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Angel Beats! ~君と~

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第23話 Game start! Part6

「遊佐、スゲぇ…」

「いいぞ遊佐!!カッコいい!!」

 恥ずかしながらもベンチに居るメンバーに手を振る遊佐。

(何でしょう…この感覚、胸がスッとするこの感覚……)

 風によって乱れる長い髪を整えると少しだけガッツポーズを皆に見せた。
 こんな事をするのはメンバーと自分自身が驚いた。そんな中に一人の女子が一塁ベースまで来た。

「…遊佐」

「椎名さん何か御用でしょうか?」

 いつもしている黒いマフラーから何かを取り出した。その行動にいたって普通の質問をする。

「それは四次元ポケットでしょうか?」

「いや、マフラーだ……これは音無からの差し入れだ。受け取れ」

  取り出した何かを遊佐に渡す。

「『KEY珈琲』……砂糖入りですか。貰っておきます」

 KEY珈琲とKeyコーヒ、この『Key』というメーカーは二つの珈琲を出している。
 外見の違いは多少ある。だが、中身も違う。遊佐が貰ったのは香り、風味、味、この三つを楽しむ飲み物だ。一方の『Keyコーヒー』は苦味のあるコク、味、『KEY珈琲』とは違う風味、もう一方の珈琲とは格段と違う代物だ。
 中には『KEY珈琲』でも砂糖入りとブラックというタイプもある。
 ちょっと背伸びをしたいタイプはブラック。別にどっちでも、という人は砂糖入りを選んだ方が良いだろう。

 ※分かっていると思いますが、『KEY珈琲』ブラック、砂糖入り、『Keyコーヒー』、味はこの小説オリジナルです。ご了承下さい。

「音無によると飲むのは今だそうだ」

「そうですか」

「あ、ゴミは私が捨てておこう…安心して飲め」

「今、試合中ですよね?今飲んでも良いのでしょうか?」

「良いのではないか?」

 プシュと蓋を開けると飲み始めた。


(何、試合中に飲み物飲んでんだ?)

 周りを気にせずゴクゴク飲む遊佐。急いで飲んでいるみたいだ。

(ま、関係無いか……試合中でも熱中症になるからな。水分補給は大切だ…うん)

 肩の調子を確かめ、足首を回す。投げる準備は整った。後は相手をアウトにするだけだ。


「さてと、俺の出番だぜ」

「藤巻君、頑張って来てね!」

「おう!」

 大山から声援を受けると堂々とバッターボックスに向かう。




 照り付ける太陽。俺はベストを尽くした。
 辛い練習、バッティング、守備、攻撃、俺達は強くなった。
 後は練習通りに…いや、俺達は勝つ。絶対に。

『お前、野球上手くなったよな』

『……?』

『名前はさ、最初はさ、キャ○テン翼の小次郎かと思ってたよ』

『どういう事だよ?』

『俺さ、お前の事好きだよ』

『お前、「コレ」だろ』

『違ぁぁぁぁぁああう!!友達としてだよ!!』

『でもな……気持ち悪ぃよ、言葉の力ってスゲエな。たったの一言で人が嫌いになるなんてさ……』

『日向ぁぁぁああ!俺を見捨てないでくれええええぇぇぇぇ!!』

『冗談だよ。そろそろ試合か……切るぞ』

『頑張って来いよ試合!』

『ああ、お前も手術頑張れよ!!』



「ぃ良し!」

「藤巻君良いよ!!」

(あ……、夢か)

 ボーッとする頭を炭酸飲料を飲んで目を強制的に醒まさせる。
 日向が寝ている間、藤巻がセンターの一歩手前に運良く落ち遊佐が二塁まで行けるチャンスを作った。
 状況はツーアウト、一、二塁。微妙な所だ。
 次はひさ子、期待はできる。

(あの夢…久し振りに見たな。アイツ、天(そら)で元気にやってかな?)

