さない為に最強を求めたはずだ。だが君が求めた最強とは精一杯生きている罪なき少女たちの命を圧倒的な力で弄び踏みにじるものだったのか? 」

護の言葉にアクセラレータの表情が停止する。

それまで、ただ最強を求めて来た、最強になれば自らの力から他人を守ることができるから。争いが起きない為の方法として考えたのが、戦おうという意志さえ奪うほどの絶対的な力を手にすること。

だが、幼き日に自分以外の人間を巻きこまないため、守るために目指し、そして既に殆ど手に入れているも当然の最強のタイトル。その最強が人を守れていないとしたら?

「違う! 」

否定しても、その事実はアクセラレータの心を侵食していく。彼には否定できない、実際に本来罪がないはずの妹達(シスターズ)を、本来守られるべき他人を彼は最強の為に殺してきたのだから。

「否定をするな、アクセラレータ 」

「そうだ、否定をしても過去は変わらねえ 」

護と上条が交互に言葉を放つ。

2人の右手は既に硬く握りこまれていた。

「お前にどんな過去があったとしても、それを解決するための手段がこれしかなかったとしても、それが罪もない人間を嬲り殺して良い理由にはなりはしない! 」

「今の君は物理的な最強でもなければ心理的な最強でもない。今の君では誰一人として守られない! 」

2人は言葉と共に同時に駆けた。いままで考えてもこなかった事実に動きを停止させているアクセラレータに向けて特異な力の2つの権化が向かっていく。

「お前が『守る手段』がそれしかないという幻想に囚われてるってんなら.......... 」

「君が最強という言葉に躍らされ、進むべき道を誤っているというのなら........ 」

アクセラレータの防御を無効化する一撃が2人から同時に放たれる。

「「まずは、その幻想をぶち殺す! 」」

ズゴン!という鈍い音と共に正面から2人の拳による攻撃を喰らったアクセラレータの身体は宙を飛び、意識の制御を解かれた身体は地面に無様に転がった。

「神化、解除 」

アクセラレータに勝った。その事実を確認し、息を吐いた護は神化を解いた。

あっという間に元の姿に戻った護の近くに美琴、上条、高杉、そしてミサカ10032号が集まる。

「本当に.......ありがとう。アンタの事を誤解してた。怪物みたいだって...... 」

「やっぱりそう思われてたんだ......仕方ないよ、僕が警備員(アンチスキル)を大量殺戮してしまったのは事実なんだから。そんな僕の言伝を実行してくれてありがとう。あれのおかげでアクセラレータに勝つことができた 」

護の言葉に美琴は気恥ずかしいそうに目線を泳がせた。

「しかし本当に最後しか助けに入られなくて悪いな護。もう少し早くビリビリを説得できていれば........ 」

「気にするなよ。やり方はどうであれ最終的に君が右手で倒すことに意味があったんだ。君は十二分にそれを果たしてるんだから 」

首を傾げる上条を放って護は考えを巡らしていた。

原作において今回の実験が凍結、廃止されるのは『レベル5であるアクセラレータが一般人である上条に負ける』というアクシデントがあったからだ。

だが今回は護との戦闘を経たあとでアクセラレータは上条に倒されている。

そのことに不安なものを感じつつも護は自分が救った一人分の世界を感じ、安堵のため息をもらしていた。

同時刻、学園都市中央部に立つ窓のないビルの内部でアレイスターは彼の居室といえる空間に無数に浮かぶスクリーンに映し出される1つの事案に関する映像を眺めていた。

「手綱をつけていないとはいえ少し動きすぎだな重力掌握 」

まったく感情を感じさせない声色で呟いたアレイスターはスクリーンの一つに目をやる。

「価値がある限り温存するが、その分利用はさせてもらう。今回はペナルティを与えることは避けよう 」

スクリーンには、アクセラレータを巡る戦いの一部始終が映し出されているが、その映像には一瞬たりとも護たちイレギュラー的な介入者の姿はなかった。

「今回の貸しは、いずれ返してもらうこととしよう 」

結論づけたアレイスターは次いで別のスクリーンに目をやる。

そこには、2つの文字が記されていた。

『オペレーション・トニトゥールス・レーギーナ 』

『オペレーション・ハエレティクエ・ゼウス 』

2つの文字を眺めつつアレイスターは僅かに口元を吊り上げ笑みを浮かべた。

「これからを楽しみにしようか、重力掌握 」
<章=第五十六話 とある一位と最終決戦>


アクセラレータとの戦いから一夜明けた翌日、護を初めとするウォールの残存員と佐天たちSAS、仏教系の魔術師にして聖人と仏の特性を併せ持つ少女、大山希。そして救民の杖からの派遣員であるダビデとナタリーはSAS事務所に集まっていた。

ちなみに結構な重傷を負っていた護だったが、自らが怪我を負っていたにも関わらず治癒魔術を行なった哀歌のおかげで1日でほぼ回復していた。もっとも急を聞いて駆けつけた佐天に潤った目で見つめられ、看病を受けていたせいで若干寝不足気味ではあるのだが。

「みんなに集まってもらったのは言うまでもない。ウォールメンバーである美希、クリスの誘拐事案についてなんだ 」

アクセラレータをめぐる騒動の渦中、ウォールの所有する拠点の1つの警護に当たっていた美希とクリスは突如消息を絶った。

誘拐されたという証拠も確証もないが、護はどこかの第3者が率いる組織の誘拐である可能性を考えていたのだ。
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン