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こらぼでほすと 解除12

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 坊主も女房も、その気がない。いちゃこらしているのだが、どっちも恋愛感情がないもんだから、楽しい同居生活だと思っている。ということで、この先、何か事件がない限りは、このまんまなんだろうと、悟浄も予測している。
「見た目には、いい夫夫なんだけどねぇ。」
「俺も、それには同意するぜ、トダカさん。」
「僕も同意します。」
 三人とも、そう言って大笑いだ。店の改装は、三日もすれば終わるのだが、予定では、まだ数日は休業予定だ。だから、時間はあるので、のんびりとしたものだ。
「予定では十日後ぐらいに戻って来るんだったね? 」
「それぐらいですね。ただ、すぐに動けるとは思いませんから、静養させたほうがいいとは思いますよ。」
「それなら、クリスマス前ぐらいまでは里帰りさせておこうかな。うちの娘さんは、お寺に帰ると、嬉々として働くだろうからね。」
「こき使うつもりの亭主もいることだしな。」
「強奪されそうな気もしますけど? 悟浄。」
「あーやるかもしれないな。」
 帰って、そのまま里で静養と言うと、坊主は強奪に行くかもしれない。ウダウダしていてもいいから、側に女房は欲しいらしいからだ。その理由が、横のものを横にも縦にもしてくれる世話好き女房に世話されたいということであっても。
「顔ぐらいは寺に出させるさ。私が寺に居候するっていう手もある。」
「そうしてくれますか? トダカさん。」
 トダカも店が休みなら時間はある。オーヴとの連絡ぐらいしか、やることもないから、寺に居候していても問題は少ない。あまり動き回らないように牽制しておくなら、それが有効だ。
「しょうがないな、うちの婿殿は、うちの娘さんが必要ならしいから。」
「ええ、必要らしいです。なんせ、服まで着替えさせてるぐらいですよ。すっかり、ニールも男物の着つけができるようになっちゃいました。」
 普段着から仕事着の袈裟に着替えるのに、ニールが手伝うのが当たり前になっている。外出用の着物も帯が絞められるようになったのも、坊主が教えた結果らしい。今では、坊主が突っ立っていれば、女房が着つけしちゃうぐらいのことはできるようになった。西洋人が着物の着つけができるって、どーよ? と、八戒でも呆れる過保護さ加減だ。
「でも、娘さん、自分では着られないんだ。」
 で、他人の着付けはできるのだが、ニール当人は、自分を着付けできない。着物の合わせなんかは理解で来ているが、自分に絞める帯がわからないのだという。
「着る用事もないからだろうな。」
「そういうことなんだろうなあ。来年は、浴衣を着せて花火に行きたいと思ってるんだけど。」
「トダカさんが結んでさしあげてください。そのほうが、ニールは喜びます。」
 確かにね、と、トダカも笑っている。少し雑談をすると、トダカも店の改装現場のほうへ戻った。沙・猪家夫夫は、引き続き、経理仕事だ。
「天蓬に報告入れとくか? 」
「悟空からのほうが、あちらも嬉しいだろうから、僕らはしないほうがいいです。」
「ああ、そうだな。・・・・やれやれ、これで寺での奉仕活動は激減する。」
 ニールがフルタイム寺の女房に、クラスチェンジすれば、保母さんな八戒の仕事はなくなる、と、悟浄は考えたのだが、八戒は、それは否定的だ。
「それは無理なんじゃないですか? 悟浄。・・・これからは、ニールも移動できるようになるでしょう? そうなると、みなさん、連れ出して行くことでしょうから。」
 今までは、移動できなかったから、スタッフも連れ出すことはしていなかった。だが、気圧変化にも対応ができるとなれば、オーナーしかりトダカしかり、みな、どこかへ連れ出すだろうと、簡単に予想できる。特に、来年当たりは出入りが激しいはずだ。聞いているだけでも、春にはオーヴ、夏にはプラントの遠征が、すでに予定されている。それに年末年始は確実に、トダカとオーナーで取り合いになる。
「じゃあ、いままで通りってことか。」
「そういうことでしょうね。まあ、単身赴任だけは、刹那君が阻止してくれましたから、長期間というのはないと思いますけど。」
 組織への復帰だけは、刹那が拒否したので、宇宙に上がることはあっても、長期間ではない。せいぜい、組織の施設へ遊びに行くぐらいの短期間だ。たぶん、それも歓迎はされないから少ないだろう。
「じゃあ、俺らには、あんまご利益はないのか。」
「うーん、ご利益っていうなら、坊主の相手はしなくていいってことぐらいです。悟空が合宿とか研修で留守をしても、寺に顔を出す必要はなくなるでしょう。」
「そんなもんか。まあ、いいけどな。」
「ああ、将来的には、坊主の世話は一手に引き受けてくれるだろうから、あっちが本山へ帰っても、僕らは特区で、のんびり暮らせます。」
「おほっ、それはいいな。・・・次は西に行こうぜ。」
「そうですね。あちらのほうが人外の方が多くて暮らしやすいみたいです。」
 以前、本山の上司ご一行様と特区の西へ遠征して気付いた。どうも、特区は西のほうが、人外の関係者が多く、暮らしやすい環境にある。そちらへ移住すれば、何かと人間界でも融通が利く。
「まあ、十年くらいは先だけどな。キラたちが動くのは、それぐらいだろ? 」
「そうですね。悟空が無事に、アカデミーを卒業して、一度、本山に戻るのも、それくらいになるでしょう。」
 悟空は、年の取り方が緩やかで、見た目の年齢が、人間界で申請している
年齢と不釣合いになったら、一度、本山へ戻ることになっている。沙・猪家夫夫は、それに同行する義理はないので、それからは人間界で適当に暮らすつもりをしている。ニールが神仙界の所属に変われば、またぞろ、特区へ降りて来ることもあるかもしれないので、そのためにも拠点が必要だというのもある。
「さすがに、桃の話が本格的になったら、坊主もリアクションは起こすだろうぜ。あいつ、すっかり、ママニャンと同居が楽らしいからな。」
「それよりも、悟空が引っ張って行きますよ、悟浄。」
 これから先、刹那が組織で働く限り、ニールは刹那のために地上で待っていると約束している。だから、拒否される可能性は高いのだが、悟空が、待っているために桃を食ってくれ、と、説得できれば可能になるし、坊主のためなら、悟空も強引に、ニールを本山へ拉致するはずだ。
「どっちにしろ、ママニャンは仙人にされちまうってことか。」
「お気の毒ですが、僕らの今後の安寧のためには犠牲になっていただきませんとね。」
「自業自得だろ? 三蔵に、おかしなクセをつけたのは、ママニャンだからな。」
「あははは・・・確かに、そうですね。」
 どちらにせよ、ニールとは長い付き合いになりそうだ、と、夫夫ふたりで結論する。
作品名:こらぼでほすと 解除12 作家名:篠義