 ベンチから見る限り無く蒼い、蒼い空。野球をやるには最高の条件の内に入る。

(アイツ、元気‥‥‥だよな)

 そんな空を見上げる一人の少年。
 雲一つも無い、綺麗な空。夏の季節に近いせいか、いつもより少し暑い。だけど野球をやるには絶好の条件。

(あれ?岩沢……?ああ!?まだギターを弾いていやがる!!ちょっとは俺達を応援して下さいよ!)

 蒼い空の下でギターを無我夢中で弾き続けてている岩沢。今まで聴いた事の無い曲、激しく、楽しそうで、無邪気、何か――――

(……ユイみたいだな………てか、何でユイが出て来んだよ!)

 心の中で突っ込みを入れると再び目を試合の方へ移すと状況はツーアウト、一、二、三
 塁。満塁だ。

「ふぅん、次は……俺だな」

 野球とは関係無い殺気を放つとバットを持って行った。



(あ?何だコイツ)

 キャッチャーは野田の姿を見て驚いた。
 バットは右手だけで持ち、やる気が無い様に腕をだらんとさせ、体は横を向かず真っ正面に向いている。これでは打ちにくい体制だ。

「野田、何やってんだ?」

「駄目だなアイツ」

「アホだ……」

 ベンチでいつもの様に呆れているメンバー。

(作戦?いや、それは無いか………な?)

 少し焦り出しているピッチャーは頭を回して眠気を覚まそうとしていた。
 土を足で少し蹴るといつものフォームで投げた。
 ぱしっとグローブからキャッチ音が聞こえる。ストライクだ。それに対し、野田は何のリアクションを行わない。

(何だ?)

「おい!野田本気出せ!」

 ベンチで仲間の声を聞かず、そのまま動かない。
 ボールをピッチャーに投げ渡すと元の体制に戻る。

「‥おい」

「あ?」

 自分より下の声に反応するとそっちに向く。

「お前、どういうつもりだ?」

「……」

 野田は無視すると前を向く。

(……無視か)

「どうした、お前の球はその程度か?」

「はぁ?」

「お前の持ってる力を俺にぶつけて来いよ」

(ますますやりたい事が解んねえな…‥)

 相手の挑発に乗らず、少し頭を回す。挑発に乗る事で何か秘策があるかもしれない、心理戦だ。乗ったら乗ったで相手の思うツボに入るかもしれない。だが、アホな野田に何が出来るのだろうか。
 普段はゆりの誘い、命令、これらを無視した者は野田による鉄槌が降りかかる。
 いつも、いつもゆりに暴力を受けても決して彼女を一度でも嫌いにはならなかった。

(コイツ……)

 少し苛つき、いつものオーバースローで投げる。

 ズパァと結弦程ではないが良い音が野田の耳に届いた。

(ほぉう、ま、これでアイツがホームに戻って来れるな…)

「へ、デカイ口を叩いたと思ったらこの程度かよ!」

 勝ち誇るとボールをピッチャーに投げ渡す。

「なあ、知ってるか…」

「は?」

 突然の問いに着いて来れないキャッチャー。そんなキャッチャーを無視し、続ける。

「足が遅い奴が、どうやったら確実にホームベース(ここ)に戻って来れるか」

 ますます、解らない。だが、

「!?おい!速くこっちに投げろ!!」

「!!」

 気付いた時にはもう、遅かった。
 何故なら、遊佐がホームベースを踏んでいたからだ。
 ベンチから歓声、観客からの歓声、何かがスッとした気分だった。

「サード!どうして気付かない!!」

「すいません!いつの間にかホームベースに……」

 野田は遊佐の特性と心理を利用しただけだ。
 敢えて、謎の行動をして注意をこちらに引き付ける。それだけ。
 だが、それだけでは遊佐がホームに戻って来れない。
作品名:Angel Beats! ~君と~ 作家名:幻影