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狐の屋台

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「お?」


猫もこの匂いが良い匂いだと思うのか。
匂いを嗅いで、うっとりと目を細めた猫は元親の相手などもうどうでもいいと言わんばかりに尻尾を大きく揺らして、再びひょこひょこと歩き始めた。

もしかして、この匂いの元へ行く気だろうか。

犬のように鼻をひくつかし、匂いの方角を時折確かめるように立ち止まりながら歩んでいく猫に元親も興味を引かれ、その追って後ろをついていく。これで匂いの元である店を見付けられれば儲けもんだなどと暢気な頭で考えてたら、元親がついてくるのに気付いた猫が、振り返って困ったように、にゃうぅ、と一声鳴いた。
それからちょっとだけ逃げるように足を速める。
逃げる猫に元親は楽しそうに笑いながら、逃げんなよとまた己も一緒に駆け出して逃げる猫を追いかける。はたから見れば、完全に出来上がった酔っ払いに追いかけ回される哀れな野良猫の図だ。


「まぁーて!待てって!逃げんなよ!!」


ぴゅいっ!と風のような早さで住宅地を駆け抜けていく猫に元親の脚もまた負けていなかった。何処まで逃げても振り切れない元親にいい加減痺れを切らした猫が、本気をみせる。
全力疾走で駆け出した猫が、突き当たりの曲がり角を弾丸のような速さで曲がると、その後を慌てて追いかけた元親が塀から顔を出したときには、既に猫の行方は分からなくなっていた。
電灯の灯りだけがポツポツと道を照らすだけの住宅地の外れで、猫を見失った元親が悔しさに肩を落として猫が消えた暗がりを眺め続けた。


「……あー……逃げられちまったか」
作品名:狐の屋台 作家名:沙汰